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ロシアのMiG-31はウクライナでVLAAMで撃墜事例をあげている....事実なら初の実戦投入

 

MiG-31. Image Credit: Creative Commons.

シアの超高速迎撃機MiG-31「フォックスハウンド」が極超音速ミサイルでウクライナ機を狙っている。ロシアの複座戦闘機MiG-31フォックスハウンドは、もともとソ連の高度な防空迎撃装備として製造されたが、英国のシンクタンク「王立合同サービス研究所」(RUSI)の最近の報告書によれば、ウクライナ上空で存在感を強めているという。

MiG-31とR-37M:致命的な組み合わせ?

報告書の著者ニック・レイノルズ、ジャスティン・ブロンク博士、ジャック・ワトリング博士両名によると、40年前の迎撃戦闘機が初めて実戦に投入され、ロウクライナの戦闘機数機を撃墜した可能性が高いという。

「ロシアの高高度戦闘機CAPは、Su-35Sや最近ではMig-31BM迎撃機を用いて、前線近くの相当数のウクライナ地上攻撃機を、反撃を受けない距離から撃墜し続けている」。

R-37M(NATOコードネームAA-13 Axehead-B)は音速の6倍まで加速し(マッハ2より速い戦闘機はほとんどない)、250マイル先まで交戦できる。全長4メートル、重さ1,320ポンドである。

報告書にはこうある。「VKS(ロシア航空宇宙軍)は10月中、1日に最大発のR-37Mを発射し、同兵器の非常に高い速度、非常に長い有効距離、低高度目標に対処すシーカーと相まって、回避は特に困難になっている」。

報告書は、ウクライナ空軍の4人の上級航空指揮官と3人の地上防空指揮官へのインタビューと、回収されたR-37Mミサイルの破片の分析の結果だ。

150マイルを超える距離で有効な超長距離空対空ミサイル(VLRAAM)の最初の戦闘使用と言ってよい。欧米の空軍がVLRAAMをまだ実戦配備していないのは、長い射程が、機敏なジェット戦闘機に有効でない可能性があるためだ。

Axeheadは慣性航法に頼り、射程を最大化するため目標に向かって弧を描くように飛行しながら、発射機が送信する補正で強化される。約18マイル以内に接近して初めて、内蔵デュアルバンドレーダーシーカーが目標を捕捉し、正確な誘導を行う。

低空飛行の地上攻撃機として、ウクライナのSu-25フロッグフットとSu-24フェンサー超音速爆撃機が犠牲になっている。前者は最高速度が遅い(時速約600マイル、マッハ0.79)ため、ミサイルを振り切る「逃げ場」が限られるのだろう。一方、大型のフェンサーは、低空でマッハ1、高空でマッハ1.6と高速だが、リスクの高い侵入作戦にしばしば投入され、非常に大きな損失を被ってきた。

10月27日、ロシア国営メディアのイズベスチアは、ウクライナのSu-24を撃墜したと主張するMiG-31のパイロットのインタビューを掲載した。添付されたビデオには、R-37M三発とR-77-1の一発を搭載したMiG-31 Red 24が映っている。フォックスハウンドの高い最高高度と速度(音速の3倍に近い)は、ミサイルに大きなエネルギーを与える。イズベスチアによると、フェンサーは回避行動をとったが、ロシアのレーダーから消え、破壊されたと考えられている。

MiG-31 Fighter History

Image: Russian state media.

 

しかし、この主張は、親ロシア派の情報筋がフォックスハウンドががさらに9機を撃墜したとするのと同様に、大目に見るべきだ。ロシアは、ウクライナ空軍保有機の2倍以上を破壊したと主張している。両陣営が主張する空対空戦闘の大部分と同様に、撃墜を確認する視覚的証拠はない。

元米空軍パイロットのジェフリー・フィッシャー大佐の記事は、この欠落と、俊敏な戦闘機に対するR-37の有用性について懐疑的な見方を示している。彼はR-37Mの比較的小さなフィンを指摘し、ウクライナ戦闘機に効果がない「明らかに限定的な機動ミサイル」と論じている。

しかし、RUSI報告書は、Su-24撃墜をもっともらしく見せており、同様の事件がさらに起こると暗示している。

ウクライナ空戦の実相

RUSI報告書によると、ロシアはウクライナの上空を8つのセクターに分け、各セクターに2機のMiG-31BMまたはSu-35S戦闘機からなる戦闘航空隊(CAP)を巡回させ、ウクライナ機の接近を探知して飛びかかることが仕事としている。

ロシアの空中給油タンカーの稼働率が低いため、各CAPは通常、新しいペアに交代するまで2時間以上待機できない。

ウクライナのMiG-29とSu-27戦闘機は、ロシア機の長距離レーダーやミサイルに技術的に劣るため、代わりにロシアの地上攻撃機や飛来する巡航ミサイルやドローンの迎撃に重点を置いている。同様に、ロシア戦闘機は、ウクライナの地上防空網を恐れて、ウクライナ機を本拠地まで追いかけることはない。

 

MiG-31 Hypersonic Kinzhal

A Kh-47M2 Kinzhal ALBM being carried by a Mikoyan MiG-31K interceptor.

 

しかし、R-37Mミサイルは、MiG-31、そしてSu-35Sを、ウクライナ防空体制の範囲に入れずウクライナ機の攻撃を可能にする。報告書によると、これにより「...ウクライナの防衛範囲外から、前線近くのウクライナ航空機を威嚇する大きな自由が得られる」。ロシアのSu-35Sでは、R-37Mミサイルを装備した機体も多く見られるようになった。

しかし、ロシア側インタビューによると、長距離ミサイルを発射する際には、友軍への攻撃を避けるために、発射前に空中司令部(IL-22「クートB」機)の許可を得る必要があるとのことである。

R-37Mは大型で、よりエキゾチックな兵器であるが、ロシア軍は長年、汎用的なR-77-1空対空長距離ミサイルの生産と配備に苦心してきた。

現在、ロシアのR-37Mの在庫は、たとえ機動性の高い戦闘機を殺す確率が低くても、自由に使用できるほど十分なようだ。

これに対しフィッシャーは、R-37の使用が増えたのは、機動性の高いR-77-1やR-27ミサイルが不足しているためではないかと推測している。

また、ロシアのSu-57ステルス戦闘機は、ウクライナ上空でほとんど活躍していないようだが、ロシアのベルベク上空で、135マイルの距離からR-37MでウクライナのSu-27戦闘機を撃墜したという怪しげな話もある。

MIG-31 古い技術、新しい任務

MiG-31は当初、核武装した敵爆撃機(アメリカのB-52、B-1、FB-111アードバーク)の侵入から、ソ連の広大な国境を守るため設計された。長距離ミサイルで爆撃機を迅速に撃墜するために最適化されたMiG-31は、機動性が乏しい。また、搭乗員の視界が悪く、敵戦闘機との目視範囲での戦闘に不利である。

MiG-31

MiG-31 fighter. Image Credit: Creative Commons.

 

一方で、先行したMiG-25フォックスバットの最高速度マッハ3を受け継ぎ、低空を飛行する爆撃機や巡航ミサイルを探知できる「見下ろし撃墜」ザスロンN007フェーズドアレイレーダー(短距離赤外線センサーを搭載)を備え、目にも止まらない速さだ。データリンクにより、フォックスハウンドの乗組員と地上の防空ユニットは互いのセンサーを「見る」ことができ、ミサイル誘導データを交換できた。

近代化されたMiG-31BMモデルは、より大きな空中目標(E-3やE7 AWACS)に対して最大250マイルの検出範囲と、同時に6つの目標に対処できる能力を持つより高性能なザスロンMレーダを備えてる。そのため、パイロットは改良型R-37Mミサイルの長射程を活用できる。

さらに近代化されたMiG-31BSMは、給油プローブを装備し、航続距離を伸ばし、コックピット後部のペリスコープ、より耐熱性の高いキャノピーによりマッハ2.4での超音速巡航(この速度では、流入する空気分子が摩擦を生み出す)の持続を可能にし、多機能ディスプレイと新しい地上攻撃・対艦能力を備えた新型バジェット-55-06コンピュータも搭載する。

MiG-31は、開戦初期に主にクリミア半島のベルベク基地から哨戒飛行を開始したと伝えられている。10月1日、第790戦闘連隊のフォックスハウンド1機が離陸時に滑走路から外れ、炎上、爆発した。同機ではWSOのみ間一髪で脱出できた。

超音速地上攻撃ミサイルKinzhalを発射するための特殊なMiG-31K(別名MiG-31I)もある。同ミサイルはすでにウクライナに対し数回の攻撃を実施している。

MiG-31と航続距離の課題

遅かれ早かれ、ウクライナは西側のジェット機、おそらくF-16やスウェーデン製JAS39グリペンなどの手頃な価格の戦術戦闘機を手に入れるだろう。

これらの戦闘機はMiG-31BMのミサイルやレーダーには負けるが、接近するR-37を検知し、「エスケープゾーン」にいる間に回避するセンサーや対策がはるかに優れているはずである。また、ウクライナで供用中のSu-27やMiG-29のR-27ミサイル搭載機(25~50マイル)よりも、AIM-120長距離ミサイルを搭載したジェット機の方が射程の差が狭くなる(約60~120マイル)し、MiG-31は大きなレーダー断面を持つ。そのため、MiG-31はより遠くから交戦せざるを得ない(つまり、殺傷確率が低くなる)かもしれない。

確かに、ウクライナにおけるロシアのVLRAAMの使用が、ウクライナ・ロシア間の空戦を超えて適用できるかは微妙なところである。しかし、ロシアがVLRAAMの使用に成功したことは、VLRAAMがこれまで考えられていたよりも効果的で安価であり、空対空戦闘において、AWACS、爆撃機、空中給油タンカーを殺すための特殊兵器と考えられていたものが、より広い用途で使用される可能性を示唆している

 

MiG-31

Image: Creative Commons.

 

このことは、ペンタゴンの非ステルスF-15EX機用のVLRAAMと、「バックフィールド」AWACSとタンカー機を保護する対抗策に関する独自研究を後押しするかもしれない。VLRAAMはまた、間もなく登場するB-21爆撃機に対しても魅力的な武器になるかもしれない。

Russia Is Arming MiG-31 Fighters with R-37M Hypersonic Missiles for War in Ukraine - 19FortyFive

BySebastien Roblin

Sébastien Roblin writes on the technical, historical, and political aspects of international security and conflict for publications including The National Interest, NBC News, Forbes.com, War is Boring and 19FortyFive, where he is Defense-in-Depth editor. He holds a Master’s degree from Georgetown University and served with the Peace Corps in China.  You can follow his articles on Twitter.

In this article:featured, MiG-31, Putin, Russia, Ukraine, War in Ukraine

WRITTEN BYSebastien Roblin

Sebastien Roblin writes on the technical, historical, and political aspects of international security and conflict for publications including the 19FortyFive, The National Interest, NBC News, Forbes.com, and War is Boring. He holds a Master’s degree from Georgetown University and served with the Peace Corps in China.  


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