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ウクライナ防空網を圧倒するため、ロシアが旧式核巡航ミサイルをデコイとして再利用するのは理にかなっている
ウクライナ報道によると、ロシアは核弾頭を取り外したKh-55巡航ミサイルをウクライナで発射した。この主張は、未検証だが、もっともらしく聞こえ、決定的な証拠はないものの、近代兵器の在庫が枯渇しつつあるロシアが旧式巡航ミサイルを使用しているのと一致する。
記事は、ウクライナ・ディフェンス・エクスプレスのウェブサイトが発信したが、その後、広く拡散した。オリジナル記事では、11月17日にロシアがキーウ含むウクライナ標的に巡航ミサイルと「神風」ドローンを発射したとある。「オープンソース」を引用し、同日の午前10時40分時点で、ウクライナ防空部隊が少なくとも2発の巡航ミサイルと少なくとも4機のドローンを撃墜したと述べている。
この日のミサイル攻撃は、ドニプロ市、オデーサ州、ハルキフ州も標的とした。開戦以来最大規模となる約90発のミサイルの大規模攻撃の2日後に行われた。今回の攻撃では、ウクライナのエナジーシステムと重要インフラが主な標的となった。
しかし、最も興味深いのは、昨日キーウ上空で撃墜された巡航ミサイルが、NATOでAS-15ケントとして知られる空中発射式Kh-55であったとの主張だ。無名の情報筋によると、このミサイルには「弾頭がついていない」という。
ウクライナ空軍博物館に展示されているKh-55巡航ミサイル。George Chernilevsky/Wikimedia Commons
「この『ラシスト』ミサイルには、弾頭の代わりにブロックが『ねじ込まれて』おり、核弾頭の模造品として機能していた」と報告書は続ける。
これが事実なら、その意味するところは明らかだ。ロシアは核巡航ミサイルを備蓄から取り出し始め、ウクライナに対し通常兵器として再利用している。この場合、核弾頭を前部から取り出し、何らかのバラスト、あるいは通常弾頭と交換し、飛行性能を維持することになる。
このような兵器は、オリジナルのKh-55の性能と精度を維持できる。しかし、爆薬が全くないため、効果は限定的だ。実際、限定的で厳密な運動性パンチのほかには、ウクライナの防空に圧力をかけ、偽目標を提供し、「本物の」ミサイルやドローンが通過する可能性を高めるデコイ以上にはならないだろう。とはいえ、このようなミサイル攻撃には、特に本物の通常型巡航ミサイルに酷似していることから、有用なツールとなる可能性はある。
Defense Express記事には、問題のKh-55の一部とされる残骸の写真が1枚掲載されているが(この記事の冒頭に掲載)、どの部分かは明言されていない。The War Zoneは、この残骸を特定するため、その分野の専門家に問い合わせたが、今のところ結論は出ていない。エンジンの一部との指摘もあり、別の兵器の可能性も残る。
Kh-55については、1970年代半ばに亜音速の戦略的巡航ミサイルとして開発され、より過激な超音速3M25メテオリットに交代した。主要な発射母機はTu-95MSベア-H爆撃機で、後にTu-160ブラックジャック超音速爆撃機となった。
Kh-55SM6発と(カメラに近い)Kh-101/102(8発)を搭載したTu-95MS。 Russian Ministry of Defense
Kh-55はターボファンエンジンを搭載し、飛び出し式無反動翼と折りたたみ式尾部制御面を備えている。このミサイルは、慣性航法システムと地形輪郭照合(TERCOM)の組み合わせで誘導され、座標が判明している目標に使用できる。
Kh-55が搭載するR-95-300ターボファンの模型。Schneeleopard2/Wikimedia Commons
Kh-55は、皮肉にも1980年12月にウクライナのハルキウで量産を開始し、その後、ミサイル本体の側面の追加燃料タンクで射程を伸ばした改良型Kh-55SMに生産が切り替えられた。
運用されていたKh-55とKh-55SMはすべて核弾頭のみ搭載し、収量は200キロトンと言われている。
しかし、冷戦終結とともに、通常兵器型巡航ミサイルが必要となった。そのため、Kh-55とKh-55SMは、660ポンド通常弾頭を搭載した新型Kh-555(AS-22 Kluge)規格に改修された。より高い精度が要求されるため、慣性航法、衛星航法、TERCOM、電気光学式地形認識などを組み合わせた新誘導システムが使用されている。
2000年代半ばに40発程度のKh-55がKh-555に換装された。この在庫は、2015年11月にTu-95MSとTu-160爆撃機が35発のKh-555ミサイルを発射したロシアのシリア作戦で、枯渇ずみのようだ。
その結果、ロシア爆撃機部隊は主に第2世代のKh-101(AS-23Aコディアック)巡航ミサイルを使用するようになった。これは、Kh-55/Kh-555の後継として、核武装したKh-102と開発された、低観測性の全く新しい兵器だ。
2022年5月10日に公開された写真で、Kh-101ミサイルを4発搭載したTu-95MSが見られる。Fighterbomber/Telegram
ウクライナ戦争で、ロシア巡航ミサイルの在庫が深刻に枯渇しているとの証言が複数ある。特に、最新型Kh-101は、西部の優先度の高いターゲット攻撃に最も人気のある兵器だったらしい。ある情報筋によると、ロシアは2月の紛争開始時に入手可能だった精密誘導弾の3分の2をすでに使用ずみの可能性があるという。
Kh-101や他の最新型巡航ミサイルの入手性が低下しているため、ロシアは代わりの兵器を導入している。イランから提供された「神風」ドローンや、冷戦時代のKh-22対艦ミサイルは、Tu-22M3バックファイアーC爆撃機が陸上目標に使用しているが、あまり適さない役割である。
同時に、ウクライナははるかに高性能な地上防空システムを導入し始めている。IRIS-T SLMやNASAMSといった兵器は、ロシアの巡航ミサイル攻撃に対処するため、かなりの程度、取得された。ウクライナからの最初の報告では、少なくともこれらの防空システムが巡航ミサイル迎撃に成功していることが示唆されている。
Defense Express記事が正しければ、ロシアは古いKh-55を在庫から失い、ウクライナ防空を混乱させる手段として(弾頭なしで)使用することに意味があると判断しているのか。もし、Kh-55が耐用年数を迎えていれば、特に意味のあることだろう。廃棄するより、非武装で敵防空システムになりすましたり、限られたダメージでも目標に命中させる方がよい。
また、Kh-55を改造せず同じ役割で使用することも可能だ。爆撃機乗員の訓練用に設計された不活性弾を、ウクライナ目標に向け発射する。防空網を欺く効果は同じでも、大改造が不要のため、簡単に実現できる可能性が高い。
興味深いことに、Defense Express記事では、Kh-55で通常爆弾の搭載は不可能で、ウクライナでこの兵器を使用する可能性があると主張している。しかし、Kh-55が実証しているように、そのようなことはない。だが、Kh-101を新規製造するのに比べれば、改造の複雑さは努力に値しないということかもしれない。
非核化Kh-55の使用は、ロシアが核兵器を使用する可能性があるとする西側主張へのシグナルだという一部オブザーバーの指摘は、空想にしか聞こえない。ロシア爆撃機から広く発射されているKh-101とKh-22は、いずれも核弾頭を搭載可能である。西側諸国は、ロシアの核兵器の能力(と限界)を十分に理解している。
前述のように、ロシアがウクライナで非武装または改造ずみKh-55を使用しているのか、問題の残骸が実際に「不発弾」のKh-55だったのか、ミサイルは無関係の兵器だったのか、現在のところ確かなことは分からない。
そのため、親ウクライナ、親ロシア双方のメディアで取り上げられている。ウクライナ側から見れば、兵器備蓄が減り続ける中で、ロシアが自暴自棄になっている証拠となる。ロシアにとっては、ウクライナ防空網が「騙されて」本来無害なデコイを落としたという事実は喜ぶべきことなのだ。
核兵器専門家に連絡を取り、特定を試みているが、別の残骸が出てこないと決定的な答えを得られないようだ。■
Is Russia Now Firing Denuclearized Cruise Missiles At Ukraine?
BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED NOV 18, 2022 4:34 PM
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