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PLAの台湾封鎖演習は常態化しそう。最新演習では大型無人機も導入し、東海岸からの侵攻もねらっている。

 Chinese TB-001 Scorpion Drone ‘Encircled’ Taiwan

Photo by VCG/VCG via Getty Images

武装型長時間運用ドローンが台湾の東海岸を飛行する新ミッションを開始した

湾当局によると、中国のTB-001スコーピオン中高度・長時間耐久(MALE)ドローンが、前例のないミッションを台湾周辺で飛行した。同型機の飛行は、ここ数ヶ月でより一般的になってきた台湾海峡における中国人民解放軍の航空・海軍活動の急増の最新の例だ。しかし、現地報道によると、台湾国防部がPLA機が台湾を「包囲」したと公に認めたのは今回が初めてだ。

台湾国防部報道発表によると、スコーピオンはまず台湾とフィリピンを隔てるバシー海峡を渡り、東海岸に向かった後、再び中国沿岸に向かい横断した。別の中国製MALEドローンBZK-005も同様のコースで台湾を一周したが、台湾と本土の事実上の境界線である中央線の中間地点で引き返していた。

台湾国防部が発表した4月27日から28日にかけ台湾海峡の中央線を越えた、あるいは南西、南東、北東の防空識別圏に入ったとするPLA機の飛行経路。Taiwanese Ministry of National Defense

2機のドローンは、現地時間本日午前6時までの24時間に台湾周辺で国防部が検知したPLA38機の一部だ。

うち、19機が台湾海峡の中央線を越え、台湾の南西、南東、北東の防空識別圏(ADIZ)に入ったと台湾国防省は発表した。中国軍の機が中央線を越えることは珍しいことではないが、規模は最近顕著に増加している。ADIZは、台湾の監視・パトロール対象であり、海峡全体に加え、中国本土の一部もカバーしていることは注目に値する。

2機のドローンのほか、中央線を越えてADIZに入ったとされる19機の航空機は、Su-30戦闘機5機、J-16フランカー戦闘機2機、J-10戦闘機8機、対潜哨戒機Y-8 1機、偵察用Y-8型1機である。

台湾国防部は、「中華民国軍は状況を監視し、CAP(戦闘空中哨戒機)、海軍艦艇、陸上ミサイルシステムに対応を命じた」と述べ、このような事件に対する日常的な対応策を明らかにした。国防部はまた、同期間に台湾周辺でPLA海軍の艦船6隻が探知されたと述べている。

興味深いことに、TB-001とBZK-005は過去に東シナ海での活動も指摘されていた。

2021年8月、東シナ海上空のTB-001(日本の防衛省が公開した公式写真)。 Japan Ministry of Defense

台湾国防部の発表では、TB-001とBZK-005は「偵察用」ドローンに分類されているが、当初から武装ドローンとして設計されており、胴体の下にセンサー・タレットも搭載するが、各種装備を搭載できる4つの翼下ハードポイントを備える。BZK-005は単発だが大型のTB-001は、ツインブーム尾翼構成を共有するものの、全体的なデザインは大きく異なっている。

TB-001は2016年に設立されたばかりのTengoen四川腾盾科技で最初の無人航空機で、まっすぐで高い位置にある主翼の下の中央胴体の左右に、それぞれ1つのプロペラを駆動する2つのエンジンを備える。

過去にTB-001に関連した兵器としては、FT-7滑空爆弾、FT-8D誘導弾、FT-9とFT-10誘導弾がある。2018年の珠海航空ショーでは、同機はC-701/K対艦ミサイルとCM-502空対地ミサイルと一緒に展示されていた。中国メディアの報道によると、TB-001は40ポンドのAR-2と160ポンドのAR-4空対地ミサイル、および200ポンドのAR-3巡航ミサイルを装備することができるという。

2022年の珠海航空ショーで、各種兵器とともに展示されたテングデンTB-001。Infinty 0/Wikimedia Commons

本日のフライトに加わったTB-001が武装していたかは未確認だがISR用構成としてもはいくつかの素晴らしい能力を備える。TB-001のマルチ情報収集能力は、機首のレーダー、電子情報ペイロード搭載と思われるさまざまな外部ポッド、機体の各所に配置した各種アンテナを含む。また、TB-001は見通し外運用が可能だ。

過去にPLAは、核兵器搭載のH-6爆撃機で「島嶼部包囲」ミッションと称する飛行を行ったが、その場合、2021年11月21日のミッションのように、航空機が島の東岸を比較的短く通過した後に旋回し、戻る傾向があった。TB-001で、同様の、しかし長時間のミッションを行うことは、少なくとも最近では前例がない。

TB-001は、戦略性の高い海峡の上空とその周辺で、各種情報の収集能力を中国に提供することは明らかだ。また、約1,860マイルの航続距離と35時間の耐久性が報告されていることから、台湾周辺にも進出し、台湾東海岸の防空システムやその他の電子放射のレーダーマッピングと分類を行える。東海岸線は伝統的に防衛が手薄だが、最近は台湾がこの状況に対処をめざしている。

2021年9月28日、珠海航空ショーでダミー兵器を積んで飛行するテンデンTB-001。Photo by NOEL CELIS/AFP via Getty Images



TB-001は、さまざまな機能を備えているため、台湾の東側にある潜在的な目標を監視し、有事の際には直接攻撃を仕掛けることも可能だ。


今回の台湾周辺でのPLAの空と海の活動は、今月初めにロサンゼルスで行われた台湾の蔡英文総統とケビン・マッカーシー米下院議長との会談に呼応し行われた大規模な演習に続くものであるらしい。


当時お伝えしたように、この演習では中国の空母「山東」が参加し、いわゆる "精密打撃 "を実践した。航空機や軍艦だけでなく、本土のミサイルやロケット部隊も参加した。


また、特にTB-001の飛行との関連で重要なのは、北京が今月初めの演習で 「多方向の島を包囲する封鎖状況」を想定したと述べたことだ。これは、PLAが台湾に攻勢をかける場合に採用する可能性のある戦略の1つを、非常に明確に言及したものだ。

訓練への空母の参加は、北京が台湾東部に対する軍事作戦の実施に近づいていることを示唆している。空母艦載機、長距離爆撃機H-6、無人機TB-001の組み合わせは、すべて東から台湾に接近し、台湾防衛をさらに複雑にし、あるいは空中・海上封鎖を実施する可能性を生む。


今月上旬の軍事訓練と同様、今日の台湾周辺での活動は、台湾封鎖や多方向からの攻撃を含む、将来起こりうる台湾との武力衝突を想定している。


以前から指摘しているように、台湾に対する実際の軍事作戦に先立ち、ほぼ継続的に大規模な演習を行い、台湾周辺で航空・海軍の活動を活発化させることがある。そのため、このような軍事行動に政治的な意味合いが含まれ、中国の軍事活動を米国含む国際社会が注視している。


今回、米海軍のP-8Aポセイドン哨戒機が、台湾海峡でのPLAの活動を観察した。中国軍によると、今日、海峡上空を飛行するポセイドンを迎撃するために、PLA戦闘機が派遣された。同海峡や他の水路の国際的地位を主張するため「航行の自由作戦」の一環として、米軍機や軍艦が海峡を移動することは珍しいことではない。


米海軍は声明で「国際法に従って台湾海峡で活動することにより、米国はすべての国の航行権と自由を支持する」と述べた。


台湾危機の可能性という文脈は別として、今日のTB-001ミッションは、PLA内でのドローン能力の全体的な高まりと、幅広いミッションのため、さまざまなタイプの無人機へ注目度がますます高まっていることのあらわれでもある。


台湾周辺でのPLAの定期的で活発な活動は、当分続くと思われる。中国がより高性能なドローンを開発し、その操作に慣れるにつれて、TB-001のようなシステムも、日常の監視任務や台湾特化の演習への参加など、台湾周辺でより定期的に出現する可能性が高くなる。■


Chinese TB-001 Scorpion Drone ‘Encircled’ Taiwan | The Drive

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED APR 28, 2023 12:31 PM EDT

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