スキップしてメイン コンテンツに移動

黒海にRQ-170含め米軍ISR機材が多数展開している模様。ロシアの動きを把握していることがウクライナ軍善戦の理由?

 



USAF via FOIA



機密文書は、黒海地域でRQ-170や各種偵察機が運用されている詳細を提供している



洩した米軍文書によると、RQ-170ステルス無人機「センチネル」は、ウクライナのクリミア半島や黒海地域占領中のロシア軍関連の情報を収集するため、2022年9月以降、少なくとも9回出撃した可能性があるという。もし事実なら、レイスWraithsの愛称もある同無人機が、米軍が公式に存在を認めて15年近く経った今も秘密のベールに包まれたまま、運用され続けていることを示す貴重な情報となる。

 フランス語ウェブサイトZone Militaireは、マサチューセッツ州空軍のジャック・ダグラス・テイシェイラ1等兵がネットに流出させた文書から、問題の文書を最初に報道した。2022年9月から2023年2月まで黒海地域における米国とNATOの情報収集・監視・偵察(ISR)の詳細が記載されている。同期間中のRQ-170の飛行データに加え、米空軍RQ-4グローバルホークとRQ-9リーパーのドローン出撃状況、さらに英国のRC-135Wリベットジョイント、フランスのミラージュ2000、NATOグローバルホークによる活動についてもデータが提供されている。フランスが同地域でミラージュ2000戦闘機に外部偵察ポッドを搭載しISR任務で使用していることも、これまで明らかにされていなかった。

 ウクライナやロシア国内のロシア軍がこうしたISR飛行の対象であるとは明示されていないが、添付地図には、占領下のクリミア半島沖で確立した飛行経路が示されている。同文書で言及された航空機が実際にウクライナやロシアを上空飛行したと示されているわけではない。しかし、ロシア軍が2022年2月にウクライナ全面侵攻を開始する以前から、ロシア周辺では米欧による航空ISR活動が顕著に活発化していた。米国政府も、ウクライナ側との情報共有が盛んであることを公言している。

 なお、The War Zoneは、RQ-170飛行に言及した文書の真偽を  確定的かつ独自に検証できなかった。テイシェイラが流出させた資料の少なくとも一部は、加工されたものに見える。ISR関連文書が正当なものならば、RQ-170の飛行が同地域でまだ続いているのか、どこから行われているのかは不明のままだ。

 同文書について問い合わせしたところ、同地域の最高司令部である在欧米空軍(USAFE)の広報担当は、「政策と作戦上のセキュリティの問題として、ISR資産の運用上の詳細についてコメントしない」と述べている。「しかし、日常的なISR飛行は、米国、連合国、協力国のさまざまな目標をサポートしています」。

 The War Zoneは、国防長官室にも連絡を取っている。問題の文書は、統合参謀本部内のJ-32として知られるISRオフィスが作成したと表示されている。

 とはいえ、米軍がこのような状況でRQ-170を投入し、黒海上空の国際空域でスタンドオフ・レンジからISR出撃するのには、それなりの理由がある。空軍は、同無人機を合計20~30機保有していると言われる。第30偵察飛行隊と第44偵察飛行隊が運用していることを確認しているに過ぎない。主な活動拠点はネバダ州のクリーチ空軍基地だが、他の場所でも運用されたことがある。




2017年、カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から飛び立ったテスト構成のRQ-170 Sentinel。Matthew C. Hartman


RQ-170含むステルス機は、発見される可能性が低い情報収集ツールとなる。非ステルス性のISR機は、相手にとって発見や追跡が容易であり、相手はその知識に基づいて、活動を隠したり変え、さらに即座の措置を取る。

 そのため、RQ-170は、敵軍の配置、作戦手順、その他の活動に関する機微情報を収集している可能性がある。センチネルは、合成開口画像と地上移動目標表示機能を備えたアクティブ電子走査アレイレーダー、電気光学センサーボール、電子情報スイートなど、多くのセンサーを搭載できることが判明している。

 もちろん、センチネルはレーダーから完全に見えないわけではなく、ステルス機も同じですが、監視対象となるターゲットに近づいて飛行できる。その結果、収集した情報の質をさらに向上させ、発見されずにそこに留まることができれば、別次元の情報を提供できる。

 また、RQ-170のステルス機能は、敵から機体を守るのにも役立つ。ロシアはウクライナへの全面侵攻を開始する前から、クリミアに堅牢なレーダーを搭載した長距離地対空ミサイルシステムS-300とS-400を追加するなど、防空能力を大幅に強化していた。

 同地域のリスク計算が大きく変化したことも、RQ-170の配備を促したかもしれない。流出文書の時間軸は、2022年9月にロシアのSu-27フランカーと英国のRC-135Wが関わった事件と一致している。リーク文書中の別の文書では、追加二次報告とともに、ロシアのパイロットの1人がコミュニケーションミスによりリベットジョイントを撃墜しようとしたが、幸い失敗に終わったと述べている。ミサイルの誤作動がその場を救った。

 3月にロシアのSu-27に衝突された米空軍のMQ-9が失われたことは、この地域における非常に深刻な状況を浮き彫りにしている。フランカー2機がリーパーを迎撃し、衝突前に燃料を投下するなど何度も接近した。米軍が「無謀で、環境的に不健全で、プロフェッショナルでない」と評した。

 興味深いことに、文書の地図には、米空軍とNATOのグローバルホーク、英国のリベットジョイント、フランスのミラージュの「典型的な」飛行経路が記されているが、RQ-170とMQ-9の飛行経路は記されていない。また、「SECDEF Directed Standoff」と書かれた行があるが、これはロイド・オースティン国防長官の指示によるスタンドオフISR出撃の可能性がある。

 黒海上空でのRQ-170の飛行については、機密資産がロシアに回収されるリスクを考えると、国防長官レベルの承認が必要であることは確かであろう。ロシア当局は、3月に同地域で墜落したリーパーから機密機器を回収したと主張しているが、米軍は同機損失による作戦上の安全への脅威は限定的であると繰り返し主張している。

 The War Zoneは以前、情報公開法を通じ入手した機密解除された記録の情報に基づいて、特にセンチネル配備に関連するリスク評価プロセスについて報告した。そのうちの1機は、2011年にイランで墜落し捕獲された。ロシアと中国が、ほぼ無傷のRQ-170を詳しく調べることができたのは確実だ。

 MQ-9の一部とはいえ、出撃にSECDEF承認が必要であることが不思議だ。しかし、リーパーが機密性の高いミッションに投入されていることは知られており、時には米軍の秘密組織である統合特殊作戦司令部(JSOC)や中央情報局(CIA)の支援のもとで使用されることがある。これは、より脅威の高い環境での作戦を支援するために、空軍が妥当性を確保するため模索してきた、無人機のスタンドオフ能力の向上を反映している可能性もある。

 とはいえ、黒海でのISRミッションにRQ-170が使用されている可能性は、今回のリーク文書で明らかになった中でも、はるかに興味深い。センチネルが過去に使用されたとされる場所は、イラン上空、パキスタンでのオサマ・ビン・ラディン殺害につながる襲撃の支援、朝鮮半島周辺、グアムよりの西太平洋の地域など、多くない。

 今回の文書が正確ならば、RQ-170の運用歴史に黒海が加わることになる。■



RQ-170 Sentinel Stealth Drones May Have Flown Sorties Off Crimea


BY HOWARD ALTMAN, JOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED APR 20, 2023 7:50 PM EDT

THE WAR ZONE



コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...