スキップしてメイン コンテンツに移動

ウクライナ戦の電子戦の教訓は台湾に活用でき、防御強化につながるはずだ

 

THITIMA THONGKHAM


ワシントンは台北と協力し、ネットワーク攻撃からの台湾防御を強化すべきだ


クライナ戦争は、驚くほど有能な劣等生が鈍重な侵略者の前進に抵抗する生々しい映像で世界を埋め尽くした。サイバースペースでも同じことが起きている。ウクライナ防衛隊は、ロシアのサイバー攻撃の猛威を阻止した。この成功は、ウクライナ人の回復力、粘り強さ、プロ意識に負うところが大きいが、アメリカのサイバー能力向上への取り組みにも重要な役割を果たし、中国のサイバー攻撃から台湾を守る教訓となっている。

 米国とウクライナのサイバー協力には、長い実績がある。2015年と2016年にロシア側ハッカーがウクライナ都市の電気を止めた後、キーウは防御を強化するため記念すべき取り組みを開始した。米国とのパートナーシップは、ロシアからのサイバー脅威の増大を背景に、2017年に初の米・ウクライナ二国間サイバー対話で本格的に始まった。最も重要なのは、対話で国防総省、エナジー省、財務省といった米国機関がウクライナのカウンターパートと結ばれ、防衛力を強化したことだ。

 ウクライナ電力網への攻撃からの修復を支援した米国エナジー省はウクライナ政府と協力し、ウクライナのエナジー部門の回復力と国家対応計画を強化した。2014年以降、米国政府はウクライナのエナジー安全保障に1億6,000万ドル以上の技術支援を行ってきた。ロシアがマルウェアでなく巡航ミサイルやドローンで電力システムを狙うようになってきたのは、ウクライナインフラのサイバーレジリエンスの高さを証明している。

 2020年3月、米国国際開発庁(USAID)は、「サイバーセキュリティ環境の強化、ウクライナのサイバーセキュリティ人材の育成、強靭なサイバーセキュリティ産業の構築」を目的とした3800万ドルのプログラムを開始した。この取り組みの重要な部分として、USAIDはウクライナのサイバー防御を強化するソフトウェアとハードウェアのツールを提供した。

一方、財務省は、ソフトウェア工学研究所を通じウクライナ国立銀行と協力し、サイバーセキュリティに関する情報共有を改善しました。その結果、戦前の攻撃にもかかわらず、ウクライナの各銀行は今のところ、ロシアの攻撃を乗り切っている。

 FBIは、ウクライナのパートナーと緊密に連携し、ロシアの悪質なサイバー活動に関する脅威情報を共有し、偽情報キャンペーンを混乱させている。また、7月には米国国土安全保障省のサイバーセキュリティおよびインフラストラクチャ・セキュリティ局が、キーウと情報・技術交流を拡大した。

 そして、米・ウクライナのサイバー協力は、資金、ツール、情報以上のものを伴う。戦争が始まるまでの3カ月間、米サイバー軍は「ハント・フォワード」と呼ばれる防御的なサイバー作戦でチームをウクライナに派遣した。ウクライナのカウンターパートや他のヨーロッパのパートナーと協力し、米国オペレーターはウクライナのネットワーク上で悪意のあるサイバー活動を発見した。ハントフォワードで主要ネットワークへのロシアの侵入を特定し、破壊的なサイバー攻撃を防げた。

 ウクライナでの苦労が報われ、米国政府も効果に注目している。DHSの戦略・政策・計画担当次官ロブ・シルヴァースは、最近のインタビューで、同省は現在、「サイバー協力について大きく考えている」と述べ、「国際協力の機会を、全面的かつ集中的に探すべきだ」と述べている。本誌も同感だ。

 先月、米国が台湾の駐留軍を拡大すると発表したことで、台湾のサイバー防衛能力向上プログラムを開始する絶好のタイミングとなった。CISAディレクターのジェン・イースタリーは最近、中国は台湾に対する軍事行動に伴い、台湾だけでなく、米国やその他パートナーにもサイバー攻撃を仕掛けてくる可能性が高いと警告した。ウクライで準備した取り組みを台湾で繰り返せば、中国に台湾のインフラを麻痺させる能力を再評価させることにつながり、開戦回避の助けになるかもしれない。

 ウクライナで成功したプログラムを台湾で再現するだけでなく、サイバー犯罪に対抗する法執行機関向けのトレーニング・プログラムを台湾のサイバー能力強化策に含めるべきだ。   CISAもFBIともにトレーニングに必要な経験を有している。

12月、年次国防法案の一部で、議会は国防総省に対し、台湾との合同軍事演習を増やすよう指示した。演習にサイバー作戦演習を含めるべきだ。米国とイスラエルのサイバードームVII演習が共同訓練と演習で有用なテンプレートとして機能するはずだ。

 ウクライナは、サイバースペースでの最善の防御は実は単純に有効な防御だと示した。ワシントンは台北と協力し、台湾の防御的なサイバー能力を構築し、攻撃を緩和・阻止することができる。それで、台湾と米国は中国に対抗し、両国の利益を守るため、より良いポジションを確保することができる。■


Ukraine’s Cyber Defense Offers Lessons for Taiwan

By LT. COL. JAMES HESSON and ANNIE FIXLER

MARCH 16, 2023



U.S. Air Force Lt. Col. James Hesson is a visiting military analyst at the Foundation for Defense of Democracies (FDD), where Annie Fixler serves as the Director for the Center on Cyber and Technology Innovation and as an FDD Research Fellow. Follow Annie on Twitter @afixler. The views expressed in this commentary do not necessarily represent the views of the U.S. Defense Department nor the U.S. Air Force.


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM