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これからの海底秘密活動に備えヴァージニア級で特殊改装艦の開発が現実に。広大な海洋資源を有する日本こそこういう艦種が必要なのではないでしょうか。

 今週は中国が永久磁石技術の国外流出を禁止する措置を発表しました。レアアース埋蔵量で世界をリードする立場があっての戦略でしょう。しかし、日本の広大なEEZにはさらに多くのレアアース埋蔵量があるとされ、すでに採掘回収技術の実証も行われています。となると、論理的には日本でも海底での安全保障が話題になりますね。ロシア、中国、米国が海底での秘密作戦用プラットフォームを保有する中、日本も対応を迫られそうです。The War Zone記事からのご紹介です。

Virginia Class Seabed Espionage Submarine Is In Development

USN.

ヴァージニア級原子力潜水艦の新型が、海底諜報活動用に開発されている

れまで海底戦争seabed warfare は、国家安全保障の世界やスパイ小説、そしてあなたが読んでいるこうしたウェブサイトだけに許された、よくわからない話題だった。しかし、ここ数年、海底戦争は世界的に注目されるている。背景には、重要な海底インフラを破壊するロシアの明確な構想がある。また、中国もこの分野で積極的だ。そしてパイプライン「ノルドストリーム2」をめぐる事件によって、この戦争領域は一般的な話題となった。

米国もこの影の領域で能力を発揮しており、ヴァージニア級原子力高速攻撃型潜水艦の改装型で能力を拡大しようとしているようだ。

ほぼ完成した進水前のブロックIVヴァージニア級USSニュージャージー。(HII)

海底戦争は、重要な光ファイバー通信ケーブルの切断や盗聴、パイプラインの破壊にとどまらず、他の形態のスパイ活動も含む。

海底で物体を調べたり、場合によっては回収することは、外国の物資開発および情報収集活動にで重要な役割を担ってきた。同じことが、軍が敵の手に渡らないようにするために、失った機密技術を回収する場合にも言える。アイビーベル作戦やアゾリアン計画など、信じられない過去の話があるが、大部分は深く機密化されたままだ。冷戦時代に広大なセンサーネットワークを海底に展開したが現在も使用されている。

これらはレガシーミッションセットだ。海底戦争の将来には、新しく革新的なセンサーネットワーク、待機したままのスマート誘導機雷、海底ドッキングステーションを備えた長寿命の無人海底ビークル、海底原子炉、その他多くの種類の脅威や革新的技術への対抗が含まれる可能性がある。つまり、海底戦争の性質は急速に変化しており、運用能力も同様に変化している。

特にロシアは、これらの能力に多額の投資を行っており、特殊任務用潜水艦を複数タイプ保有している。ロシアは深海の物体の操作に直接対処する補助艦艇部隊も有している。

海底で作業するロシアのロシャリク型小型原子力潜水艦のイメージ図(NORTHCOM)。

現在、米国には、この種の任務専用に建造された潜水艦が1隻ある。高度に改造されたシーウルフ級USSジミー・カーター(SSN-23)だ。同艦は、シーウルフ級のその他2隻より艦体を延長しており、アメリカの最も貴重な兵器の一つで、約20年のキャリアで、重要だが極秘の作戦を達成したことが知られている。

進水前のUSSジミー・カーター。(米海軍提供:General Dynamics Electric Boat)

現在、ヴァージニア級のバリエーションとして、新たな海底戦用スーパーサブが計画されているようだ。

2022年1月21日にElectric Boat社長のKevin Graneyがコネチカットビジネス&インダストリアルアライアンスの「Economic Summit + Outlook」で行ったプレゼンテーションのスライドには、新しいヴァージニア級ヴァリアントのレンダリングが描かれていた。プレゼンテーションでは、ヴァージニア級SSNの今後の進化を詳細に説明し、海底戦に対応するサブタイプを開発中と明言していた。

グラニーは、「海底戦用バリエーションを開発しており、VPM(ヴァージニア・ペイロード・モジュール)のミサイル発射管を再利用してミッションを実行することになります」と述べていた。

USSジミー・カーターでは、「マルチ・ミッション・プラットフォーム」(MMP)として排水量相当2,500トンの中間部を作るため、100フィートの艦体プラグ追加で大改造されなければならなかったので、これは非常に理にかなっている。これは、遠隔操作車両(ROV)やその他の特殊機器を配備ができる、適応性の高いエリアだ。また、再構成可能なコマンド&コントロールルーム、ストレージスペース、その他の特殊なミッション用機器も備えている。

ヴァージニア級ブロックVの一部となるVPMは、巡航ミサイルや極超音速ミサイルなどを運搬する代わりに、海底戦の役割に適応する84フィートにも及ぶ同様の船体プラグとなる。特に、この先何十年も新技術に対応できるようにしなければならないことを考えると、他にも多くの改良が必要だろう。操縦用スラスターや海底着水能力も、おそらく改造の一部となるだろう。

ただし、新型艦がジミー・カーターの後継艦として建造されるのか、あるいは少なくとも一定期間、ジミー・カーターを補強する存在になるのかは明らかではない。ジミー・カーターはシーウルフ級3隻の中では最も若く、まだ十分な耐用年数を残しているが、原子力潜水艦の寿命から見れば確実に中年である。

先月発表された海軍の2024会計年度の最新予算要求では、このユニークな変種に資金が要求されていることが明確に示されている。また、そのミッションセクションの名称についての情報も示している:

「2024年度は、それぞれ別構成のヴァージニア級潜水艦(VCS)2隻に資金を提供する。1隻は修正ヴァージニアA級海底・海底戦(Mod VA SSW)、2隻目はヴァージニア・ペイロード・モジュール(VPM)。資金はまた将来型SSNの先行調達(AP)と将来の複数年調達のためのEOQ(経済発注量)資金も提供する」。

ということで、このサブクラスの改造はVirginia Subsea and Seabed Warfare、Mod VA SSWと呼ばれるようだ。

この新しいヴァージニアのサブクラスを完全に開発し、配備する所要時間は正確には明らかではないが、海軍は2028年にブロックVの1隻目を受領する想定だ。つまり、すでに構想がどの程度進んでいるかにもよるが、2020年代末から2030年代初頭には、改良型ブロックVサブタイプが登場する可能性がある。仮に2030年に就役すれば、その時点でUSSジミー・カーターは艦齢25歳になる。

ロサンゼルス級攻撃型潜水艦は、一般的に30年前後、一部もっと長い期間使用されたものもある。シーウルフ級は最低30年は使えるように設計されており、1998年に就役した同級2番艦のUSSコネティカットは、2021年秋に海山に衝突した後、多額の費用をかけて修理中で、数年はかかる。こうしてみると、この3隻がキャリアの後半を迎えても、貴重な存在として、しばらく現役であり続ける可能性が高いことがわかる。

海底戦が海底の戦闘空間において重要性を増すにつれ、海軍が特殊仕様艦を追加発注するとしても、それほど驚くことではない。潜水艦のスパイ能力をさらに重視するのは、すでにある種の傾向である。

ヴァージニア級USSミシシッピ。(USN)

中核となるスパイ能力、海中・水上攻撃能力を少なくともある程度は保持するのならば、こうした特殊艦を複数建造することに意味がある。

ともあれ、伝説のUSSジミー・カーターは、そう遠くない将来に仲間を得、場合によっては代替艦を手に入れることになるようだ。■

Virginia Class Seabed Espionage Submarine Is InDevelopment

BYTYLER ROGOWAY|PUBLISHED APR 7, 2023 6:27 PM EDT

THE WAR ZO


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