この技術開発は100年以上前から続く「未来型」技術だ
電磁レイルガンは、第一次世界大戦中にフランスで初めて考案された。それ以来、ドイツのナチスから、中国、ロシア、インド、アメリカ軍に至るまで、戦争の様相を変える可能性のある同兵器の実用化を試みている。
米海軍は、駆逐艦用のレイルガン開発に約15年と5億ドルを費やしたが、2021年にこのアイデアを放棄した。
しかし、レイルガンのコンセプトが死んだわけではない。
日本の防衛省は、極超音速兵器に対抗するレイルガンで米国との提携を検討していると、日本政府の高官は最近National Defenseに語っている。
レイルガンは、2本の平行な導体の間を流れる電気で、非爆発性の発射体を高速で長距離に発射する。速度自体が強力な衝撃をもたらし、爆薬を使わず破壊できる。
コンセプトは1世紀以上前からあるに、レイルガンの実戦配備に成功した軍はない。
防衛省技術研究本部副本部長兼最高技術責任者の三島茂徳は、先ごろ開催されたDSEI Japanで、レイルガンを最優先研究開発課題の一つに挙げた。
「防衛省は過去10年間、この技術で基礎研究を行ってきたが、この技術を完成させるため協力が必要だ」と、詳細説明した。
米国の防衛関連企業がこのプログラムに参加する可能性もある、とインタビューで語った。
「誘導装置や電力貯蔵で助けを求めることができる」と「それらはあなた方の得意分野です。私たちは、例えばレール建設など、材料科学に強みがあります」と語った。
三島は、日本の主契約者は日本製鋼所で、その幹部に対して、BAEシステムズやジェネラル・アトミックスといった米国契約企業に、プログラムに参加できないか働きかけを勧めていると述べた。
BAEシステムズは、アメリカ海軍がレイルガンを開発した際の主契約者だった。陸軍はジェネラル・アトミクス社と契約し、戦車への搭載や長距離砲撃など、陸上用途を研究してきた。
しかし、海軍は同技術に嫌気がさし、2021年に予算投入を打ち切り、陸軍の契約もほぼ同時期に切れた。
「EMRGプログラムを一時停止する決定は、指向性エナジー、極超音速ミサイル、電子戦システムなど攻撃・防御能力の向上を含む海軍のその他の優先事項を支援するため資源を解放する部門全体の改革イニシアティブと一致している」と海軍は2021年7月にプログラムがキャンセルされた際にMilitary.comに言っていた。
しかし、日本がこの砲の主な用途として考えているのは極超音速防衛だと三島は言う。また、島嶼防衛や対艦防衛のために陸上使用も可能だと彼は付け加えた。極超音速ミサイルや航空機は、機動性が高く、マッハ5以上に達することができる装備で、これはレイルガンで対応が期待される速度だ。
「レイルガンが実証できれば、アメリカはこの技術を見直すかもしれない。それは、誰にとっても有益なことなのです」と彼は言う。
北朝鮮や中国の脅威が顕在化する中で、日本はそれまでの平和主義的な政策を捨てて、今後10年間で防衛予算を倍増させる意向を示し、レイルガンのような先端技術に投資している。最近、イギリス、イタリア政府との間で、ジェット戦闘機「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」の製造に向けた3国間提携を発表した。
レイルガン技術に取り組んでいた米国の請負業者二社は、日本の防衛省から連絡を受けたことを認めている。
このうち、BAE Systemsは、Office of Naval Researchと契約している間に、実験室で32メガジュールのレイルガンを達成した。これは、マッハ7.5で220マイルの距離に届く可能性があり、一般的な船舶搭載砲の10倍の距離と同社のプレスリリースに記載がある。
プログラムのフェーズIIでは、実用的なプロトタイプを提供しようとしたが、レイルガンの過熱という技術ハードルを克服できなかったと、当時の報道は述べている。
National Defenseは、海軍がプログラムを終了する前に、レイルガンとプログラムの成熟度についてBAE Systemsに一連の質問をした。
同社広報のティム・ペインターは、電子メールの声明で回答してきた: 「BAEシステムズは、レイルガンとその能力について、日本政府および産業界と話をしてきました。我々は、国際的な同盟国やパートナーを支援し、現在および将来の脅威を抑止するための革新的なソリューションを提供するため、米国国防総省と密接に連携しています」。
ジェネラル・アトミクスは-2000年代に海軍とレイルガン技術に取り組んだ後、陸軍と組み、移動式大砲や戦車の一部となるレイルガンを開発した。
国防総省の装備品技術コンソーシアムは2018年、陸軍軍備研究開発技術司令部を支援するため、レイルガン兵器システムの能力を評価し成熟させる3年契約を同社に交付した。
同社は、陸軍のユタ州ダグウェイ試験場での試験用に、10メガジュール、マルチミッション、中距離レイルガン兵器システムを納入した。このプロトタイプは、60マイル以上の有効射程を目標としていた。
ジェネラル・アトミクスの陸軍向け事業は2021年に終了したが、同社は長年にわたり、自社負担で研究開発費を続けてきたと広報担当者は述べている。
ジェネラル・アトミクスの電磁システムズグループの戦略的コミュニケーション兼マーケティングのディレクターMeghan Ehlkeは、電子メールで、「昨年、ジェネラル・アトミクス電磁システムズは、日本のレイルガン計画について話し合うため防衛装備庁と日本製鉄所の両方と会っています」と述べている。
「レイルガン計画で開発した技術を応用し、当社の武器システムポートフォリオを進化させるため、米国陸軍や他の軍と協力し続けています」とEhlkeは言う。また、このプロジェクトで日本との協力を熱望していると付け加えた。
「この機会を歓迎するだけでなく、ジェネラル・アトミックス・エレクトロマグネティック・システムズ両社は、日米両政府に協力して、日本の防衛力強化に貢献することを楽しみにしています」と語った。
全米防衛産業協会の新興技術研究所所長で、極超音速の専門家マーク・ルイス博士は、極超音速兵器に対抗するレイルガン弾の実現性には疑問があると述べている。
「別のミサイルに向け発射されるミサイルには、標的の約3倍の操縦能力(gで測定)を持っていなければならないという経験則がある。言い換えれば、ミサイルが防衛システムを回避するのは、容易であるということです。そして、機動力のある着弾兵器が、相対的に機動力の低い弾丸を回避する方が、間違いなく簡単なのです」と言う。
従来の発射体は推進剤を使用しており、速度上限はマッハ4程度だ。「レイルガンは電磁力を推進力に使うため、起爆速度の制限がなく、理論的だが極超音速が実現できる」という。
この技術の開発における主な問題は、必要なエナジーと発生する熱の2つであるという。
レイルガンは大電力を必要とし、それが常に利用できるわけではない、とルイスは指摘する。「そして、その電力はどこかで消費されなければならない」。
ニューアメリカシンクタンクの戦略家であり、アリゾナ州立大学の実践教授であるピーター・W・シンガーは、海軍が中止したレイルガンのプロジェクトについて、「あまり成熟していなかったが、様々な結果を示していた」 と述べている。
このプログラムでは、過熱から発射薬に至るまで、様々な分野で重要な課題が確認された。また、海軍は駆逐艦に搭載することを望んでいたため、搭載電力を確保する必要があり、エナジーの問題もあった。
シンガーは、ペイトリオットミサイル用とほぼ同じ大きさの車両に搭載し、対空・対ミサイル・長距離攻撃を可能にする陸上型についても言及した。
「陸軍は近視眼的に興味を示さなかったが、陸上型は、電力問題を解決できたかもしれない」と彼は言う。
三島は、陸戦型レイルガンの場合、地域の電力源を利用できるため、発電の問題がないことにも言及した。ルイスは構造的な問題についても言及した。
「レイルガンは弾丸に極端な電磁力を作用させることで動作しますが、その力はレイルガンの構造そのものに作用します。つまり、レイルガンは自壊しやすいのです」。
「技術問題が解決されれば、明らかな「もし」だが、対ミサイルから攻撃まで、幅広い分野で重要な応用が可能だろう」とシンガーは付け加えた。「いずれは、その日が来るでしょう。重要なのは、スピードと射程距離だけでなく、ミサイルと比較した場合の1発あたりの相対的なコストです」。
従来の弾薬は推進剤を必要とし、製造にコストがかかります。レイルガンは、固体金属片さえあれば、弾丸の質量と速度に依存してダメージを与えることができます。
National Defenseは、海軍の広報室と、研究・技術担当国防次官であるHeidi Shyuに連絡を取ったがコメントを避けた。海軍研究室も問い合わせに応じていない。
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