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T-7レッドホーク練習機の生産移行が大幅に遅れている点について---ボーイングの開発がなぜかいつもトラブル続き

 


ーイングT-7レッドホーク高等練習機では、2018年に同社が初期契約を獲得して6年半後の2025年2月まで、低率初期生産決定の準備が整わないだろう。




 「マイルストーンC」の初期生産決定の新しい日付は、2022年後半の予想より14カ月遅れ、原因のひとつは射出座席の安全性に対する懸念だ。米空軍によれば、これらの問題やその他の問題は現在解決済み、あるいは近日中に解決される予定という。

 最初の生産仕様機の引き渡しは、早くても2025年12月になると、空軍は述べている。当初は2024年の予定で、最近では2026年に期待されていた初期運用能力(IOC)を、この遅延がどれだけ押し戻すかは不明だ。

 いずれにせよ、T-7の遅延の波及効果として、空軍がT-7の後継機とする60年前のT-38練習機のさらなる寿命延長に投資せざるを得なくなる可能性がある。空軍は、エイビオニクスのアップグレードとともに、同機のペーサー・クラシックIIIの構造変更に、24年度も1億2530万ドルをつぎ込む。

 空軍は少なくともT-7Aレッドホーク351機のと高忠実度シミュレーター46機のを購入する予定だ。米空軍の新しい「リフォージ」戦闘機パイロット訓練計画で合計が増える可能性がある。ボーイングの契約では、最大475機を購入することになっている。

 空軍とボーイングは、T-7の「改良と最近のテストが安全で効果的な脱出システムを実現したと確信している」と、空軍の広報担当者は述べている。

 昨年の計画文書では、2024年度のT-7生産に3億2100万ドルを費やすとあったが、空軍は最近の予算要求で2024年度のT-7生産資金をゼロにした。

 「マイルストーンCが2025年2月に移動した」ため、調達資金は「低率初期生産向けの予算は24年度は不要」という。マイルストーンCでは、国防次官(取得・維持担当)が、プログラムがEMDからの撤退基準を満たし、生産準備ができたかどうかを判断する。


射出座席の懸念点と開発日程の見直し

遅れの主原因は、射出座席試験で指摘された懸念だ。空軍関係者によると、ボーイングの脱出システムはパラシュート開傘時に危険な減速を示し、パイロットのバイザーがちぎれ脳震盪を起こす可能性があるという。しかし、業界関係者は、米空軍のクラッシュダミーは不適切に計測されており、不正確な結果を示唆すると指摘している。情報筋によると、USAFはデータの一部を再検討しているという。

 2018年の最初の契約では、ボーイングは2023年に最初の生産機5機を納品することになっていた。そのほとんどは現在完了しているが、開発飛行テストは座席問題で滞っており、現在は9月に開始の見込みであると空軍の広報担当者は述べた。ボーイングは先週、開発テストは 「今年の夏 」に開始の見込みと述べていた。

 ボーイングは昨年、射出座席トが最小・最軽量のパイロットだと期待通りに機能しない問題に遭遇した。T-7は、様々な体格のパイロットに対応できるように設計された最初の米空軍機である。これまでの練習機や戦闘機の射出装置は、狭い範囲の体格にのみ対応し、特に小柄な女性など、多くの学生パイロット候補を排除していた。

 空軍の調達担当幹部アンドリュー・ハンターAndrew Hunterは、3月の予算証言で、同座席を使った最近のソリテストによって、射出問題は解決に向かっていると確信したと述べた。

 「シートのロジックをマイナーチェンジしたことで、システムリスクを減らし、パイロットの安全性を高めている」と広報担当者は説明している。さらに、「空軍とボーイングは、2023年を通して射出座席の性能を調査し、さらなる強化点を特定しており、ボーイングは試験結果をもとに、座席を安全な製品として認定するため必要な変更を通知する」と説明している。

 サプライチェーン問題もT-7の遅れの原因になっていると空軍は述べています。

 「23年度大統領予算に先立ち、空軍とボーイングは開発上の発見とCOVID-19世界的流行に一部起因するT-7A『レッドホーク』プログラムへのスケジュール影響を認識した」と、米空軍広報担当者は述べている。

 2022年6月、USAFとボーイングは「これまでのすべてのスケジュール遅延の総合敵な影響を評価するために、スケジュールの再設定作業を開始した。「地上(テスト)、飛行前テスト、ハードウェア資格の課題、欠陥を迅速に修正できない請負業者、下請けの初期設計遅延、空力的不安定性を発見した3件、脱出システム資格の遅延、サプライヤー重要部品の欠落などが挙げられる」と説明した。

 「徹底的な」スケジュールリスク評価の結果として、「T-7推進室は、2025年2月という新しい『マイルストーンC』日付を推奨し、変更の最終調整を待っている」と広報担当者は述べている。

 空軍は、失われた時間を取り戻すためテストを加速させるつもりはない。空軍とボーイングは「より積極的な飛行試験で遅れを克服できるとは考えていない」と広報担当者は述べている。計画されている飛行試験スケジュールは、「これまでの成功に基づいた積極的なものである」という。

 ボーイングは、空軍が「生産関連」と呼ぶ最初の2機のT-7「T1」と「T2」を、同社のミズーリ州セントルイス施設で飛ばしているが、空軍パイロットは、シートやその他の問題が解決されるまで、試験目的でEMD前のジェットを飛ばすことは許可されない。


デジタルで大幅な日程短縮、コスト低下のはずだったが

 米空軍によると、T-7の最初の3機の技術・製造開発(EMD)機が完成し、さらに2機が製造の最終段階にあるという。この5機で 「飛行試験には十分でしょう」。

 空軍上層部は、T-7Aを、主要なシステムをどのように購入するかの今後の道しるべになると指摘している。ボーイングとパートナーであるスウェーデンのサーブは、T-7プロトタイプのデジタル設計から初飛行までを3年で行い、胴体部と翼部の嵌合はシミング無しで行われた。90億ドルのT-7契約は、この空軍の見積もり想定を約100億ドル下回り、T-Xコンテストでボーイングの競争相手をはるかに下回ると判断された。同社関係者は、デジタルアプローチにより、同社の入札価格は現実的なものとなり、低評価を免れたと述べている。■


Why USAF's New T-7 Trainer Won't Start Production for 2 More Years

April 14, 2023 | By John A. Tirpak

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