台湾が自由と主権を守るために防衛力を整備するのは当然として、大陸との軍事力の差が開いている事実を前にいろいろ知恵を出佐是ルを得なくなっています。以下はランド研究所が刊行した分析の要約のようですが、ここでも戦闘機第一のこれまでの空軍の価値観が大きく揺さぶられることになりますね。ミサイル防衛の対象が防衛軍の装備、運用基地であることが改めて理解できます。
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Taiwan Forced To Rethink Its Air Defense Strategy
Michael J. Lostumbo, Special to Defense News 4:23 p.m. EDT April 13, 2016
台湾の防衛当局が難題に直面している。中国への抑止効果を上げるべく軍事力近代化でこの25年間巨額の予算を投入してきたが、空の優越性だけでは十分ではなく陸上、海上での軍事作戦も準備しなければならない。
- このため中国の人民解放軍(PLA)が航空優勢を確立できなくするのが重要課題だ。中国は台湾の戦闘機を制圧戦術を確立しており、台湾にとって戦闘機部隊は国防予算で効果の低い支出項目になった。
- そこで台湾は戦闘機のみに依存する防空体制を見直すべきだ。地対空ミサイル(SAMs)こそが高い防空効果を発揮できる装備であり、支出効果も高い。
- 中国により台湾戦闘機には三方向で脅威が高まっている。まず地上は脆弱で機数でもかなわない。また空中でも大きく劣勢だ。中国はミサイルを整備し台湾基地を正確に狙い、滑走路の脆弱性が特に危惧される。
- 山岳地帯に機材を避難させても、山岳地帯からでは作戦の継続支援は困難だろう。高速道路を滑走路にする構想もあるが、問題解決策としては不十分だ。PLAは台湾機の一挙一動を追跡探知する能力があり、着陸地点が判明すれば即座に攻撃してくるだろう。
- 台湾戦闘機は地上で標的になるだけでなく、空中でも劣勢だ。中国が数量ともに優勢な機材を配備する一方台湾機は1990年代に第一線配備された機材だ。F-16でレーダー換装など近代化改修がすすむが完成してもPLAの機材以上の性能にならない。
- PLAが大規模攻撃を仕掛けた場合に台湾空軍の戦闘機が主導権を握ることは期待できない。PLAは簡単に制空権を得るだろう。1991年の湾岸戦争では米国は精密空爆を繰り返した場合に地上兵力の残存はほぼ絶望的だとイラクを相手に実証している。台湾の場合はPLAの航空優勢に対抗できないことが波及効果を生み、台湾軍は防衛作戦を有効に実施できなくなる。台湾が必要とするのは分散型防空体制で防衛効果を上げることだ。
- PLAの軍事力により台湾は防空体制を再構築する必要が生まれている。台湾空軍の戦闘機およそ300機は今後の防衛予算で相当の比重となるが、前述のように戦闘機に対する脅威は現実のもので、戦闘機はもはや台湾の防空体制の主役ではない。
- 中国の攻撃を抑止できる防空体制の整備が台湾の課題だ。SAMsは完璧な解決策ではないが、戦闘機より残存性は高くPLAへの対抗で有効だろう。SAMsを効果的に使用する場合は、固定目標を防御するよりも敵に攻撃の代償を払わせることだ。もっと効果があるのはSAMsで台湾軍をPLA航空攻撃から守ることだ。台湾部隊の損失を減らしつつ防衛効果を引き上げられる。
- 今後も台湾は相当の予算を防空能力整備に使い、その効果を期待する。SAMsは投資効果を最大にするので、台湾は防空には戦闘機ではなくSAMsを中心とすべきだろう。
本稿の執筆者マイケル・J・ロスタンボはRand Corp.で国際政策分野の上級研究員。
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