What If America Invaded Iran? Why a War Would Not Be Easy.
米軍がイラン侵攻したらどうなるか。一筋縄でいかない戦いになる
Invading Iran and dictating terms to an occupied Tehran would be one way to achieve regime change. However, the United States would struggle to directly overthrow the Islamic Republic regime through force of arms.
イランを侵攻しテヘランを占領すれば政権変更の一つの方法だろう。しかし米国は武力によるイスラム共和国体制の放逐に相当苦労するはずだ。
November 5, 2018 Topic: Security Region: Middle East Blog Brand: The Buzz Tags: IranMiddle EastWarTechnologyRegime Change
トランプ政権はイランが合同総合行動計画Joint Comprehensive Plan of Action (JCPOA)を遵守していないと断定する動きのようだ。ただしイランに違反証拠はない。JCPOAにかねてから批判的な向きは今回の動きは正しいと支援している。米政策が目指すのはイスラム共和国の終焉であり、テヘランの現政権の放逐である。現政権が存続を続けると二国間あるいは多国間合意でいくら制約を課しても中東の秩序を揺るがす動きが止まらず、公然非公然に軍事手段の行使もためらわなくなる。米国でこの立場をとるのが民主主義防衛財団のマーク・デュボウィッツやトム・コットン上院議員等である。イラン政権の変更を求める動きは中東にもあり、特にイスラエルとサウジアラビアに強い。
公平を記せばこうした主張をする向きでも軍事作戦でイスラム共和国打倒を求める声は皆無に近く、そのような作戦を展開して成功の代償を負担してもいいとの声は少ない。とはいえ政権転覆を目指す戦いがどんな様相を示すかを考えて見る価値はありそうだ。ブッシュ政権がイラクの政権転覆を政策目標に定めて開戦につながったのは疑う余地がない。トランプ政権も同様に政権転覆を志向すれば開戦は遅かれ早かれ避けられないのではないか。
イラン侵攻は可能か
イランに侵攻しテヘランを占領する以外に政権変更の実現手段はないようだ。しかし米国がイスラム共和国を力で転覆させようとすれば相当苦労することになる。米国には地域内にイラン侵攻用の兵力を整備する基地がない。このため米軍部隊はイランの弾道ミサイル攻撃の前に脆弱となり損害多数を覚悟せねばならない。さらに戦闘終了後のイラン占領問題は簡単に解決できない。
封鎖作戦、侵攻作戦
政権転覆を求める向きによるJCPOA批判の中心はイラン制裁が最終的にイスラム共和国崩壊につながる考え方そのものだ。政権転覆をめざす軍事行動はイランの経済基盤を崩す効果を生み、同国民衆が不満を募らせ反革命運動に走ると期待したいところだ。侵攻しなくても米国は軍事経済両面の封鎖で現政権の崩壊を引き起こせる。その場合、空爆や海上からの巡航ミサイル攻撃のほか特殊部隊を展開させるはずだ。
経済封鎖はイランのみならず世界各地にも影響を与える。だがこの作戦に同調する同盟国は皆無に近く、実施の場合は重要技術内容の輸出入をとめる物理的手段が必要となろう。
作戦の初期段階ではイラン国内の軍事施設が標的となり、とくに空軍基地、海軍基地、弾道ミサイル基地を狙うはずだ。攻撃は相当の損害を与え、同時にイラン防空体制も攻撃する。イランの海軍・空軍は大損害を受け、ミサイル部隊多数が損壊するだろう。湾岸地区の米同盟国が基地を提供するはずでサウジアラビアも当然ここに含まれるが、長期にわたる対イラン作戦を支援するかは大きな疑問だ。
イラン軍や統治機構を狙う攻撃は相当の損害を与えるだろうが、米国の目標はイラン政権への国民支持を低下させることだ。このため米国はイラン経済を狙い石油施設や輸送インフラを狙うはずだ。これでイラン経済は少なくとも短期的に大打撃を受け、イスラム共和国のみならず貿易相手国にも影響が生まれる。ただし民間を標的にすれば米政策および武力紛争関連法に抵触する。米国としてはイランの経済インフラを標的とする理由は妥当と説明するはずで、イランが国家統制で経済を運営し輸送も軍用に利用していると指摘するだろう。米軍はISISでも石油インフラを空爆での破壊に成功している。これがISIS石油関連事業の崩壊に繋がり、同時に輸送トラック等の輸送手段も崩壊した。イラン侵攻でテヘランを占領すれば政権変更につながるだろう。だが米国は軍事力を持ってしてもイスラム共和国体制の崩壊には苦労させられるだろう。
作戦はイラン国内の反政府勢力の大々的支援と調整しての実施となるだろう。その一派にイラン人民ムジャヒディンがある。そのため武器供与、情報収集、抵抗勢力向け訓練のほか、新規戦力の募集も必要となりクルド人が有望だろう。だが地上部隊編成には長い時間がかかる。一定規模の地上部隊がなければイラン地上兵力の壊滅は不可能だ。さらにイラン陸軍、革命防衛隊の相当部分が市街地に配備され国内騒乱や市民の反乱を防ぐ役割を果たすだろう。
イランの反応は
米軍攻撃を受けてイランには多様な選択肢が可能だ。イランはイラク、アフガニスタンを不安定化させる動きを強化すべく代理勢力や武器輸出を利用するだろう。同様に域内の代理勢力に米軍基地、艦船を攻撃させつつ米同盟国の軍事経済インフラも攻撃するだろう。ただしミサイル部隊は時間経過で消耗するはずだ。可能性が高いのはイランがなにもせずに国際世論が米国に反対の論調となることで、これで米国が攻撃を実施できなくなるとの考えに基づき待つことだ。
結論
政権転覆が成功する可能性は低く、問題を解決するどころか逆に悪化させそうだ。
第一に攻撃でイランの国民感情が激昂し現政権支持を強める効果が短期的に発生する。攻撃を受けた現政権に社会経済の締め付けを強める口実が生まれる。こうした締め付けは長い目で見て失敗するが。
二番目に米国が政権転覆を狙う作戦を展開しても国際的支援は期待できない。サウジアラビアやイスラエルはじめ同盟国は戦闘長期化の際の費用負担に恐怖を感じるだろう。ロシア、中国が支持するとは到底考えられず、むしろテヘランへの圧力緩和を求める動きに走る可能性がある。ヨーロッパ各国では国民の反対が根強く、本来なら理解してくれるはずのフランス、英国の指導層もワシントンと距離を取るだろう。
三番目に軍事介入がどう止まるかが不明だ。イランを軍事的に封じ込める米国には国際支援がつかず、逆にイランは各国の同情を集める動きを加速するだろう。イラン指導層はこの動きを理解しているようだ。イスラム共和国が崩壊しないと米国は敗北を認めるか、あるいはもっと危険なエスカレーションに走るかもしれない。
良い面では作戦が失敗に終わりテヘランの現政権の転覆ができなくてもイランの軍事・経済・科学の基盤に大きな損害が長期的に発生し、イランの軍事的野望は後退するだろう。この結果、中東内の米同盟各国へ最大の影響が生まれるだろう。
政権変更がうまく機能しても成功の可能性は高くない。戦闘でイランは深刻な被害を受けるが、イスラム共和国打倒は成功しても米国にとって数十年を要する目標となろう。■
Robert Farley , a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government.
サウジアラビアをめぐる不可解な背景に西側がメスを今ひとつ入れられない理由が中東の複雑な力関係、特にイランの存在です。日本にはとても理解し難い力のバランスですが、宗教よりも地政学の問題でしょう。日本にとってもエネルギー安全保障の観点からも簡単にどちらかを糾弾できないのがつらいところです。米国がイランをここまで警戒するのは日本が北朝鮮に神経をとがらせるのと同じでしょうか。
ハンチントンが1996年に出版した「文明の衝突」で「儒教-イスラム・コネクション」について警告しているが、米政権は、儒教(中国、北朝鮮)、及びイスラム(パキスタン、イラン)の双方に対する対策、特にこのコネクションの要である中国への対策を怠った。その結果、このコネクションは強化され、通常兵器のみならず核兵器、及び運搬手段までも拡散することになった。米国は、この過去の怠慢の付けを将来も支払い続けることになるのだろう。
返信削除イランは、核合意を結び核兵器の開発を中断したように見えるが、容易に核開発を再開し、あるいは北朝鮮から核兵器を譲り受けるかもしれない。米国はこれを危惧しているのであろうが、核合意の一方的放棄は、イランとの新たな合意を要求するにしても拙いやり方であり、国際的合意を得られないのは当然と言えるだろう。
だからと言って、米軍のイラン侵攻は有り得ない。米国にその力は無い。イランにそれを見透かされている。
結局、米国は、今年の夏に報道があった「アラブ版NATO構想」を推進することがベストな選択になるのではなかろうか。