スキップしてメイン コンテンツに移動

★YF-23はなぜ神格化されるのか

The YF-23 Stealth Fighter Won’t Save Us 

YF-23では救われなかったはず

Stop mythologizing Northrop Grumman's old airplane

ノースロップ・グラマン製同機の神格化やめよう

The YF-23 Stealth Fighter Won’t Save Us

1994年、NASAドライデン施設に到着したYF-23 NASA photo


WIB AIR November 16, 2018 David Axe


1994年以降飛んでいないステルス戦闘機実証型がここにきて存在感を強めている。
だがYF-23が再び脚光を浴びるのは米国の国防力を弱めかねない有害な神秘思考が裏にあるからだろう。
YF-23はノースロップ・グラマンが空軍の高性能戦術戦闘機競作で提案したF-15後継機を狙う機材だった。
ノースロップは尾翼二枚、双発の実証機を二機製造し、ロッキード・マーティンのYF-22実証機と競合し、1990年から1991年にかけ評価に臨んだ。1991年8月に空軍はYF-22を採択。ロッキード・マーティンはYF-22からF-22を開発し、2005年に実戦配備が始まった。
ノースロップはYF-23両機をNASAに寄贈し、その後機材は博物館入りした。両機がドライデン飛行研究センター(カリフォーニア州)まで飛行移動した1994年が最後のフライトだった。
それから二十年余たち、YF-23は「あのときもしも」の分野で人気を集める存在になっている。「専門家の中にはノースロップのYF-23の方が優れていたと主張する向きが多い」とカイル・ミゾカミがPopular Mechanics記事に書いている。「F-23になっていればどんな姿だっただろうか」とデイヴ・マジュンダーがNational Interestで問いかけている。
YF-23の仮想記事で究極の存在がThe War Zoneのタイラー・ロゴウェイがデジタルアーティストのアダム・バーチとともに実戦仕様の「F-23A」想像図を見事なアートとして紹介した記事だ。
マジュンダー、ミゾカミ、ロゴウェイともにプロだ。筆者の同僚であり友人でもある。非難するつもりはない。ただYF-23を求める声づくりに寄与しているだけだ。
YF-23 and YF-22. U.S. Air Force photo


YF-23の神格化は上記三名の責任ではない。むしろ米国文化に広く根付き、とくに軍事関係者で見られる危険思想の象徴だ。
この技術なら国が助かる。あの技術では役立たない。間違った技術を開発してしまったからだ、というのだ。「技術から思考が生まれる。技術が思考になる」と空軍を大佐で退役したウィリアム・アスターが書いている。
F-22はあきれるほど高価であるが高い効果を発揮している。同機は数千回といかずとも数百回の実戦フライトをこなし、シリアのイスラム国戦闘員を攻撃した。ロバート・ゲイツ元国防長官が2009年に下した187機でのF-22生産終了の決定に今でも疑問を抱く向きがある。空軍はもっと多くの機数を希望していた。
だがF-22でテロ活動に終止符を打てない。周辺地区に進出したロシアが過去の戦争の記憶を呼び起こすのも止められない。中国の経済拡大や軍事拡張主義も止められない。米軍のイラク侵攻の破滅的結果を逆行させることもできないし、20年にわたるアフガニスタンでの米軍作戦行動を終わらせることもできない。
これだけのハイテク、これだけの時間、熱意と予算をかけて米国が開発したF-22でも解決策になっていない。
そうなるとF-22が正しい選択肢だったのか疑問が出るのは当然だろう。おそらく、F-23でもF-22と同じだったはずだ。では空軍が別のステルス戦闘機を採用していたらどうなっていただろうか。米国の軍事力がもっと強大だったらどうなっていたか。もっと安全な環境だったらどうなっていたか。世界全体が今とちがう姿になっていらどうなっていたか。
アスターはさらにこう述べている。「米国人は技術を万能薬と見る傾向がある」 自然と歴史が証明するように技術は万能の解決策ではない。地球は温暖化にむかい、他者を隔てる壁を作っており、人間の世の中で意思決定を動かすのは恐怖だ。米国人はある技術を批判し、別の選択肢を求めようとする。
長く地上にとどまったままの試作機に過去の歴史を見つめ同機が採用され現在よりマシな世界になっていたはずと想像したところで、あるいは世界がもっとマシな姿になっていたはずと想像してなんになるのか。
YF-23も解決策になっていなかったはずだ。■


下は記事で言及しているCGの無断借用です。F-22よりもF-23に魅力を感じる向きが多いのでしょうか....




コメント

  1. 「YF-23が実戦配備されていたら、全ての戦争に終止符を打てていたんだ!」
    「な、なんだってー!!」

    機体の価格は、機体の大きさに比例する傾向にありますから
    YF-23の価格は、F-22より高くなっていた可能性が高いでしょう。
    米軍の新戦闘機配備計画は、今よりも苦境に立たされているかもしれませんね。

    そもそもF-22の真価が必要な状況が発生していないため比較のしようが無い…

    返信削除
  2. 結局YF-23が選定されなかったのは米空軍の要求する仕様に対して何らかの難があったということだしYF-22よりも高価だったらしいからね…。

    返信削除
  3. 赤外線対策に水平尾翼必要とする用兵側の意見と費用対効果がF-22が採用された理由だったはず。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ