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歴史に残る機体20 ロッキードP-38ライトニング


Hitler Hated This: Why Nazi Germany Feared the P-38 Lightning ナチ・ドイツがP-38ライトニングを恐れた理由

The hero of World War II? 第二次大戦で戦功を上げた機体といえるのか
November 22, 2018  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: P-38 LightningWorld War IIU.S. Air ForceNazi GermanyImperial Japan

1937年に米陸軍航空隊が新型迎撃機の提案要求で時速360マイルで短時間で高高度上昇可能な性能を求めた。ケリー・ジョンソンは当時は小企業で軍用機で実績のないロッキードの設計者で双発機でなければ要求は実現できないと計算をはじいた。
ジョンソンの提案内容は他社と全く異なっていた。アリソンV-1710水冷エンジン双発のYP-38では長い2つの胴体が尾翼でつながり、パイロットは中央部のポッドに座り武装は50口径機関銃4門と20ミリ・イスパノ機関砲1門だった。ターボ過給器が各エンジン上部につき高い上昇性能を実現し、実用高度限界を引き上げ、プロペラは逆回転でトルクを打ち消した。
P-38は高速飛行可能で時速395マイルを出し、航続距離も1,100マイルと長かった。しかし、機体構造が新奇のため欠点もあり、とくに急角度高速降下に陥ることで悪名を轟かせ実際に犠牲者もでている。エンジンは取扱がむずかしくパイロットは高度の訓練が必要だったが実際にそこまで技量を上げていたものは少ない。コックピットの温度調整が悪く、高高度で凍結し熱帯では酷暑に悩まされた。
こうした欠点のため英空軍はライトニング発注を取り消し、真珠湾攻撃後に参戦した米国が採用した。米戦闘機の中で唯一戦中通じて生産され計1万機が完成している。
P-38の単価は120千ドルで単発戦闘機の二倍だった。だがP-38の長距離飛行性能とペイロードが大きいこと(爆弾、ロケット弾を3千ポンドまで搭載した)から開戦当初当時の単発機でこなせないミッションを担当した。
1942年9月、アラスカ州アリューシャン列島でライトニング2機が初の撃墜実績をあげた。H6K水上機(97大艇)だった。その5日後にアイスランド駐留のライトニングが初のドイツ機を撃墜した。Fw-200コンドル海上哨戒機だった。その年の冬にライトニング部隊は北アフリカのドイツ軍補給線に打撃を与え、ゲベルシュワンツ・トイファル(双胴の悪魔)とのあだ名を得た。機首搭載の兵装は正確かつ威力が高く当時の米戦闘機が搭載した主力搭載兵器より効果が高かった。
P-38は低空では敏捷性が高いものの高高度で動きが鈍く、B-17爆撃機援護では機動性で優れるMe-109やFw-190戦闘機の前に損耗率が高かった。第七空軍はライトニングを地中海地方で多用し、ルーマニア、ブルガリア空爆にも参加させた。少数の機体が捕獲されイタリア、ドイツのパイロットが操縦し連合軍爆撃機を襲った。
1944年までにジョンソンはライトニング機体構造の欠陥を把握し解決策を講じていた。動力つきエルロンや急降下フラップで飛行中のロック状態発生と急降下は避けられるようになった。大戦末期には無塗装のP-38J型L型が改良策を施され追加燃料タンク、加熱式飛行服を導入し、エンジンは1,475馬力(「あご」式の冷却器が特徴)に拡大し最高速度も420マイルに伸びた。
2,000ポンドの兵装運用能力を活かし、ライトニングは戦闘爆撃機として爆弾や5インチ高速ロケット弾の威力を発揮した。ノルマンディー上陸作戦では黒白の侵攻部隊識別標識をつけフランス北西部上空を飛行し、ドイツ軍司令部、レーダー基地、鉄道、車両を破壊した。
だがドイツ戦闘機との一騎打ちではライトニングは不利で、単発機のマスタングやサンダーボルト並みの評価はもらえなかった。太平洋戦争ではライトニングは米陸軍戦闘機中で最高性能の機材で熱帯気候でもエンジンは高信頼性があり、機銃掃射は正確かつ無慈悲に軽装甲の日本軍用機を葬っていた。
米戦闘機パイロットで最大の撃墜記録を達成したパイロット二名、リチャード・ボング(40機)、トーマス・マクガイヤ(38機)はともにライトニングを操縦した。両名は戦中に死亡しており、マクガイアはフィリピンでのドッグファイトで地上に激突し、ボングはF-80ジェット戦闘機の離陸に失敗した。
チャールズ・リンドバーグも大西洋横断飛行から17年経過していたがライトニングに乗り、フランス作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(星の王子様)の乗機F-5Bは地中海で1944年墜落した。ロビン・オールズ大佐はその後朝鮮、ベトナムで戦果を上げたが、大戦中はライトニングで16機を撃墜している。
だがなんといってもP-38で語り継がれる最大の戦果は1943年4月18日のことで、米情報部が日本海軍の司令官山本五十六大将がブーゲンビルに展開する部隊を視察する情報をつかみ展開された作戦だ。P-38Gの16機編隊がガダルカナルを離陸し、往復1,000マイルを飛び山本大将が登場するG4Mベティー(一式陸攻)を待ち伏せし撃墜した。山本大将の遺体が見つかったが軍刀を片手につかんだままだった。
改造型にはF-4、F-5写真偵察機700機のほか、パスファインダー用ライトニングでは機首にガラスをつけ航法士が腹ばいになり爆撃隊を標的に誘導した。1945年に黒塗り複座のP-38M夜間戦闘機が機首にAN/APS-6レーダー(有効距離5マイル)を搭載し日本軍の夜襲爆撃機を迎撃した。
第二次大戦の終結で迅速に退役したもののライトニングはフランス、イタリアの各空軍でその後も供用され、中国国民党軍(うち一機がソ連製MiG-15の最初の撃墜機となった)やグアテマラではCIAが支援するクーデター軍の艦船一隻を沈めている。
欠点はあったがP-38は初期の「重」戦闘機としては稀な成功作となり、速力、航続距離、火力を誇ったのは現代の多任務戦闘機たるF-15やSu-27に通じるものがある。ケリー・ジョンソンの設計内容は時を越えた丈夫さと魅力があり、1992年にはグリーンランドに50年前に墜落したP-38が82メートルの氷の下から発掘され、機体は2007年に飛行可能状態に復元された。機体は当然ながらGlacier Girlの名前がついた。(Gracierは氷河の意味)■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring .
Photos: Wikepedia

P-38には大きな魅力がありますが、日本人にとっては軍神山本提督を抹殺した卑怯な米軍のイメージしかないのでしょうか。しかしF-35がなぜライトニングIIになのか。共通する要素が見当たりませんが、ロッキード・マーティンとしては成功作にしたいとの思いがあったのでしょうか。

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