The Coming War over Ukraine? ウクライナ巡りロシアと開戦が近づいているのか
The danger of escalation is real and must be treated as such.エスカレーションの危険は現実であり準備が必要だ
11月25日、ケルチ海峡でロシアがウクライナ海軍舟艇3隻を攻撃し拿捕した。ウクライナ海軍によればロシア側が先に攻撃を開始し、ウクライナ海軍に少なくとも六名の負傷者が発生したという。
同日にウクライナのポロシェンコ大統領と戦時内閣はウクライナに戒厳令を敷く決議を採択した。ウクライナ議会は本会議で11月26日に可決する見込みだ。
ロシアがケルチ海峡で強硬な態度に出たこと、ウクライナ側の対応が従来と異なることは両国の軍事衝突にエスカレートの危険が増えていることを示す。
ケルチ海峡は地理戦略上で大きな意味がある。東にロシア本土があり、西にはロシアが占拠するクリミア半島がある。同海峡はアゾフ海、黒海を結ぶ唯一の水路のため、アゾフ海沿岸に重要な意味を有する。ウクライナのマリウポリはロシア分離勢力が繰り返し占拠をねらう地点だ。
そのためウクライナ、ロシア両国が同海峡をめぐり2014年以降繰り返し衝突をしているのは不思議ではない。
ソ連崩壊でケルチ海峡は法律、政治両面で対立の対象となった。ウクライナが一方的に国境線を同海峡に敷いたのは1999年のことでアゾフ海の一部も国際水面と宣言した。
これに対しロシアは2003年に本土から両国がそれぞれ領土を主張するツツラ島につながる堤防を構築しはじめた。この事案をウクライナ指導層・専門家ともにロシアの侵略的態度の象徴としている。
ロシアはケルチ海峡の支配を更に追求し、クリミヤ半島まで手を伸ばしたため両国は2014年以前にも軍事衝突一歩手前になっていた。
2005年5月23日にロシア揚陸戦隊がクリミアのフェノドシヤ近くに上陸しようとし、ウクライナ国境警備隊に撃退される事案が発生している。この先例として1994年にウクライナ、ロシアが一触即発になったことがある。このときはロシアが黒海艦隊艦艇を拿捕している。各艦は高価な装備を搭載していた。
クリミア半島併合(2014年)に続きロシアはケルチ海峡をまたがる橋の建設を始めたためウクライナはアゾフ海がロシアの手に落ちることを恐れ、1982年国連海洋法条約違反としてロシアを訴えた。
ロシア、ウクライナ両国の軍事衝突がエスカレーションする危険は現実のものであり、危険度は上がってた。戦闘となった場合の結果は予測できない。
ロシアはこの可能性を気にかけず、ウクライナからシリアへ、更に米国が核装備近代化に向かうことを非難し、さらにロシアから西欧向け天然ガス供給に関心の的を移そうとしている。
更に主に国内向けにロシア国営メディアはウクライナ政府批判を続けている一方でケルチ橋完成をいわし、クリミアに経済奇跡が起こると祝賀ムードだ。
こうした態度が逆にウクライナの報復に火をつけている。ウクライナ側の不満のたねが数々あることは十分理解できる。クリミアは占拠されたままだし、西側諸国は報復措置がクリミア問題の解決でクリミア和平を獎めるのが狙いとすることで既成事実を実施的に認める格好だ。
時同じくしてロシア大統領ウラジミール・プーチンはクリミアに爆撃機、イスカンダルミサイルの配備を認めた。2014年を境にロシア国民のプーチン支持は経済実績と無関係になっており、大国としてのロシアの実績が中心になっている。この効果は減少しつつあるもののクリミア併合がプーチンの支持率を支えたのも事実だ。したがってウクライナ危機でロシアがおとなしく食い下がる事態は考えにくい。
同時にウクライナも軍備増強しながら地上戦の指揮命令系統を強化している。米国が対戦車ミサイルのジャヴェリンを供与したのは氷山の一角だ。このためウクライナが2014年のように引き下がる事態は考えにくい。首都キエフではウクライナ軍による新規事態の成立を期待する声が強い。
だがこの事態でもウクライナ国内政治は悪化の一方だ。2019年3月には大統領選挙を控える。最新の世論調査では現職のペトロ・ポロシェンコは対立候補ユーラ・ティモシェンコの後を追っている。ティモシェンコ候補はドンバス、クリミア、ロシアを選挙運動の中心にしポロシェンコを批判している。
ティモシェンコの選挙戦略、ミンスク和平合意の失速、ウクライナ経済の停滞、汚職の蔓延、さらにポロシェンコ自身が疑わしいビジネスに関与している疑いにより現職大統領の再選の可能性は狭まっている観がある。最大の希望は戦時大統領として強い指導者像を示すことだ。そこで戒厳令を敷くのはこの観測を強めるものだ。ウクライナのエリート層では激しい抗争が当たり前であり、ユーラ・ティモシェンコの実績に疑わしい点があることから楽観視できる状況ではない。
では西側諸国も内部事情を理解しながらもウクライナ、ロシア間の軍事対決のエスカレーション緩和には関心をほとんど寄せいていない。このまま続きそうだが、トランプのまわりの混乱、ブレグジット関連作業が中心の欧州となっているためだ。ちなみに英国はウクライナ大統領選挙投票日の2日前に正式に欧州から離脱することになる。
ウクライナを巡る戦闘勃発はすぐにも発生しないとしても危険性は現実のものだ。
Jonas J. Driedger is a German policy analyst at the European University Institute in Florence, Italy. He is also currently a visiting scholar at the Higher School of Economics in Moscow and partakes in the Alfa Fellowship Program. He specializes in foreign and security policy with a focus on Germany, the European Union and Russia. His analyses were published in The National Interest, Politico Europe, per Concordiam, EUObserver, and EurActiv. The views expressed in this article are solely his own.
Image: Reuters
今回の危機は、ウクライナ現大統領のシナリオで起こされたかもしれない。この場合、その目的は、戒厳令により次の大統領選挙を有利にするためである。また、米国を始めとする西側の支援も期待できる。
返信削除他方、ロシアは武力衝突の拡大を望まない。なぜなら国力と支持率の低下もあり、新たな国際的制裁も有り得る軍事的冒険は無謀だろう。一度大規模な軍事衝突を起こすと、短期で済まなくなる。
よって今回の衝突は、遠からず収束するだろう。