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★米国民が対北朝鮮戦の本質を正しく理解できない5つの理由

あまりにも近代戦の本質、影響を理解していないとの指摘が以下の記事の趣旨です。南北朝鮮の会談は本質的に問題解決にならないとの見方もわかりますね。はっきり言って会談が平和につながると考えているのは韓国の現政権だけではないでしょうか。冬季五輪が悲惨な政治ショーになりそうで怖いですね。米本土でさえ戦場になるので、日本はもちろん危険に直面しているのです。戦後最大の危機と言う日本首脳陣の認識はまちがっていません。

WHY AMERICANS AREN’T REALLY WORRIED ABOUT WAR WITH NORTH KOREA

米国国民が北朝鮮との開戦をさほど心配しないのはなぜか



JANUARY 16, 2018


朝鮮と開戦が迫りつつある観が強まる中、ミサイル攻撃警告の誤報がでた。南北朝鮮対話が今後も続く兆しがあるものの、北朝鮮との戦争の可能性は2018年に入りはるかに高くなっている。ジム・マティス国防長官は朝鮮半島に「嵐が近づいている」と述べ外交的解決にも期待するとしながら「楽観視はほとんど不可能」とまで言い切った。前統合参謀本部議長マイケル・マレン大将は米国が「北朝鮮との核戦争にこれまで以上に近づいている」と警告した。また最近の報道から米国は限定攻撃を検討し、北朝鮮の核施設のみ攻撃対象とし北が核攻撃含む対抗措置に踏み切らないことに賭けるとある。


 ただし米国民は北朝鮮との交戦に及び腰で9月の世論調査では平和的手段が失敗した場合の軍事行動に58パ―セントが賛成していた。さらに直後の調査では63パーセントが他国が参加する場合に限り軍事行動に賛成していた。10月調査では62パーセントが先制攻撃に反対し、64パーセントが軍事行動をせずに北朝鮮の軍事開発を封じ込めるべきと回答。さらに12月には北朝鮮を核開発中止に追い込む軍事行動に賛成は39パーセントで三か月前の49パーセントより減った。


 米国内では政策決定層のみならず一般国民も巻き込んで北朝鮮と戦争すべきかで議論があってしかるべきだが、国民は支援に熱が入らない状態のままだ。


 ではどうしてなのか。一部は間違いなく政治的だ。共和党が行政府と立法府を支配する中で議会が大統領の軍事行動を制約するべく公聴会を開くとは考えにくい。だが一般国民で議論になっていないことの意味は深い。一般国民に開戦に疑問の声はない。なぜなら米軍の実力や近代戦の本質を正しく理解していないからだ。こうした誤解から北朝鮮との開戦の可能性が高まっていると言える。戦争になった場合の代償、困難さ、予測不可能な問題を正しく国民が理解しているとは言えない。


誤解その1 米軍は世界最強なので北朝鮮戦は短期で決着するはず


 前半は正しい。だが後半は誤った結論にとびついている。米国民は米軍戦力は圧倒的に強力なので大規模戦闘でも短期間で勝利を収めることが可能と信じ込んでおり、他の追随を許さない技術優位性を使い死傷者を抑えながら迅速に能力の劣る敵勢力を壊滅させられると見る。ローザ・ブルックスRosa Brooksはこの大衆の願望は米軍の現実に目をつぶっていると述べる。例えば別の調査では米国民は米軍規模を実際より三倍大きいと思い込んでいるのがわかった。上級政策決定層でさえブルックスは「軍事力を誇張してみている」ため「軍にできないことはない」と考えているという。


 実態は深刻だ。米軍は世界各地に展開し即応態勢は低下している。これは軍上層部が事あるごとに訴えている内容だ。北朝鮮戦の規模は核兵器投入に至らなくても近年のあらゆる事変を上回るのは確実だ。北朝鮮軍を通常兵器だけで敗退させるには米軍70万名が必要となろう。イラク派遣軍の四倍以上の規模で、アフガニスタンの7倍になる。この数字には非核化用要員、難民や死傷者対応要員、戦後復興要員は含まない。米軍が北朝鮮を敗退させることに疑いを持つ者は皆無に近いが戦闘は一般の米国民が考えるより長期化し、高い代償を必要とし複雑な様相を示すだろう。


誤解その2 北朝鮮との通常戦で米軍の戦死者は皆無に近い


 米国民の大部分には戦争の危険を直接感じることがほとんどなく、北朝鮮軍が米国領土に突然上陸するとはだれも思っていない。だが韓国国内に暮らす米国人は駐留軍の家族含め100千人から500千人もおり、ほとんどはソウル周辺に暮らす。ソウル首都圏は24百万人を抱え北朝鮮火砲の射程内にある。ペンタゴン推定では通常戦初日だけで最大20千人が死亡する。さらに開戦90日までに数十万人が命を奪われる。


 米軍の死傷者は相当の規模になりそうだ。イラク、アフガニスタンでは2001年以来、合計7千名が死亡し52千名が負傷している。マティス国防長官は次回の朝鮮戦争は「1953年以来誰も見たことのない様相を示しそう」と述べており、前回は死亡36千名負傷90千名だった。ここまでの死傷率を伴う戦闘経験がある隊員は現役では皆無だ。心身共に消耗させ戦闘は長引きさらに悲惨な状態になりそうだ。


誤解3 米本土は戦争の影響を受けない


 死と破壊の蔓延は米国民に南北戦争以来実感がない。欧州や日本では第二次大戦の記憶はまだ残っており、今日ではシリア、アフガニスタン、イラクで日常風景だ。米国民は本土が戦争被害を受けることが本質的に理解できない。米国には北朝鮮の核弾道ミサイル脅威がロサンジェルスやワシントンに向けられる前に開戦すべきとの声がある。だがミサイルだけが21世紀の破壊効果手段ではないので、これのみに注意を払うと平壌の有する他の脅威に目をつぶることになる。


 金正恩は自らの政権基盤が攻撃されれば米国に報復を試みるはずだ(同時に韓国、日本も対象になろう)。その際に使える手段すべてを投入するはずだ。例えば米国本土攻撃は巧みに偽装した核爆発装置を送っても実行できる。あるいは工作員を使って伝染性が高い生物兵器を散布し公衆衛生の危機状況を生むかもしれない。このような攻撃は技術的に難易度が高いが、一つでも成功すればその結果の死と混乱は決定的になってしまう。


 北朝鮮には高度のサイバー攻撃能力もあり、米国を混乱に陥れることが可能だ。北朝鮮はワナクライ型ランサムウェア攻撃、ソニー攻撃、ネットワーク盗聴ハッキングの実績がある。米国の情報インフラと経済は巨大であり高度なサイバー攻撃があった場合すべてを効果的に防御するのは不可能だ。米本土は攻撃対象となり多大な影響を受ける。個人の金融データ、アクセス権限の悪用から産業施設や発電所の停止、さらにスマートフォン乗っ取り、住宅冷暖房の制御まで考えられる。米本土も北朝鮮との新しい戦争で最前線になるのだ。


誤解その4 戦争は自分にも家族にも無関係


 1973年以来の完全志願制が機能して米国民は戦闘に加わる義務を身近に感じなくなっている。今年も16年間も継戦中なのに国民は志願制で戦闘は間にあうと見ている。アフガニスタン、イラクの戦闘でも徴兵制や新規税制の話は出なかった。


 国防のため銃を取る事はもはや市民の義務とは受け止めれていない。人口の1パーセントが戦う一方で99パーセントは拍手するだけだ。米国で徴兵制復活を真剣に考えるものは皆無に近いし、国民も反対している。さらに議会には義務兵役制度そのものへの反対意見もある。だがこうした見方は根本的に誤っており、これでは戦場で家族の安否を心配する所帯はごくごくわずかにとどめておけばよいことになる。


 ただし北朝鮮と開戦になればこのやりかたになる。次期朝鮮戦争は予想以上に長引き、通常の戦闘より大規模な動員が必要となりかねない。だが完全志願制では戦闘は誰かがやってくれる仕事だ。そのため国の決定で軍事力を行使することになっても真剣に時間や労力を提供しようと考える米国人はごく少数になる。これは朝鮮が大規模戦闘になっても同様だ。


誤解その5 戦争は北朝鮮の敗北で幕を閉じる


 北朝鮮戦の戦域は朝鮮半島に限定されると見るのが大部分だ。また金正恩の排除、核兵器の排除に限定されると見ている。軍事計画部門もこの罠に落ちるリスクを抱えている。「血まみれ」先制攻撃戦を巡る最近の話では政策決定部門はいったん開戦すればすべてを制御しながら関係者全員が論理的かつ予測可能な行動すると見ていることがわかる。もちろん歴史を見れば事態はその逆だとわかる。


 この議論には他の超大国の動きが考慮に入っていない。中国が何らかの形で巻き込まれるのは確実で、北朝鮮との地理、密接な関係を考えれば当然だ。また米国が北朝鮮を核攻撃すれば中国も自らの同盟国への攻撃に対応するはずで、中国自身が放射能被害を受ける。米国の敵勢力もこの機会をとらえて別の場所で侵攻を試みるかもしれない。ロシアは東ヨーロッパで領土拡大を狙う。イランは核兵器開発を再開し周辺国を脅かすだろう。米国の圧力が緩くなればイスラム国が活力を取り戻し中東やヨーロッパで攻勢に出るかもしれない。米国は急に各地でそれぞれ別の敵との対決に直面するが朝鮮半島から数千マイル離れた場所だ。いずれも米国の権益に直接脅威となり、地域紛争が世界規模の戦闘にエスカレートする可能性が出る。


れら5つの見方はすべて誤っているが、北朝鮮相手の戦争に関する世論を形成しているのも事実だ。開戦が必要なのか真剣な国民的議論が欠如している。戦争は最後の手段である。こうした誤解の背景には一つの真実がある。つまり米国は開戦することの意味を忘れており、「本当の」戦争の意味を理解していない。戦争が外地のみならず本国にも起こりうることを理解していない。開戦した場合の恐るべき影響を把握しきれていない一般大衆と政府上層部により開戦の可能性はむしろ高まっている。米国にとって2018年が戦争の厳しい教訓を再度学ぶ年になるのでは悲劇だ。■
Lt. Gen. David W. Barno, USA (Ret.) is a Distinguished Practitioner in Residence, and Dr. Nora Bensahel is a Distinguished Scholar in Residence, at the School of International Service at American University. Both also serve as Nonresident Senior Fellows at the Atlantic Council. Their column appears in War on the Rocks monthly. Sign up for Barno and Bensahel’s Strategic Outpost newsletter to track their articles as well as their public events.

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