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トランプ政権の核戦力再整備方針は使える核兵器をめざすのか

The Pentagon Wants Its Nuclear Tomahawks Back

ペンタゴンが核トマホークの復帰を望む


前回2010年の核戦力整備検討で核弾頭付きトマホークの退役が決まった。同ミサイルは2012年から2013年にかけて配備中止となったが、トランプ大統領はこの戦力の再登載が必要としている。Credit: U.S. Navy



Jan 17, 2018James Drew | Aviation Week & Space Technology


トランプ政権は米核戦力の大幅復興に乗り出す。近年の核戦力は衰退していたが、新規弾頭用のプルトニウムコアの増産、海上発射型巡航ミサイルの再配備などの手をうつ。
2018年度核戦力検討作業の内容がリークされ、米軍トップによるこれまでの指摘を確認している。中国・ロシアの核戦力増強に米国が対応を求められ、北朝鮮の新たな脅威が加わる中で広範な核兵器の近代化は待ったなしで冷戦時の爆撃機、潜水艦、ミサイルや核運用可能戦術機などで対応が必要だ。
政策原案が承認されれば「遅延なく作業を加速化する」ことになり、前政権で着手済みの中核事業の実現をめざす。コロンビア級潜水艦、ノースロップ・グラマンB-21爆撃機、地上配備戦略抑止力弾道ミサイル、長距離スタンドオフ巡航ミサイル、核・非核両用ロッキード・マーティンF-35A共用打撃戦闘機、B61-12誘導方式自由落下爆弾だ。
一方でオバマ政権が手掛けた海軍の核巡航ミサイル削減が逆転し、B83-1は温存する。これは最後のメガトン級核爆弾だ。B61-11地中貫徹弾他通常型バンカー破壊爆弾も保持し必要に応じ地下施設攻撃に投入する。
ロシア戦術核兵器の「大きな優位性」に対抗しつつ、中国や北朝鮮の軍事行動に対応すべく、国防総省は「潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の一部」に低威力核攻撃能力を付与し、新型海上発射巡航ミサイルに資金投入する。これでオバマ政権がレイセオンのトマホーク対地攻撃ミサイル退役で生じた穴を埋める。
新方針ではコロンビア級潜水艦の追加建造に含みを残し、「最低でも12隻」と原案の十隻程度から増えた。トライデントD5潜水艦搭載弾道ミサイルは供用期間を延長しオハイオ級およびコロンビア級で使う予定だが2020年にペンタゴンは後継機種の検討を開始する。
米核戦力を今後も維持するべく、トランプ政権はエネルギー省の国家原子力安全保障局による新規プルトニウムピット(核弾頭の中核部分)の増産を求め、2030年に年間80基が「最低でも」必要としている。ちなみに現時点はゼロである。
米プルトニウムピットの大部分は1978年から1989年に製造されその後調整しつつ供用している。新規プルトニウムコアとしてはロスアラモス国立研究所が製造したW88弾頭(2007年-2012年)が最後だ。「現時点で米国には新規核弾頭の製造能力がない」と報告書はまとめている。
米核戦力の再整備の背後にある戦略は核・非核の大規模攻撃が発生した場合に米国に弱点がある、または抑止できないと「誤った理解」をさせないことだと検討結果にある。ここには米核戦力指揮命令系統ネットワークへの宇宙、サイバー両面での妨害も含む。




検討ではトランプ政権が「非先制使用」政策は採択しないことを確認している。この点は前政権で広く議論の対象となっていた。つまりワシントンは必要なら核先制攻撃を行う権利を保持するということだ。
政策転換はワシントンの国防タカ派に歓迎される一方で軍備管理を主張する一派からは批判されている。
「トランプ案では核兵器を非核装備に対して使用するシナリオの幅が拡大しています。サイバー脅威も対象になるのです」と軍縮協会専務理事ダリル・キンボールDaryl Kimballが述べている。「危険で不安定化をもたらします。たとえ少数でも核を投入すれば結果は破滅的です」
前政権は米核兵器を他国による核攻撃の抑止手段としてのみ見ていたが、キンボールはトランプ大統領は「もっと使い勝手の良い」核兵器を求めているとし、低威力弾頭をトライデントD5や海軍用巡航ミサイル用に提案するのはその例だし、両装備は「軍事上不要」の存在で危機や紛争の際に誤解を増やすだけとする。
「使い勝手の良い兵器があれば核兵器で抑止効果を強めるとの確証はありません。ロシアのように各種の手段が使える相手の場合は特にそうです」とキンボールはAviation Weekに述べている。「核兵器投入の最低ラインを引き下げて世界の核兵器開発レースを刺激するよりも米国には指導力が必要」という。





 民間国防コンサルタントで核問題専門家のピーター・フーシイPeter Huessyは戦略変更を歓迎し、ロシアの欧州内通常戦力、核戦術能力への対抗策になると期待。
 「ロシアは米・NATOと通常戦力では互角なので戦域核戦力で脅迫せんとしている」という。「米国の戦域核戦力は限定的で海上運用巡航ミサイル戦力を実現すれば現在の抑止力構成に望ましい追加要素になる」という。
 フーシイはレーガン以降の各政権を通じ米戦略核兵器は85%削減され、「史上他に例がない事態」だという。
 「ただし世界の安全保障環境は2010年以降悪化しています」とし、「ロシアが核兵器での対米攻撃を2009年から2016年に20回以上伝えています。ロシア、中国共に2010年以降に戦略戦術核兵器を大幅に増強し、特に中国は軍備管理の制約を何ら受けません。両国合わせると戦域核兵器は数先発となり米国の数百発と雲泥の差です」
 さらにオバマ政権下での見直しから8年が経過したが、インドとパキスタンが核兵器を「劇的に増加」させ、中国も数百発から数先発の核弾頭を増やしたという。ロシアは戦略戦術核部隊の近代化を実施し、北朝鮮は最大100発を製造し、イランが核兵器運用の能力を急速に実現していると指摘する。「これに対して米国は陸上ミサイル、潜水艦、爆撃機いずれもまったく増強しておらず今後も二十年間にわたり増加の兆しはない」という。
 トランプ政権の核近代化加速案では同時に低出力核弾頭を増やし海上発射巡航ミサイルを近代化するので数十億ドル追加支出になりそうだ。議会予算局は核の三本柱の維持近代化で今後30年間で1.2兆ドルになると試算しており、内訳は8000億ドルが運用作戦用で4000億ドルが近代化用だとする。
 トランプ構想では核兵力整備支出が最大になるのは2029年で国防予算の6.4%相当になる。これに対して1962年の米国国防予算では24.9%、レーガン時代の1984年は13.4%になっていた。ただし国防予算総額自体がかつては小さかった。
 ペンタゴンは決定案ではないため原案内容に関し一切の言及を拒んでいる。最終版は検討作業中であり大統領、国防長官の承認をもって二月初めに公表される。■

核戦力の運用はとてつもない巨額が必要ですね。米露中以外の各国はしょせん小規模しか運用しないのでもともとシステムも小ぶりなのでしょうが、それでも各国の財政上に相当の負担となります。北朝鮮が核兵器運用で通常軍を縮小し生産活動に振り向けようとするのであれば、それはそれで合理的な判断かもしれませんね。ノーベル平和賞を取ったICAN代表が来日していましたが、日本政府をいじめたい勢力と結託していました。ぜひ、ロシア、中国、北朝鮮にも足を延ばして議論ができるか試してもらいたいものです。

コメント

  1. いつも興味深く拝見させて頂いております。

    このエントリ以降、画像が表示されない?ようなのです。
    当方Macユーザですが、Safari、Firefox、ChromeのいずれでもNGでした。
    ご確認をいただければ幸いです。

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