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★ドイツ空軍トーネード後継機巡る意見対立を考える

ドイツがめざすトーネード後継機については前もお伝えしていますが、今回は任務から考えてみようというIISSの提案です。自由落下式の核爆弾運用など自殺行為にしか思えないのですが、NATOとしては自らの主張として米核戦力の一部であってもその存在そのものに意味があるのでしょうね。そして文末にあるように今や独仏でさえ戦闘機を共同開発する時代になっているのですね。

Dogfight over Berlin: Germany’s Tornado replacement aspirations

ベルリン空中戦:ドイツのトーネード後継機候補を巡る意見対立

Germany’s selection of a future combat aircraft for the air force may not be a binary choice.


ドイツの選択は二者択一にならないかも


German Tornado jet. Cedit: CARSTEN REHDER/AFP/Getty Images
By Douglas Barrie, Senior Fellow for Military Aerospace
Date: 21 December 2017


フトヴァッフェ上層部とドイツ国防省の間でトーネード後継機にヨーロッパ産米国産いずれの機材を導入すべきかで意見が分かれている。空軍側はF-35を、国防省はタイフーンをそれぞれ推す。ただし議論の出発点がまちがっている。
機種より任務で考えた方が選定の透明度が高まる。ルフトヴァッフェでトーネードは核・非核両用のペイロードを搭載する。核任務はNATOの重要な機能でトーネードはB61核爆弾を搭載する。ドイツがこの任務を続けるのであればトーネード後継機にも同機能が必要となる。
ルフトヴァッフェで運用中のユーロファイター・タイフーンは核兵器運用配線がない。この事は開発当初から認識されていたが実装されなかった。タイフーンに核爆弾投下能力を付与するのは可能だがコストがかかる。ヨーロッパ産業界は3億から5億ユーロと見ている。また米側が同機の構造・システムに細かくアクセスを求めてくる可能性もある。さらに関係者は型式証明が長くて7年かかると見る。仮に型式証明がスムーズに行ってもルフトヴァッフェ工程表ではトーネード後継機導入開始を2025年と見ており、2030年までに完全に交代させる想定なのだ。
ドイツ空軍のトーネードが核・非核両用になっていることがNATOの核抑止力の一部であり、その効力を有効にするためには十分な信頼性が必要だ。運用が自由落下式核爆弾なら戦闘航空機や高性能地対空ミサイルが候補になる。長距離スタンドオフ兵器は想定外で、低視認性戦闘機材なら目標地へ接近すしやすくなる。
ただし考え方を変えればトーネードの核・非核任務を少数のF-35とそれよりは多いタイフーンに分担させれば、空軍と国防省の対立は解消できる。前者に核運搬任務でB61-12爆弾を搭載し、通常攻撃にも低視認性を利用してあたらせる。一方でトーネードが行っている対地攻撃はタイフーンに任せる。
にもかかわらずルフトヴァッフェはトーネード後継機探し以外に、タイフーン後継機も長期的に模索することになる。次世代戦闘航空システム(FCAS)の検討作業で当初は新型戦闘航空機材の導入を2035年開始と見て対地攻撃能力を重視していたのはトーネード後継機を意識したためだ。だが考えたかが2017年に変化しF-35が支持を集めるようになった。ドイツの長期的戦闘航空機材の要求内容ではタイフーン後継機に空対空戦闘能力の実現が求められている。就役開始は2045年に先送りされている。
FCAS検討はフランスと共同作業で、就役開始時期はフランスの求めるラファール後継機の供用開始時期にあわせているが、F-35の導入コストと新型戦闘機の調達のコストで格差が拡大する傾向にある。■



This analysis originally featured on the Military Balance+, the new IISS online database that enables users in government, the armed forces and the private sector, as well as academia and the media, to make faster and better-informed decisions. The Military Balance+ allows users to customise, view, compare and download data instantly, anywhere, anytime

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