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日曜特集 日本が橘花をもっと早く実戦化していたら太平洋戦はどうなっていたか

良くも悪くも当時の日本の技術を体現しているのが橘花ですが、そもそもジェットエンジンが注目されたのが粗悪な燃料でも運用可能なこと、精密な内燃機よりも構造が簡単なためであったはずで、ひっ迫する状況の日本では論理的に正しい選択だったのですね。また、戦時末期に陸軍、海軍の航空兵力を統合する構想があと一歩で実現しそうだったのですが、この「空軍」が橘花から派生したもっと高性能機を運用していたらと考えるのは楽しいですね。

Could This Japanese Jet Fighter Have Won the Pacific War?

このジェット戦闘機で日本は太平洋戦争に勝利した可能性があったのか
January 12, 2018


二次大戦でジェット戦闘機開発に成功したのはドイツだけというのは誤りだ。ドイツが最先端を行っていたのは事実だが、主要国はすべて戦時中に開発を進めていた。日本も例外ではない。
よく知られており、実戦投入された日本機は桜花だけだが、これはロケット推進で有人操縦のカミカゼ兵器だった。だがもう一つ日本には終戦までに飛行にこぎつけたジェット機があり、その時点で終戦しなければ戦闘投入されていたはずなのが中島の橘花である。
日本の科学陣はジェットエンジンを1930年代から研究していたが、政府の支援はほとんどないままで1943年にはターボジェットを完成していた。日本はドイツでMe-262ジェット戦闘機が1942年に開発されたことは承知していたが、1944年夏に米B-29爆撃隊が日本本土を空襲するに至り、日本海軍は皇国兵器第二号橘花の実現を求めた。
橘花がMe-262に似ているのは偶然ではない。また単なる模倣でもあない。日本のジェット機開発は多くをドイツの研究成果に依存していたが支援はほとんど得ていない。1944年7月にルフトヴァッフェ司令ヘルマン・ゲーリングの命令で日本にMe-262の青写真、ユンカース・ユモ004、BMW003の両ターボジェットエンジンの青写真、さらにMe-262実機も提供することになった。
だがドイツから日本へ運送中の潜水艦数隻が米軍に沈められてしまうが、BMW003エンジンの断面図のみ日本に届く。(当時はエンジンの信頼性が低くエンジン情報の方が重要視された) これだけで日本技術陣はネ-20ターボジェットエンジンを製造し、橘花が当初搭載を酔え地下純国産のネ-12より高性能と判明した。
橘花に驚くべき点が二つある。まず同機はMe-262小型版に見えることだ。類似点は内部にもみられる。橘花はMe-262の後退角主翼は採用していない。もう一つは同機がもともとカミカゼ攻撃用に設計されたことだ。「神風(しんぷう)攻撃に合わせ初期設計には着陸装置はなく、RATO(ロケット補助離陸)でカタパルト発進を想定していた」と航空史家エドウイン・ダイヤ―が記している。「計算上の飛行距離は204キロしかなかったのはネ-12エンジンの燃料消費がすざましかったためだ。海面上最高速度は639km/hだった。爆弾一発を搭載するだけの武装で、主翼は折り畳み式で洞穴などに隠し攻撃を避ける構想だった」
1945年3月に橘花の任務は戦術爆撃機さらに迎撃機に変更され、30mm機関砲を搭載しネ-20エンジンに変更された。(ただし金属材料の不足でネ-20エンジンの性能が制約されていた) だが難関は生産だった。本土空襲が続く中で機体、エンジンの製造工場も被害を受けていた。それでも同年8月7日に高岡中佐が初飛行に成功した。8月11日の第二回飛行で着陸に失敗し、試作機は修復不可能になってしまう。
計画では1945年末時点で橘花500機を製造するはずだったが、8月15日の日本降伏で実現しなかった。結局完成した機体は一機だけだった。
橘花はMe-262と比較するとどうなるか。Me-2262A1Aの最高速度は540マイルで米軍P-51Dマスタング(最高速度437マイル)を引き離した。橘花の迎撃機型は最高速度443マイルを想定していたので、ほぼマスタングと同等で、しかも第二次大戦時のジェット機は機体操縦性とエンジン信頼性が劣っていた。
しかしそもそもこの日本ジェット機で太平洋戦争の行方が変わっていただろうか。その答えではドイツを見るのが一番わかりやすい。Me-262は1,400機が製造され、一部が1944年11月から1945年5月にかけて戦闘投入された。連合軍には厄介な存在であったが、結局第三帝国を救うことはできなかった。連合軍機が多すぎたこと、英米空軍部隊がMe-262基地を常時哨戒し脆弱な離着陸時をねらったこと、それにドイツ本土が連合軍戦車部隊に席巻されたことが理由だ。
ドイツより日本の燃料事情、原材料供給は厳しく、ドイツ以上の活躍はできなかっただろう。橘花は米軍機に圧倒されていたはずだ。もし実戦化が早期に実現していれば、1944年のフィリピン戦線などで結果が違っていたかもしれない。ただし橘花の航続距離が短いため太平洋戦線で必要とされた長距離戦には不向きだっただろう。橘花は本土防空専用とし昼間のB-29空襲を迎撃していただろうが、米軍が夜間空襲に切り替えたためレーダーを搭載しない橘花は対応できなかっただろう。
Me-262同様に橘花もあまりにも機数が少なく登場が遅かった。ご関心の向きはダイヤ―の著書をご覧ください。

Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.
Image: Wikimedia Commons

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