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グアム島付近に海中センサーを設置した中国の狙いはもっと大きい戦略の一環であることを見逃してはならない

China Reveals It Has Two Underwater Listening Devices Within Range of Guam 

グアム近辺に水中聴音機二基を設置したと中国が明かす

The sensors are officially for scientific purposes, but they could just as easily monitor submarine movements and gather other intelligence. 

公式説明はが学術目的だが、潜水艦の動向他情報収集に転用できる



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 BY JOSEPH TREVITHICKJANUARY 23, 2018
国政府が水中センサー二基を米領グアム島と南シナ海の中間に設置したと発表。公式には学術用としながら海中聴音装置は同時に米国他の潜水艦の動向を監視するのにも使われそうで同時に通信傍受の可能性も出る。
 中国科学院から聴音センサー二基を設置したとの発表が2018年1月に出たが、実は2016年以来稼働中とサウスチャイナモーニングポストが伝えている。うち一基はマリアナ海溝の南端チャレンジャー海淵に設置され、もう一基はマイクロネシア連邦ヤップ島近くに設置された。ともに有効探知距離は620マイルとグアムや米軍のアプラハーバー基地をカバーする。
 サウスチャイナモーニングポスト記事では中国科学院の深海調査通信部門トップが「深度が大きければそれだけ静寂になり捉えたい信号に専念できる」と述べている。
 公式にはそうした信号とは海底地震、台風他自然現象や海中生物のものとされている。海中地震は津波を発生するためこうしたセンサー設置は早期警戒体制の強化という観点から大きな意味がある。
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The PRC gov. has placed powerful acoustic sensors in the Challenger Deep of the Mariana Trench, as well as near the island of Yap, ostensibly for scientific research, but more likely to spy on US sub.s & to intercept US underwater military signals to Guam.https://sc.mp/2DwTv4z
 同時に同じセンサーでは潜水艦の航行もとらえてしまう。グアム近辺と言う戦略的な位置関係から米海軍の潜水艦、水上艦の動向をとらえるのに最適で軍事面でも早期警戒や情報収集に有効に活用できる。
 グアム起点の潜水艦の動向を監視できれば大きな意味が生まれる。潜水艦は探知されないことで抑止力が生まれ、突然の攻撃を実施したり情報収集に効果を発揮する。
USN
ロサンジェルス級攻撃型潜水艦USSキーウェストがグアムに入港している。同艦は4か月の哨戒を追えたばかりだ。
 さらに中国の水中聴音装置は海中通信回線のやり取りを盗聴できるのではないか。サウスチャイナモーニングポスト記事ではグアム島周辺には水中マイクロフォンのネットワークがあるといわれ、潜水艦は潜航したまま米海軍司令部と連絡できる。
 盗聴も可能だろう。2008年に米海軍がレイセオンを選定しDeep Sirenと呼ぶシステム開発を始めた。これは小型ブイで衛星信号を音波に代えて潜航中の潜水艦で長距離通信ネットワークを利用可能としようとするものだ。
 こうした伝達方法で機微情報は当然暗号化されるはずだが、それでも中国側に大量の情報を提供することになる。大量のやり取りから標準行動のパターンが解明されるかもしれない。また有事の際に通信が脆弱にさらされるかもしれない。
 この発想は前からある。冷戦中に米国は広範な海中監視網を構築しソ連潜水艦の動向を監視した。これは音響監視システム(SOSUS)と呼ばれる。これ以外に水上艦のえい航式ソナーアレイや情報員の情報も併せて統合海中監視システム(IUSS)と呼ばれ、今日でも稼働中だ。
 中国が自前で同様の能力を整備したことが重要で、南シナ海の広大な海域で外国軍の動きにたがをはめようとしていることに注目すべきだ。国際仲裁裁判所で中国政府の主張が毎回斥けられても中国は事実上の占拠を続けており、人工島の上に軍事施設数か所を設置している。
DOD
南シナ海での中国他諸国の拠点を示す地図
 米国は同地域で航行の自由作戦FONOPSとして艦船航空機を送りこんでおり、国際水域での作戦行動は自由だと主張する。2018年1月にもアーレイ・バーク級駆逐艦USSホッパーがスカボロ礁近辺を通航し中国から自国領土を防衛するためいかなる手段でも取るとの警告が出たばかりだ。
 中国は南シナ海で統合防空沿岸防衛体制を整備中で接近阻止・領域拒否をめざすが、潜水艦の航行だけは手が打てなかった。
 一方で中国海軍(PLAN)の潜水艦部隊が近代化中とはいえ、水上艦部隊の進展と比べると精彩を欠いている。また運用も沿海部に比重を置き、長距離展開はまだ少ないのが現状だ
QIAO TIANFU/COLOR CHINA PHOTO/AP
中国の091型漢級原子力攻撃型潜水艦
 そこで中国は別の方法で外国潜水艦が同地域を自由に航行するのを制する手に出た。2017年2月に中国は海上通行安全規則の改正を発表し潜水艦は浮上航行するものとし国旗を表示して南シナ海での通航を求めるとした。中国は南シナ海を自国領海と見ており、同時に関係当局に航行の届け出を求めている。国際海洋法から見てこの措置の根拠には怪しいものがあり、中国官憲も新規則の実施の乗り出す兆候はない。
 新規設置の聴音装置で力のバランスが容易に変わってもおかしくない。実際に中国はその方向を目指しており、2016年に国有企業中国国家造船が「水中の万里の長城プロジェクト」を発表し南シナ海でのPLANを支援するとしていた。
 2017年5月には別の中国調査機関から南シナ海・東シナ海に水中センサー網を構築するとの発表が出た。後者では日本との領土問題がある。ここでも表向きは学術データ収集だが、当局も「国家防衛」能力も組み込んであると認めている。
CCTV
中国国営テレビが2017年5月に放映した際のスクリーンキャプチャーで南シナ海・東シナ海に設置する水中センサー試作機が写っている。


 全部実現すると相当の規模となり前出の調査網だけでも20億元(3億ドル)と相当な規模になり中国政府は意図的に低めの評価をしているようだ。
「水中の万里の長城」の別の側面は安上がりになりそうもない。だが水中監視網で状況を一変させ戦略的優位性を太平洋で確立できるのであれば正当化できる範囲だ。

回のグアム近くでのセンサー設置の報道は改めて中国が西太平洋で兵力投射を強化する姿勢を崩しておらず、外国の軍に対抗する力の整備に向かうことを強く裏付ける。特に米国を意識しており、自国領土だと解釈する地域周辺で米国がわがもの顔で航行することに我慢がならないのだろう。■

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