The Real North Korea Threat: A Forced Unification?
北朝鮮にとって南北統一が脅威になる
January 16, 2018
2018年に北朝鮮と開戦の可能性が高まるばかりだが、そもそも北朝鮮の最終目的は何なのかで議論がある。筆者は北朝鮮が韓国を併合することを目指しているとは思えないと主張してきた。北朝鮮がこのためならどんな代償でも払うとは考えにくいとも述べてきた。だが極めてタカ派色の強い見方でじゃ北朝鮮がねらうのは最終的に韓国を吸収する南北統一であり、このためあえて冒険を侵しているのだとの説明だ。
右派の解釈には北朝鮮の主張を真剣に取り入れている節がある。事実、北朝鮮上層部は統一への関心を常時口にしている。金正恩は新年のあいさつでこの話題を十数回にわたり取り上げていた。だからと言ってこれが北朝鮮の目標との「確証」と筆者は受け取っていない。
まず韓国エリート層もこの話題に言及している。南北朝鮮の双方が統一を目標にするのは不思議ではない。それでも韓国が無謀にも統一に向けて動き出し安定を危険にさらすとはだれも口にしていない。では嘘つきが当たり前の国の主張をそこまで真剣に取る理由は何か。逆に北朝鮮が統一を口にするのを真に受けるのなら、北の核兵器の目的が抑止力と防衛との主張を信じて不都合があるのだろうか。
二番目に、おしゃべりは安っぽい。南北朝鮮はゼロサム競争で互いの正当性を競い合っている。共に民族を標ぼうし、統一を目指すと主張。これがそれぞれの憲法に書き込まれており、エリート層は統一を公に話す。その結果、統一の話題は頻出する。だがその結果発生する費用負担を覚悟しているのかが双方に試される。社会科学でいうところの「costly signaling」であり、自らの政権基盤を危険にさらしてまで目標を追求するのかという疑問が生じる。米国が放棄した後の韓国を蹂躙するために北朝鮮が攻撃兵器を整備するだろうか。もしそうなら核兵器は別の意図の存在となる、なぜなら核兵器の主たる存在意義は防御にあるからだ。
三番目に北朝鮮は平気でうそをつく。北朝鮮では誇張はあたりまえのことだ。北朝鮮の発言内容に信頼を置いていいのか。発言ではなく実行から意味をくみ取るべき国が北朝鮮だ。北朝鮮が統一の申し出を真剣に考えている証左は皆無に近い。
北朝鮮は費用とリスクを負担してまで統一をめざしているのか。話題が出ているからと言ってその下支えにならない。「我が闘争」顔負けの声明文で統一構想が語られている。たしかに北朝鮮は南の支配を目指している。金一族は統一で社会主義の楽園の実現を指導するとの夢を持つ。だが願望があるからといって確たる証拠にあたらない。
すべてが正しくないとしても力による統一がいかに困難かを次の想定で考えてもらいたい。
(A) 米韓同盟の崩壊
北朝鮮が韓国を攻撃する事態は韓国が米国と同盟関係にある限り実現しない。同盟はほぼ70年に及び、過去の困難な事態を乗り越えてきた。北は同盟の終了を希望しているが、実際に廃棄した場合の負担準備はあるのだろうか。北が米国を追い出したいとするのは自国がその結果を受け入れるとの態度のあらわれのはずだ。1970年代以降の北朝鮮指導者で韓国駐留米軍への武力衝突を公言するものない。
(B) 韓国が戦場で敗北する
米国が朝鮮半島から放逐されても北主導の統一の前に韓国軍が立ちはだかる。ただし韓国軍の戦闘能力がはるかに優勢と信じられており、訓練装備も優れているし、技術も優れ、指揮命令も優秀など優れている。韓国の国防予算は増加中で、間もなく北朝鮮の経済規模に相当するようになる。韓国の人口は北朝鮮の二倍以上ありGDPでは40倍の格差がある。まともに戦闘にならないはずだ。米国抜きの戦闘は厳しくなるといっても、韓国で10年以上会議に出席してきたが北朝鮮が通常戦で勝利すると確信する声は一度も聞いたことがない。核兵器を投入すれば戦場の様相は一変するが勝利条件も無効になる。放射能汚染され混乱した社会を征服して意味があるのか。韓国を無傷のまま手に入れることがポイントとなり、そうでないと負担が増えるばかりだ。
(C) 韓国占領統治は北にとって壊滅的効果を生む
北が勝利したとしよう。戦争で事実上同国は破たんし、韓国占領はあたかも南北戦争後の南部復興の様相を呈し各所の反乱勢力により占領軍はドイツの平和的統一どころではなくなる。核兵器で勝利を収めたのなら占領はもっと悲惨になり、北朝鮮軍が放射能汚染された占領地でまともに機能できるだろうか。もっと悪い状況になるかもしれない。
北朝鮮は直ちに韓国を世界経済から遮断し、貧困化を進める。北は南から富を収奪するので南はグローバル経済との接点を求めるが北がこれを許さない。
韓国市民は自由で開かれた民主体制に慣れきっており、当然反乱を起こす。韓国の人口規模を考えれば占領軍は簡単に人数で不利となる。その後は各所でゲリラ戦となる。
敵意を持った地の占領の代償は驚くべき高額になり、規模が小さい北朝鮮経済に戦争の影響が重くのしかかる。韓国からの収奪で一時的に息をつくだろうが、維持できず、中期的に韓国を取りこむことは一層困難になる。
北朝鮮軍は米軍が「第四段階」と呼ぶ対ゲリラ戦、占領業務、移行業務の訓練は受けていない。米軍がイラクでこれに失敗したというのなら、訓練もろくになく、腐敗して予算も不足した全体主義国の軍隊にできるはずがない。
北朝鮮にも予期できない負の結果は同国体制が大幅に不安定になることだ。北朝鮮は独特の規律で極度にまで定型化された社会である。柔軟性に乏しく、外部を取り込む想定がない社会だ。そこに不満だらけの53百万人を統合するのは不可能に近く、平壌の腐敗し機能しない行政が圧倒されてしまう。北朝鮮軍兵士は南での勤務を終えて憤慨するまでの豊かさの話を土産に戻るだろう。南に進駐する北司令官は豊かな南で別収入をあげようとするだろう。新たに征服した地で住民の思想転換は巨大な規模となり抵抗にもあうはずだ。南を統治するのは規模も内容も複雑となり北の国家崩壊につながりかねない。
先に南北戦争後の復興時代を同様の例に挙げたが、イスラエルによるウェストバンク占領でも同様だ。北指導部がそんなリスクを冒すとは思えない。■
Robert Kelly is an associate professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. More of his writing can be found at his website. He tweets at @Robert_E_Kelly.
Image: Uniformed women march past the stand with North Korean leader Kim Jong Un and other high ranking officials during a military parade marking the 105th birth anniversary of the country's founding father Kim Il Sung, in Pyongyang April 15, 2017. REUTERS/Damir Sagolj
コメント 本当にそうでしょうか。国力とは別に北朝鮮には思想面で韓国より厳しく訓練された様子がうかがえます。つまり意思の力が感じられます。そんな国が割りが悪いからと南を併合しないという保証はないでしょう。
現在進行中の南北協議でも北が主導権を握りがちに見えるのは当方だけでしょうか。北朝鮮からすれば米軍さえ放逐すれば南は自然に北と一緒になると見ているのではないでしょうか。
肝心の南の政府を率いる大統領がオリンピックだの南北合同だの面子にこだわる対応ばかりで、平気に北に飲み込まれてもいいという姿勢で日米がせっかくおぜん立てした制裁など強い対応を自ら崩すような姿勢ですので南がいつか消えてしまう日がこないともかぎりません。
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