スキップしてメイン コンテンツに移動

海中ケーブルの脆弱性が注目されています


新しい冷戦との表現が遂に表に出てきました。前回と違い今回は複雑な状況になりそうです。これだけインターネットが普及しているとそれを当たり前に使っている分、攻撃に脆弱になりますね。GPS衛星も同様です。今日の社会はそれだけ以前よりも脆弱ということでしょうか。


Undersea cables the Achilles’ heel in lead-up to new cold war

新冷戦で海中ケーブルはアキレス腱だ
Hostile acts against submerged Internet cables would put critical communications, trillions of dollars in transactions and the world economy at risk 海中インターネットケーブルが敵対行為を受けると数兆ドル規模で世界経済が影響を受けかねない

An illustration of a submarine in close quarters with an undersea communications cable. Photo: Policy Exchange
An illustration of a submarine in close quarters with an undersea communications cable. Photo: Policy Exchange
DOUG TSURUOKA EDITOR AT LARGE JANUARY 6, 2018 1:33 PM (UTC+8)

目されていないがサイバー戦で非常に大きな影響が出そうな戦術がある。地球各地にはりめぐらされたインターネット上のやりとりの95%が海中の光ケーブル200本を行き来しており、米国、ロシア、中国やイランが深海に設置された情報パイプを情報源としてあるいは戦時の攻撃目標として注目している。
この戦術に潜水艦、無人潜水機、ロボット、特殊船舶、ダイバーが投入される。新たな戦場は法律上はグレーゾーンで海洋法では海中ケーブルは対象だが敵対行為は想定していない。
このミッションの実行が進んでいる証拠があり、米国含む大国が真剣になっている。テロリストやその他非国家勢力がケーブルを襲撃する可能性もある。
探知困難な行為による損害は巨額に上りかねない。軍のみならず外交通信が使用不能となり経済が打撃を受ける。インターネットに政治外交や軍事効果が依存する傾向は強まるばかりで、海底ケーブルが戦術目標として攻撃されるあるいは防衛するのは現実の話になっている。
「海底ケーブルインフラが敵対勢力から全面攻撃されればネット接続が普通となり壊滅的効果となるが、部分的な妨害工作でも経済損失は相当な規模になる」と元NATO司令官の米海軍退役大将ジェイムズ・スタヴリディスAdmiral James StavridisがレポートUndersea Cables: Indispensable, Insecure”の前文に寄稿している。
Submarine cable map from Telegeography.com.
Submarine cable map from Telegeography.com.
海底ケーブルの重要性と脆弱性についてどれだけ強調しても足りないだろう。英保守党国会議員リシ・スナック Rishi Sunakは世界の海底インターネットケーブルを行き来する情報は一日に10兆ドル相当と昨年12月に報告書でまとめている。
「ネットワークが消えたら、稼働中の衛星全部を使っても米国発の通信量の7%しか使えなくなる」(スナック議員)

狙われやすいアジアのチョークポイント

複数ケーブルが海底地形等のため集まる地点が特に脆弱だ。その一つがフィリピン近くのルソン海峡で香港、台湾、韓国、日本を結ぶケーブルすべてが通る。2006年12月26日に海底地すべりでケーブル6本が切断され、インターネットが一時的にせよ使用不能となった。
米国で大西洋横断インターネットはニューヨークから半径50キロ地点で多数が陸上に出てくる。
新たな戦場の全体像は巨大だ。ケーブルは水面からわずか数メートル地点からエベレスト山と同等の深さにも敷設されている。
ケーブル敷設場所は地図に出ており、オンラインでもわかるので特殊潜航艇、艦船、ダイバーや簡単な道具の前に無防備だ。
米情報機関関係者はロシアがケーブル戦で一番可能性の高い実行犯になるという。ロシア潜水艦が「活発な活動」を米本土向け大西洋ケーブル付近で展開していると米国は公表している。

米国のスパイ潜水艦

ただし米国も同様の活動をしている証拠がある。米メディアがシーウルフ級原子力潜水艦USSジミー・カーターがワシントン州に帰港した際に海賊旗を掲げていたと報道したのが昨年9月のことだった。
米潜水艦がガイコツと骨の旗を掲げるのはミッション成功の印だ。ではジミー・カーターは何をしたのか。米海軍はなにも発表しないが、同艦には遠隔操作水中機とSEALチームが乗り、海底ケーブルに盗聴器を設置または回収したのではないかという専門家がある。
海軍特殊部隊や潜水艦の解説を専門とするウェブサイト、Covert Shoresは昨年8月にロシア海軍が高性能スパイ船ヤンターYantarを海底インターネットケーブルの盗聴ほか情報収集活動用に運航していると伝えている。

ヤンターは「潜航艇二隻の母艦になる」とCovert Shoresで解説している。「そのミッションはケーブル切断、ケーブル盗聴、他国の盗聴器の除去他情報活動だろう。そのほかに水没機体やミサイルテストから重要装置を回収することもあるはずだ」
同艦が米沿岸、キューバ、トルコ、北キプロス他の重要ケーブル接続点を遊弋するのが目撃されている。
カルガリー大の軍事戦略研究センターの主任研究員ロブ・ヒューバートRob Huebertはロシアが大深度潜航が可能なミニ潜水艦を2003年に進水させたと指摘する。ロシャリークLosharikとかプロジェクト201あるいはAS-12と呼ばれる同艦はケーブル工作実施用だといわれるが確認は取れない。
「ロシア軍がこれを運用するのであれば中国米国も同じ能力を有している可能性は高い」とヒューバートはAsia Timesに述べている。

中国は関与しているのか

中国やイランのケーブル工作への関与の証拠は一定していない。米側は南シナ海での中国の活動、イランのペルシア湾活動を指摘し、すぐに見つかる軍艦ではなく民間船舶を「グレイ船」として詳細不明の活動に投入されているという。
Submarine cables in the South China Sea. Photo: Policy Exchange
南シナ海の海中ケーブル Photo: Policy Exchange

スタヴリディスは上述の前文で水中ケーブルは民間船舶に偽装した特殊船による非軍事技術で簡単な標的になると指摘。
こうした米側の主張へはプロパガンダだと反論も出そうだが、米側がこの能力を整備しているとすれば北京、テヘランともに対抗で同様の活動を展開してもおかしくない。
スタヴリディスは米側の選択肢として緊急時用の予備とする「ダークケーブル」を作ることを提案する。もう一つはロシア他を巻き込み海底ケーブル網を法律で防護する仕組みを強化することだという。

実際に発生した事例

海底ケーブルで謎の中断が数回発生している。2008年は集中して発生した。インド中東向けの高速インターネットケーブル5本が攻撃され、インターネットが大幅に遅くなった。当時の推測は船舶の錨でエジプト・アレクサンドリア付近で損傷を受けたというものだったが、その当時に付近に船舶の姿はなかったと関係者が述べている。
エジプト政府は当時アレクサンドリア付近にいたスキューバダイバー三名を逮捕したが三名は誤ってケーブルを切断したと陳述したが、エジプト政府は動機について説明をしていない。

この事件から陰謀説が生まれ、中には米国家安全保障局がインターネット通信を盗聴していた、あるいは現地各国の政府が意図的に接続速度を遅らせスマートフォンを利用するでも参加者に不便を生んだとするものがある。■

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...