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ウクライナ戦におけるインテリジェンス 第二部 ウクライナ、ロシアそれぞれの実態

  

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クライナ戦は、ウクライナ政府とその同盟国が作戦情報の収集と分析に成功したこと、収集、分析、意思決定における集団的弱点がロシアにあるという二律背反の窓を提供している。高度な情報共有、クラウドソーシングによるオープンソースインテリジェンスの活用、シャープかつ柔軟な戦略立案は、これまでのところウクライナ側に有利な要素となっている。これに対し、戦場におけるロシアの弱点はあきらかで、ウクライナの能力と士気を評価する際の先入観という自らの制約にある。

 

ウクライナの政府と軍は、ロシアの情報面の失態の利用に長けており、自国の情報面の専門性を活用していることが証明されている。これはドンバスでの8年間の経験と、最近のNATO標準での訓練によるもので、高度に統合され技術的に進んだ情報収集・監視・偵察(ISR)がドクトリンで中心的な役割を担っている。また、戦略情報とあわせ、オープンソース情報の規模と能力が爆発的に向上したため、分散型、グローバル化、さらには「民主化」された事業へと変貌を遂げている。ロシアは、グローバルなオープンソース情報革命からますます切り離され、21世紀型の情報環境の戦争への備えがまったくないまま、ウクライナ攻撃を開始した。

最初から失敗していた見積もり、 インテリジェンスと作戦計画

インテリジェンスは作戦レベルの軍事行動を全面的に支援するが、「作戦計画に対するインテリジェンス支援」と「計画された作戦の実行に対するインテリジェンス支援」の2つの段階がある。その違いは漠然としているが、計画段階では分析が強くなる傾向があり、作戦への支援では情報収集が中心となる。情報分析の基礎は計画段階で行われる。NATO軍では「環境の情報準備」と呼び、これがないと、作戦が失敗する可能性が高くなるだけでなく、情報収集が誤った初期想定に基づくため、失敗からの回復が困難となる。ロシアのウクライナ戦は、拙い初期情報準備により、こうした誤りや誤った想定からの回復に非常に時間がかかっているようだ。

ロシア参謀本部は NATO の参謀本部とは異なるが、軍事的な意思決定プロセスはすべて、 任務の理解、情報の準備、行動方針の策定、評価、方針の選択、最終的な命令の策定と いうステップは類似している。ここではロシア専門家であるレスター・グラウLester Grauとチャールズ・バートルズCharles Bartlesが定義するロシアの軍事的意思決定プロセスの第2段階を見ることにする。情報整備はそれ自体、複数のステップによるプロセスだ。大雑把に言えば、参謀は地形、敵の能力とドクトリン、そして敵の意図を評価し、統合して可能性の高い敵の行動方針を決定する。これらは、指揮官の意図に従い、参謀が自らの計画を策定する際の基礎となる。情報収集は作戦計画策定の基本であり、有能な将校が厳格に行うべきだ。また、敵に関する確かな情報に基づき、客観的な分析がなされなければならない。敵の意図や兵士の士気を評価するのは容易ではないが、正直に行うことができるし、そうすべきだ。

しかし、ロシア軍幕僚は、この手順を慎重に行うより、迅速な意思決定サイクルを好む。指揮官の指示は正しいとされ、参謀は指示をどう実行するかの戦術を決定するだけだ。NATO軍が行うような情報準備に基づく計画はない。その代わり、より限定的な(しかしはるかに数学的な)戦力と手段の相関分析を行う。この分析から参謀は限られた選択肢のうちで、どの戦術オプションで命令を実行するかを選ぶ。

プーチン大統領は、この形の分析に揺さぶりをかけているようだ。ロシアの諜報機関は最近、ウクライナの政治的感情や態度を分析し、結果をシンクタンクのRoyal United Services Instituteが報告書にまとめている。プーチンはこれを、ロシアの介入によって変わる「時間のスナップショット」として見るのではなく、自分の既成概念を裏付けるものとして読んだようである。実際、モスクワは、ウクライナ東部のロシア語圏でキーウに反発すれば、すぐ勝利できると考え開戦した。プーチンの側近ウラジスラフ・スルコフVladislav Surkovは、2020年のインタビューで、「ウクライナなど存在しない。あるのはウクライナらしさだ。つまり、心の障害だ」と述べていた。プーチンは侵攻直前の演説で、「ウクライナは自分自身の本物の国家性を持ったことがない」と繰り返した。この路線への異論は、ロシアのオープンソース・レポートには見受けられない。

プーチンは、ウクライナはロシア、あるいはロシアであるべきだと考え、この考え方が、ロシア軍の重要な計画検討に影響を与えたのは確かだ。ロシア軍は、ウクライナ政府を構成する「麻薬中毒者とネオナチの一団」を追い出す作戦であり、ウクライナ国民から歓迎すると聞かされていたようだ。パレードを想定して、制服まで用意していた。

ロシアの諜報機関は、プーチンがウクライナを吸収されるべき国家として見ていたのに影響されたと推察される。ベリングキャットのクリスト・グロゼフ Christo Grozevによれば、プーチンは4月初旬、連邦保安庁第5局長のセルゲイ・ベセダ元帥Gen. Sergei Besedaを含む150人以上のロシア情報機関関係者を「ウクライナに関する信頼できない、過度に楽観的な情報を報告した」ためクビにした。これは、不正確または明らかに欺瞞的な情報を提供する軍事・政治文化があるのを示唆している。この動きが事実ならば、プーチンは今回の戦争について誤ったイメージを抱いていたという仮説が裏付けられる。

この証拠は、侵攻前のロシア国家安全保障会議でテレビ放映された。プーチンは、ロシア対外諜報局長のセルゲイ・ナリシキン Sergey Naryshkinを公然と辱め、ロシアが分離独立したドンバスの2共和国を正式承認するのは良い考えであり、戦争への道を歩み始めることだと同意させた。諜報機関の指導者たちは、自分たちや主要な顧客に対して知的な意味で正直でなかった。正直であれば、屈辱、投獄、あるいは死をもって報われると広く理解されていた。デビッド・ジオーとヒュー・ディランDavid Gioe and Huw Dylanがワシントン・ポストで論じたように、「(プーチンは)国家安全保障と情報機関の顧問団の助言を無視したか、あるいは、以前の強権指導者と同様に、自分の聞きたいことだけを部下が話す状況を作り出した」。戦時指導者としてのプーチンの能力に疑問がついている。

こうした前提での結果は、侵攻第一週に表れた。ロシア軍はウクライナの空軍や防空システムを破壊できず、ホストメル空港の強襲に失敗した。ウクライナの統合防空システムが稼動し、ウクライナ軍の反撃が激しいにもかかわらず、攻撃を強化し続けたため、ロシア軍の空挺部隊は壊滅的な死傷者を出した。また、ロシアは4日間を超える作戦で後方支援が十分できず、市民インフラへの被害を防ぐため、支援攻撃(砲撃、航空、ミサイル攻撃)が制限された。しかし、ロシアの悲惨な侵攻計画の多くには、初期見積もりの甘さ(あるいは、より一般的な知的不誠実さ)が背景にある。

プーチンとそのアナリストが行ったと思われる見積もりでは西側諸国はウクライナを支持しないと、見ていた。2008年のジョージア侵攻や2014年のクリミア侵攻に西側、特にヨーロッパは反応しなかった、今になって反応するだろうか。ジョージアが西側諸国の関心領域の外側にあり、クリミアではプーチンが驚くべき成果を達成したという事実で説明できるかもしれない。今回はそのどちらも当てはまらない。とはいえ、欧州が侵略にここまで強力に反応したことが、多くのオブザーバーを驚かせた。現在、ほとんどの国から武器が流入しており、支援策への国民の支持はほぼすべての国で非常に高い。2月下旬には、これはあり得なかった。

ロシア軍のオペレーションインテリジェンスの失敗

ロシア連邦軍の失敗で注目されているのは、「新体制改革」(2012年より)で導入された大隊戦術群だ。戦術群、さらにロシア軍全般の失敗は明らかであり、欧米やロシアのアナリストでさえ、以前から明らかにしていた。情報面では、大隊戦術群は小規模な司令部となり、大規模な編隊司令部が持つような戦術レベルの情報業務に必要な力を欠くことが問題だ。また情報収集の範囲も、小規模な本部と低い組織力により損なわれている。米軍の報告書によると、情報分野では、戦闘部隊は狭い視野の戦術システムしか持たず、「全般をカバーすることはほとんどない 」という。戦術的無人機を調整するために、大隊戦術グループの指揮統制は、「作戦中隊と情報・監視・偵察要員を戦術的集合地域に併置する必要があり、ハイペイオフのターゲットとなる」と述べている。ウクライナ側がこのことに気がつかなかったはずがない。

通信手段の確保も、短期決戦を期待したロシア側の犠牲になっていたようだ。初期の報告では、ロシアの通信インフラは戦場で性能が低く、特に最先端の暗号化無線が不調であったとされている。その結果、ロシア軍は携帯電話や暗号化されていない高周波無線を使う間に合わせの現場解決策に大きく依存し、ウクライナ軍のみならず無線愛好家でも簡単に傍受できた。ロシア製のエラ電話システムは携帯電話網に依存するが、ロシア軍の攻撃でウクライナ国内で携帯電話タワーが破壊されたため、ロシア軍は安全な電話を使えず、オープン通信システムに頼らざるを得なかった。これがウクライナ側に情報面でのメリットを生んだ。

3月には、ウクライナ国防省の情報部門が、第41軍の参謀長ヴィタリー・ゲラシモフ少将Maj. Gen. Vitaly Gerasimov含む将校数名の死について、FSB 将校 2 名の通話の傍受内容を発表した。後にBellingcatがこれを検証した。英シンクタンクRUSIの報告書によれば、「ウクライナ軍は戦場で数的に劣っても、ロシアの劣悪な通信環境がウクライナに信号情報の優位性を与えている」とある。「RuAF(ロシア軍)の無線通信を探知し発信源を突き止めることで、ウクライナ軍は敵を発見し、特定し、動力学的・電子的に交戦できる」。

この問題をさらに悪化させたのは、ロシアが初歩的な安全保障措置すら怠ってきたことだ。ISRは、敵が自分たちに向け展開している能力を指揮官に認識させるべきものだ。これにより作戦行動の自由を確保し、優れた情報を持つ相手による迎撃や先制攻撃を回避する作戦上の安全対策や欺瞞対策が可能になる。ロシアも外部も、否定と欺瞞の面でロシアの優位性を長い間認識してきた。ロシア語で「マスチロフカ」maskirovkaと呼んでいる。ロシアが唯一成功した欺瞞は、自作自演のようで、「力と手段の相関関係」の分析がうまくいかなかった反映である。その結果、本稿執筆時点で将官9名と30人以上の大佐含む指揮官多数が死亡している。参謀・指揮機能の劣化は、ロシアの作戦における問題を倍加させ、長期的な課題となっていることは確かだ。

ロシア軍の作戦情報計画には、敗北や失敗に直面した場合に戦術的アプローチを変更できない、という側面がある。優れたインテリジェンスの準備とは、敵で最も可能性の高い行動方針と最も危険な行動を推定することにある。主に前者について計画を立てても、敵の行動が後者により適合する可能性にも目を配る。そのような場合、指揮官に警告する指標や警告システムを導入し、部隊は不測の事態に備えた計画に移行できる。ロシア軍は、最初の取り組みが失敗した場合の計画変更に、作戦情報能力を使用していないようだ。あるウクライナ特殊部隊の隊員は、ロシア軍が失敗しても作戦に固執し、無防備な場所に無造作に砲撃を加え続けたことに触れ、「ロシア人がクソバカでラッキーだ」とまで言った。

この愚かさで、ロシアの情報管理能力の低さとあわえ、戦術的な情報管理でのウクライナの優位性に対抗した。力のぶつかり合いの結果、特にキーウの北部戦域で顕著なように、ロシア軍を待ち伏せし大きな消耗を引き起こすウクライナの優位性が生まれた。ウクライナ軍はロシア軍の接近を察知し、頻繁に広範囲に待ち伏せ、「シュート&スクート」を計画できたが、ロシア軍はウクライナ軍がいつどこで行動するか判断できなかった。ウクライナ側が主導権を握り、局所的な優位性が生まれた。

注意しなければならない。これまでウクライナ軍がロシア軍から受けた損失は不明だ。ウクライナ側は情報作戦を巧みに駆使し、死傷者の正確な状況は公表していないばかりか、議論すらしていない。ほとんどの情報がそうでないことを示唆しているが、ロシア軍の諜報活動が正確な情報を提供し、ウクライナの陣形を効果的に狙っているのかもしれない。例えば、ウクライナの大型防空システムに深刻な犠牲者が出ていることが分かっている。ロシア軍の作戦情報能力を効果的に評価するには、時間がかかるし、データも不足している。

ウクライナはインテリジェンスで賢く戦っている

ウクライナが情報面で優位に立てた大きな要因として、西側同盟国が示した情報共有への姿勢、オープンソース・インテリジェンスのパワーと可能性が高まったことの2点がある。宇宙打ち上げコストの急速な低下により、10年前の非常に高価な国営「スパイ衛星」システムに匹敵する民間の高解像度地球観測システムが普及してきた。商業システムは、雲探知レーダーを含むマルチスペクトルおよびハイパースペクトル画像を、ほぼ連続で提供する。国家の地理空間情報機関が民生衛星を利用することで、そのカバー範囲と効率が向上した証明だけでなく、画像情報分析を公開または低レベル分類で提示することが可能になった。

また、ウクライナもこの商業衛星画像を利用している。第1回で紹介したように、Maxar TechnologiesやBlackskyといった企業は、オープンソース画像をニュースメディアに提供し、パブリックドメインとして発信している。2月24日から紛争が激化すると、ウクライナ政府はMaxarなどと協議し、作戦情報用に画像の確保に乗り出した。一方、カナダ企業は米国の民間画像解析会社と提携し、RADARSAT-2のレーダー画像をウクライナと共有することにした。さらに公式情報源の情報もある。

情報連絡の機密性のため、不明な点も多いが、米政府関係者はウクライナ政府への情報提供が活発になっていることへコメントしている。ホワイトハウスのジェン・サキJen Psaki報道官は3月上旬、米国はウクライナの防衛態勢を支援するため、「ロシアの侵攻に対する軍事的対応に情報を与え、発展させる」リアルタイム情報を共有していると述べた。情報筋がCNNに語ったところによると、情報交換には「ロシア軍の動きや位置」、「軍事計画に関する通信の傍受」などが含まれ、米国が入手してから30分から1時間以内に共有しているという。ウクライナ軍がロシアの巡洋艦モスクワを撃沈するのを外国の情報機関が手助けしたとの見方もある。5月、匿名の米政府関係者がニューヨーク・タイムズ紙に、米情報機関が「ウクライナのロシア将兵殺害を手助けした」と語ったが、国家安全保障会議のエイドリアン・ワトソンAdrienne Watson報道官はこの主張を否定している。「記事の見出しは誤解を招くものであり、その組み立て方は無責任だ」「ロシアの将軍の殺害をねらい情報を提供しているわけではない」 と述べた。

しかし、外国の情報連絡には、注意が必要だ。海外情報をただ受け取るだけでは役に立たない。統合して一つの情報像にする分析能力が軍似必要だ。ウクライナ軍が外国からの情報と自国の情報収集・分析を両立させているのは、ウクライナ軍参謀本部とヴァレリー・ザルジニGen. Valerii Zaluzhnyi総司令官の優秀さを示している。米国情報機関を過大評価することは問題である。元CIA職員のジョン・サイファーJohn Sipherは「ウクライナに失礼だと思う」と言う。「現場で情報を活用し、自分たちで情報を集め、日夜戦う人たちから遠ざかっている」。

ウクライナのオープンソース・インテリジェンス

ウクライナの情報収集と友好国政府からの情報提供は、ロシアとその国民が持つ一般的な「ホームグラウンド」の優位性を補完し、ロシアの惨状をさらに深刻なものにしている。ウクライナの軍事情報は、ロシアの通信セキュリティの低さ、無線・電話通信の安全性の低さを利用している。情報というものは傷みやすいため、ウクライナの軍事情報部が情報を素早く処理したのは当然であり、戦術情報の成功の多くはウクライナ側の部隊によるものであった。

しかし、ロシア軍の情報を提供する「センサー」としてのウクライナ国民の存在がいかに大きいかも明らかとなった。ロシア軍は住民に歓迎されると判断していたこともあり、地元ウクライナ人を確保する行動をほとんどとらなかった。しかし、市民の携帯電話は、あっという間に巨大な分散型オープンソースセンサーネットワークに変貌した。ウクライナのデジタル変革担当大臣であるミハイロ・フェドロフMykhailo Fedorovは、ワシントン・ポストのインタビューで、ウクライナ政府の公共サービスアプリ「Diia」で、市民がロシア軍の動きについてジオタグ付き写真やビデオを投稿できるほど、クラウドソースによるオープンソース情報が自国に重要であると述べている。同アプリは「戦時下において、電子文書や検問所での市民の身分証明書だけではなく、敵部隊やハードウェアの動きを報告する機会になった......それはまた、自分がバイラクターのオペレーターであると想像する可能性でもある」。フェドロフは、毎日何万件もの報告を受け、「非常に、非常に有用」と述べている。

オープンソースインテリジェンスは万能ではないし、信号、電子、画像情報などの長年にわたる情報収集手法や、主権的な収集システム(ウクライナ側が2014年から構築してきたもの)に置き換えるものでもない。しかし、強固な分析能力と結び付き、その他情報収集の流れと融合することで、重要な貢献となる。個々の市民は、ある車両を「戦車」としか認識できないかもしれない。しかし、戦車の写真が情報融合センターに届けば、型式を特定できる。その戦車は特定の部隊にしか所属していない可能性があり、分析官にはここが敵の主戦場であり、他の場所でのフェイントは無視する指示が出るかもしれない。主権者の技術システムも情報を収集できるが、常に需要が高く、同時にどこにでもいることはできない。携帯電話を持つ一般市民は、大規模な戦闘中でさえ、処理能力と分析能力の裏付けがあれば、情報収集の網をより広範に提供できる。

司令部と部隊間の交信だけでなく、ロシア兵は個人所有の携帯電話や略奪した携帯電話を使って家に電話をかけている。これは、ロシア軍の状況(しばしば貧しく、士気も低い)を示唆するものであり、ロシアの戦争犯罪の証拠にもなっている。ブチャでの出来事について、ロシア軍将校が故郷の妻と交わした電話を傍受したオープンソースが一例である。ロシア侵略関連の戦争犯罪裁判でも、間違いなく重要な証拠になるだろう。

結論

ウクライナがオープンソース含むインテリジェンスを軍事作戦に統合したことは、近年の改革と欧米の援助が成功したことの証左だ。これがどのように機能しているかについての詳細はほとんどなく、ロシアのさまざまな機能不全について入手できるデータよりはるかに少ない。これも実力の証明だ。侵略軍と対照的に、ウクライナ軍は通信手段を確保し、最も可能性の高い行動と最も危険な行動の双方を計画する能力を持っていると考えてよい。指揮官は情報収集能力を十分備えているように見える。推測の域を出ないが、ホストメル防衛とその後の反撃がこれを最もよく証明しているのではないだろうか。空挺作戦が破壊されたため、ロシアは迅速な勝利と政権交代という政治的目標を達成する可能性がなくなった。ウクライナは航空戦力と対空砲火を選択的に使用し、戦術レベルおよびオープンソースの情報・偵察の広範な統合が、劣勢にもかかわらず侵攻軍を阻止する鍵になった。ウクライナの防衛は、ロシアの失敗と対比される成功例として、情報史に刻まれることは間違いないだろう。欧米の情報機関関係者はウクライナを訪れ、学ぶことが必要になる。■

 

Intelligence and the War in Ukraine: Part 2

NEVEEN SHAABAN ABDALLA, PHILIP H. J. DAVIES, KRISTIAN GUSTAFSON, DAN LOMAS, AND STEVEN WAGNER

MAY 19, 2022

COMMENTARY

 

Dr. Neveen Shaaban Abdalla is a lecturer in international relations (defense and intelligence) at Brunel University London. Dr. Abdalla specializes in terrorism and counterterrorism and security in the Middle East and North Africa.

Prof. Philip H.J. Davies is the director of the Brunel University Centre for Intelligence and Security Studies. Professor Davies has written extensively on U.K. and U.S. intelligence, joint intelligence doctrine, and counterintelligence.

Dr. Kristian Gustafson is a reader in Intelligence & War. Dr. Gustafson is deputy director of the Brunel Centre for Intelligence & Security Studies and has conducted consultancy and advisory work for the MOD’s Development, Concepts and Doctrine Centre, including an integral role in developing U.K. Joint Intelligence Doctrine.

Dr. Dan Lomas is a lecturer in Intelligence and Security Studies at Brunel University London. He specializes in contemporary U.K. intelligence and is currently co-editing a history of U.K. intelligence reviews for Edinburgh University Press.

Dr. Steven Wagner is a senior lecturer in international security at Brunel University London. Dr. Wagner is a historian of intelligence, security, empire, and the modern Middle East.

Image: CC-BY-NC 2.0, Flickr user manhhai


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