スキップしてメイン コンテンツに移動

東部で攻勢に転じたウクライナ軍。ウクライナ勝利の可能性が見えてきた。海外からの装備品流入とあわせ国内で予備役動員が鍵となる。

  

uncaptioned

ウクライナが捕獲したT-80戦車部隊が第93機械化旅団に加わった [+] 93RD MECHANIZED BRIGADE PHOTO

 

 

クライナ軍が東部で攻勢に転じたと報じられている。低迷するロシア軍には不吉なニュースだ。

 

 

 ウクライナ部隊は、戦いに慣れた第92、93機械化旅団を含むようで、ここ数日、ロシアとウクライナ国境からわずか25マイルのハルキウから北と東に攻め始めた。ロシア軍はドネツ川から東へ退却し、橋を爆破しつつ国境に向かい逃走している。

 ロシア軍も前進しており、ハルキウから南へ60マイルのイジウムから南西方面に展開し、村数カ所を占領した。

 しかし、イジウム攻勢はロシア軍に災いの前兆になるかもしれない。ウクライナとの戦争を始めて10週間、ロシア軍は疲弊している。とくに精鋭大隊は散々な目にあっている。ウクライナ側によれば、指揮官十数名を殺害したと主張している。ロシア軍と同盟軍数万人が死傷、捕虜になっている。

 ロシアの前進は脆弱だ。ロシア軍はイジウムを通過し、部隊を縮小し、補給線を拡張したため、脆弱になっている可能性がある。ウクライナにとってはチャンスだ。戦争に勝利する可能性が出てきた。

 現在、ハルキウから北と東に進出しているウクライナ旅団が、統合して南に向かえば、イジウム周辺のロシア軍兵站線を切断できるかもしれない。この作戦で、ロシアの残存大隊多数を包囲できる。

 もちろん、保証はない。ロシア軍がウクライナで勝っていないのは明らかだが、積極的に負けているとも言えない。ウクライナ側も大損失を被っており、予備役動員や装備配分に苦労するかもしれない。

 とはいえ、ウクライナ側が勝利する条件は明らかになりつつある。ハルキウ周辺の機械化旅団は、ロシア軍を国境まで押し上げることができる。その後、南下し、イジウム周辺のロシア軍大隊の背後を突くことも可能だ。ハルキウ旅団は現在イジウム南で戦線を維持している旅団と団結し、共に西に軸足を置いて、ロシア軍を仕留めることができる。

 ウクライナ軍最高指揮官ヴァレリー・ザルジニーValeriy Zaluzhnyは、ハルキウ反攻作戦を木曜日発表した。ザルジニーは、「米国に作戦状況を説明した」とし、米統合参謀本部議長マーク・ミルリー米陸軍大将General Mark Milleyを指している。

 ウクライナ軍がハルキウの北と東に進出している様子は、数日前に明らかになっていた。ロシア工兵隊は火曜日頃、ドネツ川にかかる主要道路橋を爆破し、ウクライナ軍の動きを鈍らせようとした。撤退するロシア軍は、最高のT-90M戦車を少なくとも1両失った。

 ザルジニーはイジウム周辺でウクライナ軍の反撃も発表したが、ハルキウ部隊の努力なのか、イジウム南方の部隊による局所的な攻勢なのかは不明だ。

いずれにせよ、ロシア軍はイジウムを越え南から西へと攻め続け、集落を占領している。ハルキウ南端を流れるドネツ川は、北から南へ移動するウクライナ軍にとって障壁となるが、一部ウクライナ軍が木曜日以前に渡河したと伝えられている。

 ウクライナ軍がどこまで南下するかは未知数だ。ロシアはウクライナ東部の上空を支配しており、ウクライナのミサイルに敗れたにもかかわらず、Su-24とSu-25攻撃機でウクライナ陣地を狙い低空爆撃を続けている。最も強力な2S7砲含むロシア野砲が飛んでくる。

 しかし、ウクライナ軍にも2S7をはじめ砲があり、外国からの援助でさらに野砲が届く。ウクライナ側は、小型対戦車爆弾を搭載した小型オクトコプターを巧みに運用している。

 アメリカ提供の情報も活用し、ウクライナ砲兵部隊は戦場全域のロシア司令部を標的にしている。ウクライナの砲兵隊は4月30日、ロシア軍トップのヴァレリー・ゲラシモフ元帥Gen. Valery Gerasimovが訪問していたイジウム近くのロシア司令部を砲撃した。攻撃で、ロシアの電子戦幹部が死亡した。

 ウクライナ軍が前線部隊の戦力を維持できれば、最終的にドネツ川から50マイル離れるイジウムまで前進できるかもしれない。イジウム南東には、第4、17戦車旅団、第95航空攻撃旅団など、ウクライナ軍が精鋭部隊が集中している。

 機械化旅団2。戦車旅団2と航空攻撃旅団1、その他、旅団数個に加え、無人機多数と大砲がある。ウクライナ軍戦力は、イジウム付近のロシア軍約20個大隊の包囲するのに十分かもしれない。

 ウクライナが自分たちのしていることを分かっていないとは思ってはいけない。ウクライナ指揮官は、多くがソ連軍のベテランで、ロシアのドクトリンを理解し、欠点を知っている。砦の切り崩しは、ロシアの攻勢を打ち破る古典的な戦術だ。

 重要なのは、ロシアの大隊の構成で、砲兵は多いが歩兵は少ないことだ。ロシアのドクトリンの核心は、兵力ではなく火力だ。歩兵不足は、今次作戦の初期にキーウ占領を試みた際に顕著となり、攻撃するロシア軍はしばしば後方防衛に苦しんだ。

 歩兵不足を補うため、ロシア軍司令官は親ロシア派の準軍事組織(未訓練、軽武装の現地住民)を補給線警備にあたらせる傾向がある。ウクライナ側にとって、後方地域の弱小部隊は、ロシアの進攻を迂回する手段となる。

 ウクライナは以前もこれを行っている。2014年8月、ロシアの支援によるウクライナ東部への攻撃の際、第95航空攻撃旅団はロシア軍の後方100マイルに侵入し、ロシア軍が後方を守るため配置していた分離主義者勢力を打ち破った。

 第95旅団は「ロシアの戦車や大砲を破壊して捕獲し、孤立したウクライナ守備隊を救援し、最後に出発地点に戻った」と、ニコラス・フィオーレ米陸軍大尉Capt. Nicolas Fioreは陸軍戦車部隊の機関誌『アーマー』の2017年論文で振り返っている。

 ハルキウ旅団がイジウムの反対側にいる旅団と連携に成功すれば、95旅団は2014年の偉業を再現する機会を得てもおかしくない。

 ただし、ウクライナ側は、後方を無防備にするわけにはいかない。決定的な一撃を与えようと急ぐあまり、モスクワと同じく、キーウも前進を伸ばしすぎる危険性がある。

 ウクライナ軍がイジウム周辺での包囲作戦に期待する旅団は、2カ月にわたりハルキウを守り抜いた旅団だ。各旅団が南下した場合、140万人都市の安全と自由を保証するため、後方を埋める部隊があるのだろうか。「ロシア軍はハルキウを今も狙っているように見える」と、米国防総省担当者は水曜日に記者団に述べている。

 一つの答えが予備役だ。ウクライナは予備兵数万人を動員しており、既存部隊を強化する以外に、新部隊の編成も可能だ。装備品も必要だ。幸いなことに、同盟国からの戦闘車両、戦車、大砲などの供給が途切れる気配はない。

 ウクライナ予備軍がハルキウからイジウムの後方を埋めれば、ロシアの反撃を防げる。前進せよ。彼らの背後に回れ。そして破壊せよ。■

 

 

The Ukrainian Army Is On The Attack. This Is How The War With Russia Could End.

David AxeForbes Staff

May 5, 2022,07:58pm EDT

 


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...