スキップしてメイン コンテンツに移動

A-10を退役させたい米空軍、F-35の25mm砲が代わりになれるか。A-10では中国戦に対応不可能と見ているようだが....

 A-10 Warthog

US Air Force


  • 米空軍はA-10を数年で廃止したいとしている

  • 空軍はA-10を廃棄してハイエンド機に集中しようとしてきたが、議会が阻んできた

  • A-10の退役が迫る中、近接航空支援の役割を他機が果たすことになるかもしれない

界で最もユニークな航空機が、永久に退役する可能性がある。

 米空軍は今後5、6年でA-10サンダーボルトII286機を退役させる計画だと、国防総省の民間予算担当トップ、マイケル・マッコードMichael McCordが3月の2023年度防衛予算発表の際に述べた。

 1972年導入されたA-10は、地上軍への近接航空支援を目的とした双発の亜音速攻撃機。

 イボイノシシの愛称で親しまれ、この任務のために一から作られた唯一の米軍機であり、他国が飛行させたことはない。

 長年にわたり、空軍はA-10を廃棄し、ハイエンド機に専念しようとしてきた。イボイノシシの退役が迫っているため、他の機材が代わりを果たすことになるかもしれない。


他にない機材

 A-10は、冷戦時代のヨーロッパで戦車部隊を中心としたソ連軍の数の優位に対応するべく開発された。

 A-10はソ連戦車の装甲を破壊するため、機体は強力な30mmGAU-8 アベンジャー回転式自動砲を中心に構成されている。

 アベンジャーは高火力焼夷弾と徹甲弾双方を使用し、毎分3,900発を発射できる。徹甲弾は劣化ウランを含み、装甲貫通効果を高めている。また、対戦車誘導弾などミサイルやスマート弾を外部に搭載することができる。

 近接航空支援任務では、低速で低空飛行する必要があり、高脅威環境を想定し、同機は過酷な状況に耐える設計になっている。尾翼半分、主翼半分、エンジン1基、昇降舵1基でも飛行できる。

 機体はチタン製で、23mmまでの直接火器、57mmまでの間接火器のダメージを受けても平気だ。

 A-10の翼面は大きく、低空・低速で機動性が非常に高い。

 また、エンジンは高い位置に搭載され、非整地での着陸でも地面から離れないよう設計されているため、メンテナンスが容易で、短い滑走路や即席の滑走路でも運用できる。


すべていつかは消える

 老朽化に加え、米国が太平洋に軸足を移したことで、近接航空支援任務が難しくなり、中国の対空兵器でA-10がすぐ撃墜されることが予想される。ソ連の防衛力をもってしても、A-10は大きな損失を出すと予想されていた。

 ジーナ・オルティス・ジョーンズGina Ortiz Jones空軍次官は3月28日の記者会見で、A-10は米インド太平洋軍の任務では「貢献する能力が限られている」と述べた。

 ジョーンズは、空軍は同地域で勝つために「生存力があり、効果的で、最高の機会を提供できる」航空機を確保したいと述べた。

 さらに、伝説的な同機が50年目を迎えるにつれ、維持は難しくなり、コストも高くなる。特に、A-10の主翼の交換は、1セット約1000万ドルという高額なものだ。

 空軍はA-10保有機数を減らし、F-35と入れ替えを始めようとしたが、議会が阻んでいる。空軍はA-10への投資やアップグレードを減らし中止したりしながら配備を続けているため、空軍が「サボタージュ」していると非難を浴びた。

 2016年と2017年の国防総省の年間予算の一部として、議会は空軍に対し、A-10を削減する前に、A-10とF-35の近接航空支援能力を比較するよう要求した。空軍は2019年に評価を完了した。

 空軍は現在、2022年10月1日に始まる2023会計年度から、A-10を徐々に退役させる計画だ。このプロセスは、F-35がA-10の任務を引き継ぐ前に、一時的にF-16に交代させる対象の21機のA-10の廃棄から始める。


後釜はどうなる

 だが低高度での近接航空支援でA-10の穴を埋めるのは簡単ではないだろう。

 元カナダ空軍中佐でF-35の上級テストパイロットであるビリー・フリンBillie Flynnは、4月のThe Aviationistのインタビューで、米国はアフガニスタンとイラクで中高度でのCASを学んだが、A-10には「指定席がある」と述べている。

 F-35の最新型センサーは、中高度でのCASで兵装を効果的に使用するのに役立つ。しかし、友軍が敵と接近している場合は、F-35は低空飛行で機関砲を使わなければならないだろうとフリン氏は言う。

 現実には、中高度CASは「敵が近くにいると機能しない」とフリンは言う。「イラクやアフガニスタンのシナリオでは、友軍近くに弾丸や武器が必要なとき、25,000フィートから武器を投下することは受け入れられないだろう」。


Air Force F-35 cannon gun

F-35A が25mm機関砲をユタ試験訓練場で発射している August 13, 2018. US Air Force/Todd Cromar


 F-35は25mmGAU-22/A回転砲を使用し、F-16などの20mm砲よりは強いが、A-10のアベンジャーには及ばない。

 F-35の高い機動性とスピードは、敵の標的にされないことを意味するが、第5世代戦闘機はA-10ほどの耐久性がない。

 単価8000万ドルのステルス戦闘機を低空飛行させることは「多くのリスク」があるが、「我々の仕事は地上部隊を守ることだ」とフリンは述べた。

 イボイノシシの得意分野である、激しい銃撃を受けながらの部隊支援に関しては、「これだけ年月が経っても、A-10に代わる航空機が存在していない」と、フリンはThe Aviationist誌に語っている。「現場の誰もが、A-10が非常に貴重な機材と言うはずだ」という。■

F-35s will have to learn to do the risky mission that made the A-10 famous, former F-35 test pilot says

Constantine Atlamazoglou 5 hours ago


Constantine Atlamazoglou works on transatlantic and European security. He holds a master's degree in security studies and European affairs from the Fletcher School of Law and Diplomacy.


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...