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ウクライナ戦。巡洋艦モスクワを喪失し、黒海のロシア海軍が劣勢に。スネーク島を巡る戦いが焦点。

 Russian Navy amphibious warfare ships in Black Sea base

 

ロシア海軍揚陸艦の多数が、ノボロシスクに集結している。同港はセパストポリから遠く、スネーク島付近で見られることが少なくなっている。また、ベルジャンスクでロシアが拿捕したウクライナ海軍の艦船も確認されている。

 

ロシア海軍が劣勢になりつつある。ロシアはウクライナ侵攻で、最初にスネーク島を奪取した。その2カ月後、ロシアはスネーク島の維持に必死になっている。黒海北方でロシア支配が弱まっている証だ。


 

巡洋艦モスクワ喪失後の最大の影響は、黒海北部がウクライナ機に安全な場所になったことだ。特にウクライナ海軍のTB2ドローンにとって。戦略的な意味合いが生まれたといってよい。

 焦点は、ウクライナ南西端にある小さな岩礁、スネーク島だ。開戦時にロシアに占領された。巡洋艦モスクワも奪取に役割を果たした。

 クリミアから西に侵攻できない今、スネーク島は孤立した前哨基地となっている。同島はクリミア以西の唯一のロシア拠点だ。そして、無防備になりつつある。

 

小さな岩の大きな代償

巡洋艦モスクワの役割は主に防空で、S300ミサイルを搭載していた。モスクワが消えた後、ウクライナ軍無人機は標的に効果的に対応できるようになった。劇的な効果を生んでいる。

 ウクライナの最初の大きな動きは、無人機による攻撃による島内の防空網の破壊だったようだ。少なくとも理論上は、強力なSA-15 Torミサイルシステムが防空を担っていた。そのシステムを排除したことで、ウクライナ海軍のTB2ドローンが付近を飛行できるようになった。ロシア海軍の最初の犠牲は、5月2日の2隻のラプター攻撃艇だった。

 プロジェクト03160ラプター級は、スウェーデンのCB-90をモデルにしている。特殊部隊の投入や撤収など、多くの用途がある。しかし、防空能力は限られ、激しい動きを見せてもTB2の格好の標的になってしまった。

 5月7日、ロシアはSA-15ミサイルシステムを同島に搬入しようとした。その際、TB2のドローンがプロジェクト11770セルナ級揚陸艦を捉え、荷揚げするところを直撃した。攻撃は壊滅的で、同艦は揚陸地点を塞いでしまった。

 防空能力が低下したロシア軍守備隊は、無人機と戦闘機による空爆を次々と受けることになった。やがて建物のほとんどが瓦礫と化した。ロシアはまだラプターを運用していたが、5月8日にTB2がさらに二隻を排除した。ヘリコプターが部隊を島に上陸させた。

 しかし、ロシアは、戦略的価値のある同島を保持すると決意しているようだ。5月9日、スネーク島の隣で、少し大きめのプロジェクト21820ジュゴンDyugon級上陸用舟艇が1隻観測され、SA-15 Tor防空システムを搬送するためと思われる。

 

大型揚陸艦の動きがない

Naval Newsは、独立系防衛アナリストのBenjamin Pittetと、黒海のロシア海軍水陸両用軍を観察してきた。作戦パターンに変化が見られる。

 ここ数週間、スネーク島周辺で大型揚陸艦の活動を見かけなくなった。開戦して数カ月は、ロプチャ級揚陸艦1隻か2隻が島の近くで頻繁に観測されていた。 

 ロシアは侵攻までに、黒海に追加の揚陸艦を送り込んでいた。北方艦隊とバルト海艦隊から、ロプチャ級揚陸艦と新型のイワン・グレン級揚陸艦が派遣されていた。また、カスピ海からは小型上陸用舟艇が移動し、太平洋からも追加派遣の気配もあったが、状況は一転した。

 

上陸用舟艇が2倍以上に

黒海の揚陸戦力は、揚陸艦の移動で2倍以上となった。当初、大部分はクリミアの西側、オデーサに面した場所に集中しオデーサ付近で「示威行動」任務が行われた。だが期待された上陸作戦の機会は来ず、おそらく頓挫したのだろう。

 4月下旬、モスクワ沈没の後、パターンに変化があった。スネーク島付近でロプチャ級を見かけなくなったのだ。オープンソース情報では、完全に停止したとは断言できないが、あらゆる兆候は停止していると思われる。代わりにラプター級や小型のダイゴン、セルナ級揚陸艦が使われている。

 巡洋艦モスクワがなくなり、危険な場所になったというのが素直な解釈だろう。ロプチャは対空砲を持つが、ウクライナのミサイルやドローンの格好の標的になっている。そのため、揚陸艦は港内に集中している。黒海艦隊の上陸用舟艇は海に出ているが、より限定された運用のままだ。黒海艦隊はセヴァストポリとノヴォロシスクに残ったままだ。

 

呪われた島は次にどうなるか?

ロシアは、高い兵力と装備品を投入してでも、この島を維持する決意のようだ。位置は戦略的である。監視が可能で、ウクライナがを防ぐことができる。また、和平合意や最終的な領土奪取の際にも重要な意味を持ちかねない。また、マリウポルのウクライナ拠点と同様に、同島の防衛は象徴的になる可能性がある。

 ウクライナが同島を奪還しようとするかはまだ不明だ。感情的には強い動機があるかもしれない。政治的、戦略的にも意味があるかもしれない。

 しかし、実行すれば、状況は逆転となり、ロシアがウクライナ守備隊を自由に攻撃できる可能性が生まれる。同島は、効果的な局地防空がなければ無防備だ。今のところ、双方とも達成できるようには見えない。■

 

How The Russian Navy Is Losing Dominance: The Curse Of Snake Island - Naval News

H I Sutton  11 May 2022


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