スキップしてメイン コンテンツに移動

急速な変化が必要となっている米空軍が想定する事態は対中戦。そのため旧型装備を処分して資金を捻出しようとするのだが....

 


有人機と運用する消耗品扱いの低コスト無人機のコンセプト(U.S. Air Force)


国南部上空を飛行中のC-40機内にて----ジョリーグリーンII戦闘救難ヘリコプターは、先代のペイブホークに続き、アフガニスタン戦で敵地に閉じ込められたアメリカ軍と同盟国を何度も救出してきた。

 しかし、3月末の2023年度予算で、米空軍は驚くべきことを発表した。高度な防空システムを有する敵に撃墜される恐れがあるとして、ジョリーグリーンII HH-60Wの購入を3分の1、合計75機へ縮小する。



 次の戦争に備え、軍の懸念はジョリーグリーンIIだけではない。しかし、新型の戦闘救難ヘリコプターでの方針転換は、空軍が将来へ向けた考え方や準備のありかたを大きく変えたことを示す、目に見える最大の兆候だろう。

 過去20年間の中東での戦闘で、米国は無人機、戦闘機、戦闘救難ヘリコプターを飛ばす中、ほぼ完全な空の支配を享受してきた。しかし、中国含む先進的な敵国との戦争になれば、そうはいかない。

 空域の争奪戦がさらに激化した場合に備え、空軍は取り組み方を根本的に変える土台作りにとりかかっている。

 空軍上層部は、2段階プロセスで説明している。今後数年で、空軍は旧式機を売却し、新しい機体の短期的な進歩や既存の機体のアップグレードの資金を確保し、既存機材の近代化は小規模に留める。

 第6世代戦闘機の導入や、自律型無人システムの新たな利用法として危険な戦闘地域で負傷した兵士の救出を想定しているのだろう。

 だが、時間がない。ロシアのウクライナ侵攻は、大国間競争の時代が到来したことを示す。国防総省は、中国との衝突が想定以上に早く発生するのを懸念している。

 克服すべき技術的ハードルもある。2023年までに計150機の退役が予定されるが、議会が許可するかは未解決だ。こうしたことから、空軍が理想とする次世代能力を実現できるのか疑問を呈する専門家もいる。



ホローマン空軍基地内の高速度テスト施設で貫通型ペイロードが標的命中時の状況を再現している。 (U.S. Air Force)


 保守派ヘリテージ財団の国防政策専門家ジョン・ベナブルJohn Venableは、空軍は慎重にならざるを得ないと指摘する。空軍は旧式システムを縮小しながら、次の危機が訪れる前に先進的な能力を実現したいと考えているという。

 この30年間、われわれは『大きなリスクを引き受ける』という言葉を飲み込んできた......それは、自分の家に第3、第4、第5、第6のローンを組むようなものだ」とベナブルは言う。「そして、債権者が返済を求めてくるかもしれない」。

 3月の記者会見で、フランク・ケンドール空軍長官は、米国が直面している対象、特に中国に対応するため、空軍は進化ではなく、変革が必要だと述べた。

 ケンドール長官によれば、1940億ドルの23年度予算案は、変革を加速させるのが目的で、24年度予算で進める。

 4月の記者会見で、長官は「変化は容易ではない。空軍と宇宙軍は必要な水準まで前進しようとしている」と述べた。


変化への道

4月18日、空軍のC-40機内でのDefense Newsとのインタビューで、ケンドール長官と空軍参謀長CQ ブラウン大将は、最大の課題は中国や他の敵国が長距離精密兵器を採用することだと述べた。

 ケンドール長官によると、米国が前方航空基地、重要な衛星、空母、兵站や指揮統制ノードなど、高価値の少数の資産に集中していることに中国は気づいている。

 集中が今や脆弱性を生んでいる、とケンドール長官は言う。中国が長距離兵器でこうした資産を破壊すれば、アメリカの世界各地への軍事力展開や使用能力に深刻な打撃が生まれるという。

 空軍はまた、イラクやアフガニスタンで経験した無敵の航空優勢が、中国やロシアとの戦争ではそうならないという現実を受け入れている。

 空軍関係者は、23年度予算要求がこうした課題への対処で最初のステップになる、と述べている。  A-10ウォートホグやMQ-9リーパーなど、先進的な敵の前で脆弱となる旧式機や無人機を廃棄する方向で動いている。また、次世代制空システム、極超音速研究、B-21レイダー爆撃機の調達、自律無人機ウイングマンの研究など先端技術に資金をシフトしている。


B-21 Raider concept

B-21レイダーの想像図 (Courtesy of Northrop Grumman)


 ケンドール長官の説明では、捜索・救助用ヘリコプターは必要だが、どこで運用するか、どのようなプラットフォームで任務遂行するか、現実的に考え直さなければならないという。

 「ヘリコプターを持ち込めない場所もある。その場合は対応できなくなる」(ケンドール長官)。

 空軍幹部は戦闘救難ヘリコプターの需要を考え、より少数のプラットフォームで対応できると結論づけたと言うのが長官の説明だ。

 例えば、米国が中国の侵略から台湾を防衛する場合、墜落されたパイロットは海上あるいは台湾領土から救出されるとケンドールは言う。であれば、専用ヘリコプターの必要性は低くなる。

 しかし、ヨーロッパでの紛争の場合、特殊なヘリコプターが必要になるかは、墜落された隊員が敵陣の背後にいるかどうか、さらに敵の防空能力によって決まる、とケンドール長官は付け加えた。

 ブラウン大将によれば、空軍はパイロットが危険にさらされる可能性のある地域には自律型システムで侵入する方法も検討している。

 「脅威度の高い環境で戦闘時の捜索救助をどう行うか、従来と異なる方法で検討する必要がある」(ブラウン)。

 同様に、将来の通信、指揮統制、戦場管理能力にどう取り組むかを見極めようとしている。

 長年にわたり、空軍はE-3セントリー空中警戒管制システムAWACSおよびE-8統合監視目標攻撃レーダーシステムJSTARSで部隊を追跡し、敵撃破に必要な情報を指揮官に提供してきた。

 しかし空軍関係者によると、冷戦時代のAWACSやJSTARSは、高度な敵との戦闘で極めて脆弱になるという。

 ケンドール長官は、AWACS代替機に、E-7ウェッジテイルの調達を開始するべく、23年度予算要求で227百万ドルの資金を計上したが「少なくとも暫定的な解決策 」にすぎないという。



E-3セントリーも高度能力を有する敵勢力の前では脆弱と空軍当局は警戒している。 (Senior Airman Jessi Monte/U.S. Air Force)


 AWACSの長期的な代替機も、JSTARSの代替機もない。長期的な代替機がなければ、敵軍を正確に追跡し、目標を定めるアメリカの能力は危険にさらされる。

 ウェッジテイルは、最新の電子機器を搭載した機体だが、それでもE-3同様に敵ミサイルの影響を受けやすくなる。そこでケンドール長官は、空軍は戦場を見張り、目標を追跡する機能として星に目を向けている、と語った。

 「できれば宇宙からこれらの仕事をしたいのですが、解決できていない技術問題があります」。ケンドール長官は以前、空軍の宇宙部門には、攻撃を受けても稼働し続けられる弾力性が必須と述べていた。

 「バランスをとりながら、高度な脅威に必要な対応をで早く進めようとしている」



最新のウェッジテイルでさえ、敵ミサイルの脅威にさらされる点で現行機種と変わりない(British Ministry of Defence)


 バランスをとる方法に、航空機の平均機齢と平均コストを下げることがある。有人機と連携し、戦術の幅を広げる低コスト無人攻撃機、あるいは消耗品扱いの戦闘機の技術はすでにある、とケンドール長官は指摘する。

 例として、空軍パイロットは消耗覚悟の無人ウイングマンを前方に送り、意図的に敵を引きつけることができる。


落とし穴を避ける

空軍が検討中のコンセプトには、実現が難しいものや、初期段階のもの、まだプログラムになっていないものもあり、実現が不透明なものもある。

 そして、時間がないことを懸念する専門家がいる。

 戦略国際問題研究所(CSIS)の航空宇宙安全保障プロジェクト長トッド・ハリソンTodd Harrisonは、「情報機関の予測や国防総省周辺の噂では、中国は今後4、5年以内に台湾を軍事攻撃する可能性があると言われています」「もし、開発終了間近のものや生産中のものがなければ、2026年までに戦力として配備されることはない。そのため、短期的な改良を含む空軍の2段階戦略は賢明だ」と言う。しかし、ハリソンは、何年も先のことであっても、空軍は最先端の変革を推し進め続ける必要がある、と付け加えた。

 「萎縮させてはいけない。いずれ必要になるのだから」と言う。

 議会がワイルドカードだ。空軍は、議会が希望する資金レベルを承認し、資金を確保するため旧式機を退役させ、運用機数の数量制限を緩和する必要があると言う。

 昨年、議会は空軍が要求したA-10を除くすべての航空機の退役を許可した。しかし、以前は、議会は航空機削減に難色を示していた。

 ケンドール長官は、4月の記者会見で「議会の協力が不可欠」と述べた。「結局のところ、我々は前進する道を見つけなければならず、議会がその道の一部でなければならない」。

 4月28日のインタビューで、下院戦術航空陸上軍小委員会のドナルド・ノークロス委員長Rep. Donald Norcross(民 ニュージャージー)は、議会は空軍から長期的な近代化計画や売却について話を聞くことに前向きだが、空軍の能力で不足が生まれないようにすべきと語った。

 「議会での監督と同様に、議員は空軍の報告に耳を傾け、わかっていることや歴史が語ることと内容が一致しているか確認する」とノークロス委員長は述べた。「まだプロセスの初期段階なので、空軍の要求を検討し、過去の実績と将来の戦力ニーズと照らし合わせることになる」。

 旧型機処分議論は、二律背反の危険をはらんでいる、とハリソンは言う。議会は、空軍の新規能力開発には賛成であることが多い一方で、同等かそれ以上の代替品なしに旧装備を手放すことを望まない傾向がある、と指摘する。

 空軍は旧型プラットフォームの処分が許されないと、新規能力の開発資金を自由にできないと主張する。このため、空軍上層部は連邦議会議事堂に何度も足を運び、議員に空軍ビジョンに賛同するよう説得しなければならない、とハリソンは言う。

 「私たちを信じてください、私たちには計画がありますと言っても、通用しない。有権者多数の利害が絡み、本当の戦略的リスクも多数あるのだから」と言う。

 ケンドール長官とブラウン大将はDefense Newsに対し、議員に処分を売り込む責任は空軍にあることを認めた。

 「それは、われわれ次第です」とケンドール長官は言った。「議会に協力したい...協力こそが前進への道だ」。■


Inside the US Air Force's race to fund future fighters, bombers and autonomous drones before the next crisis

By Stephen Losey

 May 9, 07:00 PM


About Stephen Losey

Stephen Losey is the air warfare reporter at Defense News. He previously reported for Military.com, covering the Pentagon, special operations and air warfare. Before that, he covered U.S. Air Force leadership, personnel and operations for Air Force Times.


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...