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次期大統領専用ヘリコプターVH-92はなぜ大統領をまだ乗せられないのか。

 

開発がなかなか終わらない次期大統領選用ヘリコプターVH-92は通信装備の不具合のため、いまだに大統領他政府高官を載せ飛行できない。

兵隊は新型VH-92A大統領専用ヘリコプターを運用可能と宣言し、"マリーンワン "として米国の国家元首を乗せる飛行隊に統合するプロセスを始めた。しかし、同機が搭載する重要な安全通信システムに問題があり、修正に予算が回らないと、完全就航が遅れる可能性がある。


シコースキーVH-92の初期運用能力は12月28日に宣言されたが、ホワイトハウス軍事局(WHMO)は、任務通信システム(MCS)の信頼性が高まるまでは、同機を使ったジョー・バイデン大統領、カマラ・ハリス副大統領、その他高官、その家族、高官の輸送を海兵隊へ許可しない方針だ。

VH-92Aには各種アンテナ、衛星通信用の膨らみが機体後部からテイルブームにかけ多数ついているのがわかる。 Blend Qatipi

海兵隊報道官のジェイ・ヘルナンデス少佐Maj. Jay Hernandezは、IOCは「イベント上の目標」だったと述べている。「海兵隊は、ホワイトハウス軍事事務所、大統領ヘリコプター・プログラム・オフィス(PMA-274)、海兵隊ヘリコプター飛行隊1(HMX-1)と協力し、運用中のVH-3DおよびVH-60からVH-92Aへの移行条件を整備している」。

ヘルナンデス少佐はさらに、VH-92プログラムは「議会で承認ずみの予算コストとスケジュールの範囲内で推移している」と述べている。計画では、今年10月1日からの2023会計年度に、23機のVH-92を海兵隊に配備する。海軍の2023会計年度予算要求では、そのうち21機は次期会計年度にソフトウェアやハードウェアの改修が可能になる見込みで、利用可能機体が50%増加する。海兵隊予算は海軍の予算に組み込まれており、海軍航空システム本部(NAVAIR)がVH-92プログラムを監督している。

海軍の調達担当トップであるジェイ・ステファニーJay Stefanyは今月初め、下院で 「同ヘリコプターでホワイトハウスでの試運転を始めている」と語った。

IOCは2021年7月に設定していたが、そもそも当初2020年半ばの就役開始予定から遅れていた。

海軍はまた、2023年度予算において、VIP乗客が搭乗中に政府機関と安全に通話できるためのMCSでみつかった欠陥に対処する予算が確保されない場合、完全な運用能力実現が遅れる可能性があると指摘している。これはエアフォース・ワンが搭載するシステムと同じ目的で、大統領やその他高官が世界のどことでも途切れることなく超高速かつ暗号化通信を可能とするもの。特に、核抑止力を支える国家司令部との通信を可能とする。大統領専用機には不可欠であるため、VH-92導入の前提とされている。

MCSとは、独立したシステム2系統からなる広帯域の見通し線通信リンクで、ハイドラライトとクライシスマネジメントの2つで構成される。海軍予算書によると、ハイドラライトは無線機、アンテナ、アンプで構成し、Phoenix Air-to-Ground Communications Network(PAGCN)を利用してVoice over IP(VoIP)通話を可能にする。クライシスマネジメントは、防衛情報システム局の安全なネットワークに接続するためのルーター、コールマネージャー、高保証インターネットプロトコル暗号化装置(HAIPE)で構成する。

 

海兵隊第一ヘリコプター飛行隊(HMX-1)が新型VH-92Aの運行テストをホワイトハウスで2018年に行った (U.S. Marine Corps photo by Sgt. Hunter Helis)

VH-92が2023会計年度から交代するHMX-1所属のVH-3DとVH-60N両ヘリコプターには、同様のシステムが搭載済みだ。海軍予算書によると、海兵隊は2016年に新型無線機、アンテナ、付属品、運用飛行プログラムを導入している。ただし、現行機材は老朽化しており、VH-92が完全に配備されるまで現役でいられるように、運用寿命を4000時間延ばす耐用年数延長を行う。

海軍の予算要求では52.30百万ドルのうち16百万万ドルはMCSバージョン4.0とMCS5.0の組み込み、インストールツール、不備の修正の検証、陳腐化への対応に必要とある。海軍によると、その予算が得られないと、完全な運用能力は延期される。

「資金が増えないと、重大欠陥の修正と緊急サービス通信の強化が遅れるか実施できず、運用能力の完全実現は遅れる」と海軍予算書は述べている。「機体の即応性は、グローバルな通信能力と生存性への悪影響とともに、マイナスの影響を受ける。これで、全体的な機体性能とミッションの有効性が低下するだろう」。

「マリーンワン」の代名詞とも言えるVH-3Dは、最高司令官用の強力な指揮統制プラットフォームにもなる。NAVAIR

就航すれば、シコースキーの商用機S-92をベースにしたVH-92は、最も洗練された大統領専用ヘリコプターとなる。韓国の次期大統領のように、同型機を飛ばす国家元首は他にもいるが、各機は商用ヘリを改造したものだ。これに対しVH-92はアメリカの大統領や政府高官を運ぶため専用に製造されたもので、シコースキーがニューヨーク州オーゴで政府に代わり取り付ける、高度かつ機密の防御装備、生存能力、エイビオニクス、通信機器が満載だ。

海軍と海兵隊はVH-92の開発と統合に強気であったが、試験と評価の報告書で問題が指摘されてきた。MCSはともかく、2,500軸馬力のジェネラル・エレクトリックCT7-8Aエンジンは、テスト中にホワイトハウスの芝生を何度も焦がした。この問題を解消するためエンジン排気を改良する必要があり、トランプ政権時代に修正されたが、トランプは最高司令官として同機に搭乗できなかった。

VH-92Aが、ホワイトハウスとエアフォースワンが駐機するアンドリュース空軍基地、メリーランド州のキャンプ・デイビッド間のワシントンDC周辺を頻繁に移動する大統領を運ぶ準備ができたとWHMOが判断するのはいつになるかは不明だ。しかし、IOC宣言をしても、すべての通信機器が正常に作動する完全な運用能力がなければ、同機の運用には意味がない。海外訪問の際には、大統領が降り立つ場所には2機のヘリコプターが同行する。上空では、少なくとも2機で「シェルゲーム」とし、大統領を標的にする者を困難にする。

VH-92は訓練飛行で、ポトマック川沿いを飛行し、ホワイトハウスに着陸する姿が何度か目撃されている。2019年3月には2機が編隊飛行しているのが目撃され、その写真からは、機体に点在するさまざまな通信機器やアンテナを確認できた。

2021年8月にさかのぼるが、NAVAIRで航空対潜戦、強襲、特殊任務プログラムのプログラム執行を務める海兵隊グレッグ・マシエロ少将は、HMX-1は「今日から準備完了となった」と述べていた。つまり、使用には十分な機体がそろい。パイロットの訓練も十分で支援機材もある。

VH-92の初期能力を考えると、HMX-1に欠けているのは、WHMOが海兵隊に大統領搭乗を認める最重要のシステムだ。HMX-1は、重要でない他の人たちを輸送できても、コールサイン"マリーンワン"はまだつけられない。■

 

VH-92 Closer To Being 'Marine One' But Comms System Could Still Cause Delays

BY

DAN PARSONS

MAY 2, 2022 3:15 PM

THE WAR ZONE


コメント

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