トルコ製TB2無人機でロシア哨戒艇二隻を黒海海上で撃破したとウクライナ軍が発表。
黒海でロシア海軍ラプター級哨戒艇2隻が破壊される劇的な動画がネット上で共有されている。ウクライナ国防省が公開した映像には、2隻の爆発の中にウクライナが運用するトルコ製無人機「バイラクターTB2」が挟み込まれており、空爆の結果であるとしている。TB2無人機による艦艇の撃沈は、初めてだ。主張されているように、本日未明に2隻の艦船を破壊したのが、TB2ならば、それ自体が重要な出来事である。実戦で無人機が敵艦を沈めた記録はない。
映像はウクライナ国防省のソーシャルメディアに本日未明に投稿され、画像のタイムスタンプは、同日に撮影されたものを示している。同省によると、攻撃は夜明け直後、ウクライナ沿岸20マイルのスネーク島付近で行われた。ウクライナ国境警備隊が開戦時にロシアの降伏要求を拒否し、代わりにロシア海軍の巡洋艦モスクワに「ロシアの軍艦、くたばれ!」という、今では象徴的となった言葉を浴びせたのが同島だった。同事件は、その後、巡洋艦が沈没したことで、伝説に近い地位を得た。
黒海でスネーク島の位置を示す Google Earth
映像を独自に位置特定したところ、少なくとも1隻は同地域で破壊されたことが示唆されている。ウクライナ国防省やウクライナ軍が、流出映像に公式な承認印を押したのは今回が初めてではなく、TB2が関与したのもこれが初めてではない。
本日のウクライナ国防省によるツイートは、前回のスネーク島事件に言及し、ウクライナ軍総司令官ヴァレリー・ザルジニー大将Gen. Valery Zaluzhnyの言葉を引用している。「ウクライナのバイラクターTB2は、本日夜明けにロシアの巡視艇2隻を悲惨な目に合わせた。ヘビ島のヘビが新しい娯楽施設を手に入れた」
映像に映る巡視艇を、ウクライナ国防省は、プロジェクト03160ラプター級艦艇とし、高速沿岸艦艇で、スウェーデンのCB90級高速突撃艦と外観とコンセプトが非常に似ていると主張しているラプター級は最高速度が48ノットといわれるが、海上状態に大きく左右される。
全長約55フィートのラプター級は、特殊作戦や河川任務に適し、最大20人の兵士を輸送する。標準武装は、遠隔操作の14.5mmコルド重機関銃と7.62mm機関銃2丁で以前から攻撃作戦に使用されている。
プロジェクト03160ラプター級哨戒艇 Andrewrabbott/Wikimedia Commons
TB2はウクライナ戦争を象徴する武器になり、プロパガンダ工作でその存在が浮き彫りになっている。哨戒艇破壊の映像は、TB2の電気光学センサーの情報と一致するように見える。ただし、この事件でTB2の使用を別個に検証できず、他のプラットフォームが実行した可能性は否定できない。
TB2は、トルコ製小型レーザー誘導爆弾MAMシリーズで武装し、映像では主翼下に同爆弾が見られるが、ストック映像の可能性が非常に高い。
ウクライナには2019年に納入が始まったが、現在何機のTB2が空軍と海軍で運用されているかは不明だ。これまでの戦闘で消耗が激しく、ロシア側はTB2の撃墜を盛んに主張しており、少なくとも7機の破壊が確認されている。
また、ウクライナは海岸から発射した対戦車ミサイルでラプター級の撃破に成功したと主張していたが、当該艦艇の撃沈は確認されていない。
一方、ロシア海軍のスラバ級巡洋艦モスクワは、国産の対艦巡航ミサイル「ネプチューン」で撃沈したとウクライナ軍と米国防当局が発表した。しかし、同艦沈没の正確な経緯は不明なままだ。また、TB2が同艦の追尾や照準情報の提供などに関与していたとの未確認情報もある。しかし、スネーク島付近でTB2が活動し、ターゲットを攻撃した事実は、同機がモスクワ事件に関与した可能性を示唆している。同様に、ロシア=ウクライナ国境地帯で報告されている攻撃でTB2が使用されている可能性もある。
また、アゾフ海のロシア占領下のベルジャンスク港で炎上したロシア海軍のプロジェクト1171リゲーター級揚陸艦サラトフ(当初はオルスクと報道)の破壊にTB2が使用された可能性が指摘されている。これも証拠はなく、偶発的な火災の犠牲となった可能性が高いように見える。
ロシアの哨戒艦2隻がどのように撃沈されたかの詳細はともかく、モスクワと同様に今回の損失はウクライナにとって重要なプロパガンダと士気高揚の効果がある。今回の事件は、黒海におけるロシアの海軍活動がウクライナに脅かされる可能性を改めて明らかにしただけでなく、攻撃がスネーク島付近で行われた事実も重要だ。
最後に、ラプター級巡視艇は空爆に対応する装備は備えていないが、TB2が黒海で攻撃した能力は、ロシアが懸念すべきもので、モスクワの防空能力を失い悪化したはずのギャップを示唆する。スネーク島にも、短距離ミサイルや対空砲など地上防空装備を設置しているはずだが、ウクライナは最近、砲撃で少なくとも一部を破壊したと主張している。
つまるところ、ラプターのような防空能力が限られた小型水上戦闘艦艇を安全に運用するためには、友軍の制空権確保が必要だと示している。また、海軍環境における武装無人装備の拡散と、それが各種艦艇にもたらす脅威も示している。本日の事件の詳細が明らかになるのを待つが、沿岸域での海軍作戦で、高性能の対ドローン防衛装備の開発投入の緊急性が高まるのは避けられない。■
Ukraine Claims TB2 Drones Sunk Russian Patrol Boats Off Snake Island (Updated)
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MAY 2, 2022 1:05 PM
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