スキップしてメイン コンテンツに移動

バイデン発言は台湾政策を一変させるのか 文脈に隠れた日本の役割にも注目

 

ョー・バイデン大統領は、台湾の地位に対する米国の曖昧政策に終止符を打ったのだろうか。5月23日月曜日、日本訪問中のバイデン大統領は記者会見で、台湾が中国から攻撃された場合、米国は台湾の防衛に乗り出すと述べた。その後、バイデンは自分の立場を繰り返した。スタッフは発言を撤回しようと強引な手段に出たが、結果として、米国は久しぶりに、中国から台湾を防衛する意向を公に表明したのだ。

バイデン発言は、米国が台湾を軍事防衛することに関して、数十年にわたる「曖昧さ」政策の多くを消し去った。これまでの米国は、中国による台湾への攻撃を抑止すると同時に、台湾が中国本土から独立を宣言することを抑止するため、曖昧政策を採用してきた。曖昧さにより、両岸紛争の政治的側面を凍結し、米国が両岸と生産的な経済・政治関係を築くことが可能になり、台北と北京が平和的に折り合いをつけてきた。

では、何が変わったのか。ジョー・バイデンは中国についてタカ派ではなく、米国の著名政治家として、同政策の論理を認識しているのは確かなはずだ。

可能性が数点思い浮かぶ。第一に、中国の海・空軍力の増大により、米国は台湾の地位について立場を明確に表明せざるを得なくなった。中国が台湾を占領したくもできなかった時代には曖昧さが許容されたが、強力になった中国にはもっと明確な抑止力が必要だ。

第二に、米中関係はこの15年間で全体として悪化しており、オバマ政権時代は緩やかに、トランプ政権時代は急速に悪化した。バイデン政権は悪化を止めていない。

第三に、バイデン政権は、ロシアのウクライナ侵攻が、攻撃的な領土征服に関する長年の規範を侵したと考えているのか。

最後に、中国が侵攻に踏み切ったロシアから間違った教訓を学んでいるとバイデンは考えているのか。米国はウクライナを何とか存続させているものの、ロシアの戦略核戦力への懸念からか、直接介入は控えている。

こうしてみると、「曖昧性」の終わりは、過大に決定されたようだ。トランプ政権では、大統領が台湾防衛に肯定的と思われる場面が何度かあった。米台の軍事関係は近年濃くなっており、防衛支援の下地ができた可能性がある。

にもかかわらず、バイデンの決断は多くの人を驚かせた。同様に驚かされたのは、台湾の政治的防衛に日本を関与させるかの文脈だった。 バイデン発言を撤回させようとしたスタッフの努力は、バイデンの明瞭さにもかかわらず、曖昧さをある程度保持する狙いの可能性がある。

バイデン発言はどんな影響を与えるのだろうか。 中国の反応は冷静とはいえない。 米アナリストは、軍事支援の約束は、強制的な懲罰から海・空域の拒否、台湾への米軍の事前配置まで、非常に多くの内容を意味しうると指摘し、声明を分析している。バイデン発言には、米国がウクライナに注力するあまり、中国の侵攻を抑止・撃退できないのではとの懸念を静めるねらいがあるのは確かだ。しかし、中国が今すぐ侵略を計画している証拠は乏しい。 中期的には、中国がロシアを支援する姿勢を再確認するかもしれないが、これまで中国は外交的・経済的な支援にとどめてきた。中国が侵攻すれば、米国は必ず介入してくるというのが、両岸バランスを分析する大方の見方であったのは確かだ。

これは分岐点かもしれない。以前の米国は核巡航ミサイルを台湾に配備するなど、台湾防衛に贅沢な手段をとってきた。冷戦中には北京と生産的な政治関係を、冷戦後には経済関係を築きたいとの願望が、それまでの台湾向けコミットメントの継続を不可能にした。

地政学の状況が流動的で、経済関係も危うい今、変化の時を迎えている。そう遠くない将来、米国が台湾を負債ではなく、軍事的資産ととらえ、中国の近海支配を脅かす前方位置と考えるように至っても、決して驚くべきことではない。■

Joe Biden's Taiwan Declaration: A Real Game-Changer or Not? - 19FortyFive

ByRobert Farley

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Robert Farley is a Senior Lecturer at the Patterson School at the University of Kentucky. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020).


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...