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F-15EXの調達が大幅縮小される可能性。米空軍が考える戦力構造でイーグルIIが微妙になってきたのか。F-35調達のため犠牲になるのか。

 

F-15EX missile shot

 

 

空軍は、新型戦闘機F-15EXイーグルIIをわずか80機購入後にキャンセルする選択肢を検討している。F-15EXのキャンセルは、F-35Aステルス戦闘機にとって朗報となるだろう。

 

 

 2023会計年度の予算要求で、空軍は当初、老朽化したF-15C/Dイーグルの代替分と、F-15Eストライクイーグルの代替で少なくとも144機を購入するとしていたが、その後、F-15EX全体の購入見込みを80機に引き下げた。この新計画が実行された場合、最後のイーグルIIは2024会計年度に購入されることになる。

 

第40飛行試験隊に配属されたF-15EXがAIM-120Dミサイル発射の準備に入った。フロリダ州ティンダルAFBの付近。January 2022. U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. John Raven

 

 空軍がF-15EXの購入規模の削減を検討しているのではないかとの指摘が先月末にあった。Breaking DefenseのValerie Insinnaは、「この問題に詳しい情報筋2人の」が、フランク・ケンドールFrank Kendall空軍長官がF-15EXキャンセルを検討するよう予算部門に命じたことを確認したと報じた。

 しかし、短期的にはF-15EXは安泰だ。23年度の予算要求では、F-35Aの調達は2022年度の48機から33機へ削減される。同時に、最新の予算案ではF-15EXを24機、総額14億ドル相当で計上している。2022会計年度要求の前回予算では、12機のイーグルIIを対象としていた。

 今回の計画は、この80機を購入した後にF-15EXを単に受注帳簿から抹消するよりも、いくらか複雑だ。その代わりに、情報筋によると、イーグルIIの取得数は短期的に増加し、より高性能で深く更新されたブロック4構成のF-35Aをより多く購入するために、時期尚早に終了するだろう。

 

ネリス空軍基地を離陸するF-15Cイーグル U.S. Air Force photo

 

 計画では、F-15C/Dを5年程度で代替させ、その後、F-35Aに焦点を戻す。

 現在、国防総省はロッキード・マーチンとF-35の次回生産ロットを協議中であり、約400機の生産が見込まれる。ブロック4更新が遅れているため、米国のF-35A調達率は、現時点では減速を余儀なくされている。

 現時点で、F-15EXの発注上限を80機とすることは、単なる提案に過ぎないことを指摘しておく。国防予算の編成過程で、議会が承認する必要がある。議会だけでなく、空軍や国防総省内のイーグルII支持者、産業界が厳しく反対するのは間違いない。

 また、縮小されたF-15EXをどのように空軍に統合するかという現実的な問題もある。その結果次第では、イーグルIIの配備計画に大きな変更が生じないはずがない。

 現在は、フロリダ州のエグリン空軍基地でF-15EXのテストが行われている。2024年度には、キングスレーフィールドを拠点とする米国唯一のF-15C/D訓練部隊オレゴン州軍航空隊第173戦闘航空団に機体が引き渡される。翌2025年度には、同じくオレゴン州空軍の第142戦闘航空団(ポートランド空軍州兵基地)が最初の作戦部隊として同機を飛行させる。

 国土防衛任務の93%を担う州軍航空隊はF-15C/DをすべてF-15EXかF-35Aで再編成する予想があったが、機種別のバランスはまだ公表されていない。

 現役部隊(AC)の各戦闘機隊は約24機の主要配備機(PAA)を持つが、州軍飛行隊は約18機と少ない。後者が現在は、F-15C/Dの主要なオペレーターである。仮にF-15EXを80機導入した場合、18機のPAAと3機の予備機を持ってしても、4個飛行隊の装備はできない。さらに訓練用を加えると、実戦配備はせいぜい3個飛行隊で、それさえも苦しくなる。

 州軍航空隊は、新型のEXは老朽化したC/D型よりはるかに信頼性が高いという正当な理由により、飛行隊の規模を縮小することは可能だが、それでは数機程度の差にしかならないだろう。また、これらの飛行隊が担当する国土防衛の任務を考えると、それは問題かもしれない。

 ヨーロッパのレイケンヒース空軍基地では、第48戦闘航空団の1個飛行隊がすでにF-15C/DからF-35Aへのコンバートを進めている。フロリダ州軍の第125戦闘航空団も、F-15C/DイーグルをF-35Aへ変更する予定だ。

 それでも、沖縄・嘉手納基地の太平洋空軍第18飛行隊が2個飛行隊、マサチューセッツ州軍航空隊第104戦闘航空団、カリフォルニア州軍航空隊第144戦闘航空団、ルイジアナ州軍航空隊第159戦闘航空団が各1個飛行隊でF-15C/Dを飛ばしていることに変わりはない。これに加えて、オレゴン州の第173戦闘航空団と第142戦闘航空団がある。F-15EXが80機のみで、オレゴン州の2つのANG部隊以外に、1ないし2部隊にしか配備されないと、不足となる。

 嘉手納基地については、太平洋空軍のトップであるケネス・ウィルスバック大将Gen. Kenneth Wilsbachによって、戦略的に重要な基地はすでにF-15EXの優先受領地としてマークされている。ウィルズバック大将は、沖縄基地で運用中のF-15C/Dの2個飛行隊をイーグルIIに置き換えてほしいと述べた。

「もし幸運にもF-15C/Dの交替機材が沖縄に配備されれば、制空権と長距離攻撃用に使用するつもりだ」とウィルスバック大将は3月のミッチェル航空宇宙研究所のイベントで説明した。

 実際、空軍のF-15EXが80機だと、F-15C/Dを一対一で置き換えるのではなく、イーグルIIはより専門的な部隊から配備を始めることが考えられる。

これは空軍関係者も言及しはじめている。

 空軍の計画・プログラム担当副参謀長であるデビッド・S・ネイホム中将 Lt. Gen. David S. Nahomは、『エアフォース・マガジン』取材で、F-15EXは、F-15Eと「同様の武器を搭載し」「かなり同等」の使われ方になると予想していると語った。このことは、F-15C/Dとは異なり、イーグルIIが空対地指向に傾いた任務設定であることを示唆している。

 

F-15EXがエグリンAFBに届けられたのを記念し、その他型のF-15が一緒に飛んだ (Credit: USAF)

 

 さらに、ネイホム中将はF-15EXの「第5世代機では搭載できない大型兵器を搭載できる」能力を話しており、これが同機導入で長年の主張だった。このことは、F-35Aステルス戦闘機の内部武器庫に収まらず、主翼下に搭載できない大型空対空武器、あるいは極超音速武器を含む大型兵器をF-15EXに搭載すると空軍が想定しているのを示唆している。

 ネイホム中将はF-15EXの航続距離と武器搭載量の利点について、航空優勢が確保できた地域での長時間防空任務という文脈で論じている。しかし、ネイホム中将は「F-15EXを大量保有する必要はない」と断言した。そして、「現行の予算では大規模調達を目指すことはないだろう」とも述べた。

 さらに紛らわしいのは、州軍のF-15C/D部隊は前述のように国土防衛を担っており、訓練や人員、24時間態勢で待機する機材などの点で資源を多く消費していることだ。通常、少なくとも3〜4機が任務のために待機している。また、多くの機体が重整備を受けることを考えると、飛行隊で使用可能な機体数は、正式に割り当てられた18機と予備機3機より少なくなることがおわかりいただけるだろう。

 もうひとつの要因は、次世代航空優勢(NGAD)である。2023会計年度予算案で空軍は1650百万万ドル予算を要求したが、これは2022会計年度の要求額より約133百万ドルも多い。NGADは従来型戦闘機を超える性能の機体になるが、今後数十年間は幅広い「システム・オブ・システムズ」アプローチにより、空軍の戦術的な制空権能力の先頭に立つことが期待される。このことを考えると、F-15EXの調達数を減らして戦術機の基幹をF-35Aに集中させてからNGADを実戦化するのは、空軍には賭けであるように思われる。議会はすでにこの構想の合理性を疑問視していている。

 この計画では、国土防衛任務には対応できない。ステルス性能を必要としない、高コストで動く「絶妙な」第5、第6世代の航空機をその仕事に使うことが、アメリカ空軍が本当に望むルートでない限り、だ。また、これは大型兵器運用の課題を解決するものではない。NGADプログラムの一環で開発中の主要なプラットフォームをスタンドオフ兵器の運搬に使用することは、非常に逆効果になる。

 予算の選択肢について語ったケンドール空軍長官は、次のように説明した。「次世代航空優勢プラットフォームへの完全な資金提供が必要だった。F-15EX購入を完了させたかったが、まだ2年残っている」。

 資金獲得競争では、F-15EXやF-35A以外に、新型ステルス爆撃機B-21レイダー、次世代無人システム、核戦力整備計画など、莫大な費用がかかる取り組みが主なライバルとなる。

 また、F-15EXの最終的な機体数は未定であり、前回発表の144機を維持する可能性もある。イーグルIIが輸出市場でどう評価されるかも要因のひとつであり、海外オペレーターを満足させるため生産期間が長くなれば、空軍にF-15EXの数をさらに増やす機会を与えることになりかねない。

 空軍にとって、わずか80機の生産は、特に専用の教育課程や試験・開発企業などを必要とする点で、手間に見合わない規模の部隊を作ることになる。少なくとも、残るF-15C/Dの空軍州兵部隊と教育隊、合計5個飛行隊を装備することは、プログラムにとって常に「臨界量」に思われる。沖縄の2個飛行隊を加えれば、7飛行隊になる。

 

ネリスAFBでテストを受けるF-15EX (Credit: USAF)

 

 戦略性の高いハワイ諸島を守る州軍任務にF-15EXはF-22より適している。しかし、そうすることで、国土防衛任務に非常に長い時間(多くの戦闘機の機体寿命が6000〜8000時間であるのに対し、F-15EXは2万時間)の解決策を提供することにもなる。F-15EXは信頼性、飛行時間あたりのコスト、機体年齢、供用期間の両面から、アメリカ空軍の戦闘機部隊に安定性を注入する手段として考えられていた。

 また、中高齢になったF-15Eの問題もある。F-15E後継機としてF-15EXを数百機購入し、F-15Eを州軍飛行隊に装備することは意味があるだろうか。これはまだ公に議論されていないが、非常に論理的な選択肢のように思われる。

 中でも奇妙なのは、小数の航空機運用を嘆いてきた空軍が、財政と戦力構成のデフォルト戦略として、このコンセプトを最近採用したことである。B-1Bは縮小され、F-22は縮小を要請され、A-10も縮小される。この結果、比較的少額の資金が他事業に回され、残る機材を一定期間支援するための予備部品庫として機能するかもしれないが、これらの機体の投資収益率が急落し、利用可能な潜在的戦闘機数が制限されることになる。空軍は現在、旧型機多数でこれを行おうとしており、F-15EXがこの現実の中で直接生まれようとしていることは、それほど驚くべきことではないのかもしれない。その結果、この機種を維持することに意味があるのか?

 結局のところ、その問いを強要することが、空軍の真のねらいなのかもしれない。■

 

The F-15EX Program Is In Trouble | The Drive

 

The Air Force is looking to reduce the size of its F-15EX buy to the point that it is likely to be more trouble than it’s worth.

BY

THOMAS NEWDICK,TYLER ROGOWAY

APR 26, 2022 4:33 PM

THE WAR ZONE


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