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ハイテク装備の兵士への電源確保で米陸軍が民間企業と知恵を絞る。熱電能技術が最有力か。

 

 

iStock, Defense Dept. photo-illustration

 

陸軍では、兵士の体熱や、燃料など、各種ソースからエナジーを確保し、移動中の兵士に電力供給する新技術を検討中だ。

 

 

 将来の兵士はハイテク機器をさらに多く携帯すると陸軍は想定している。

 同時に、陸軍は大規模物流拠点から、分散編成への移行を進めている。将来戦司令部Army Futures Commandがまとめた陸軍の作戦エナジー戦略のディレクター、ジョン・ヴィラセナー中佐Lt. Col. Jon Villasenorは、次のように述べている。

「潜在的なライバルが開発中の戦力を考え、陸軍は大規模集団を解体し、破壊されやすい大型装備は非固定化する必要がある」「分解すると、近代化が必要な事項がたくさん出てくる」

 兵士への電力供給は、2022年末に発表される予定の作戦エナジー戦略で扱われ、効率的で多様かつ持続可能な電源で軍の電力利用を最適化する追加行動とともに発表すると中佐は述べた。

 一方、産業界では、次世代のエナジーハーベストと発電方法で前進が続いている。企業は国防総省と協力し、技術を成熟させ、最前線で有用な製品に仕上げようとている。

 今年4月にテキサス州オースティンで開催された陸軍の VERTEX Energy カンファレンスに産業界が集まり、兵士の電力確保に取り組む軍のリーダーと革新的技術を話し合った。

 陸軍にとって潜在的な機会の1つが熱電能thermoelectric powerだ。シリコンバレーに拠点を置くメイトリックスインダストリーズMATRIX Industriesの最高技術責任者ダグラス・タムDouglas Thamは、以下説明した。

 「熱電能は2点間の温度差を電気に変換するもの。M1エイブラムス戦車のエンジンや兵士の皮膚など、温かいものの上に発電機を置くと、電子がデバイスの高温側から低温側へ移動し電流が発生します」。

 同社は、微小な温度差を利用して熱エナジーとパワーエレクトロニクスの技術を開発してきた。

 「当社の目標は、最新かつ最高のセンサー技術と低消費電力のアルゴリズムで、微小なエナジーハーベスティングでも維持できるまで消費電力を下げることです」。

 この技術は、電源として使用されるバッテリーの寿命を向上させたい陸軍の取り組みを後押しする。ヴィラセナー中佐は、「兵士は平均して、任務中にバッテリー5〜8種類を携帯している」と述べている。

 「長時間作戦のため冗長性で、大量のバッテリーを持ち運ぶので、重量も相当のものになります」と、中佐が付け加えた。陸軍プレスリリースによれば、72時間任務の場合、兵士はバッテリー20ポンドを携帯する。

 しかし、陸軍が熱電能を使用し兵士の体温のような連続的な熱源からエナジーを採取できれば、「電池を廃止するか、電池を小さくし実質的にコンデンサとして、消費量上昇を抑えることが可能になります」(タム)。

 この技術は商用化済みで、同社は陸海空軍と協力し、戦闘員にも使えるようにしたいと、とタムは述べた。

 しかし、戦場での実用化には、越えるべきハードルがまだあると、テキサス州オースティンのナノーミクスNanohmicsの上級科学者ジリ・ジョシGiri Joshiは言う。

「課題は、体温と外気温に大きなギャップですが、皮膚は導電性ではないのです」とジョシは説明。そのため、ウェアラブルデバイスで、十分な電力を生み出す温度差はほぼ実現しないという。

 もうひとつの問題は、ウェアラブル熱電能の効率だ。将来の作戦環境では、兵士は、通信システム、暗視装置、武器、状況認識用のNett Warriorシステム、次期Integrated Visual Augmentation Systemなど、継続的に電源が必要な電子機器に依存する可能性が高い。

 「現在の兵士の消費電力は5ワット未満です」とテキサス州オースティンに本社を置くパラサンティParasantiの最高技術責任者ジョシュ・シーグローブスJosh Seagrovesは、「これでも数百のセンサーで洞察を引き出せます」と述べた。また次世代デバイスの消費電力の削減も進んできたと指摘する。

 ウェアラブルデバイスの効率を最大化すれば、兵士1人で約100ワット収穫できる。しかし、まだそこまで達していない、とジョシは述べた。

 タムもジョシの見解に賛同し、効率が100ワットに近づくことはないと指摘した。

 そこでメイトリックスでは、エナジーハーベスティングに使用するセンサーシステムをマイクロワットやミリワットの消費電力に凝縮したという。

 ジョシは、熱電能をウェアラブル電源にするには、システムレベルのエンジニアリングにとどまらず、より多くの研究が必要と述べた。

 「熱電技術は成熟技術です。唯一、研究されていないのは、ベストなシステム設計方法です」。

 テキサス州オースチンのハイブリッドエナジー供給会社ステルス・パワーStealth Powerの最高執行責任者シャノン・センテルShannon Sentellは、ナノスコピックレベルでデバイスのエンジニアリング材料に取り組めば、熱電能の効率が向上すると語った。

 「今後飛躍できるのはそこだろう」「2つの材料間の温度差を改善できれば、装置間から引き出せる熱流の量が増える」。

 メイトリックスは、エナジーハーベスティング技術を利用し、表土の昼夜の温度変化の検出も行う。温度差で生成される電力は、侵入者や動物、車両の振動を検知する無人遠隔監視システム用電源に利用できる、とタムは述べた。

 ウェアラブルと同様に、熱電能発電機を使えば、監視システムの電力をまかなうことができ、兵士が移動しバッテリーを交換する必要がなくなると、付け加えた。

 ジョシは、熱電デバイスは局所的な自律型センサー電源にも使用できるが、温度勾配の変動を補正するためバッテリーがやはり必要かもしれないと付け加えた。それでも、電池寿命はずっと延びるだろう、と付け加えた。

 ウェアラブルサーモエレクトリック技術が成熟する一方で、他の産業界では、陸軍物流チェーンにある燃料源を使用して、部隊に電力を提供することに注力している。

 マサチューセッツ州に拠点を置くメソダインMesodyneの最高経営責任者ヴェロニカ・ステルマクVeronika Stelmakhによれば、陸軍は兵士向け電力を拡大するソリューションを検討してきたという。

 メソダインでは、光が放出する熱を電気に変換する熱光起電力技術を活用し、ライトセルLightCellと称する小型の携帯発電機を開発した。

 ライトセルは、あらゆる種類の燃料を使い、材料を加熱し、発光させる。そして、発せられる光を電気変換する。

 兵士の携帯装備や無人飛行機、水上船舶などの小型システムに使う標準バッテリーの10倍以上のエナジー密度が得られると言う。

 非常に軽量で水筒ほどの大きさのライトセルは、兵士の負担を軽減するとステルマクは述べた。

 また、ライトセルは、米軍で広く使われるJP8燃料を含む、あらゆる燃料を使いエナジー変換プロセスを開始できる。ステルマクは、戦場にある燃料を使用できることは大きな利点だと語った。

 同社は陸軍から資金援助を受け、さらに研究開発のために空軍、国防高等研究計画局、エナジー省、国立科学財団から500万ドル以上の助成金を受け取っている。

 ステルマクによると、大手防衛関連企業と提携し、ライトセルを戦闘員に実用装備にする作業を続けている。最大の関心事は、変換プロセスが発生する熱を減らすことだ。

 同様に、モダンエレクトロニクスModern Electronicsでは、熱電子変換器と呼ぶデバイスを開発している。この装置も燃料を使い発電するが、光でなく熱で発電する、と最高技術責任者マックス・マンキンMax Mankinは言う。

 「この熱電変換デバイスは、高温であれば燃料ならなんでも熱を受け取り、小さな箱に入れて持ち運び、バッテリー充電や遠隔地の機器用電源に使用するなど、何でもできると考えています」と、マンキンは述べた。

 同社は、作動温度を下げ、電力密度と効率を上げようと取り組んでいる。

 しかし、防衛分野参入を目指すモダンエレクトリックにとって、コンバーターの主要材料の供給制限が大きな課題だとマンキンは述べた。

 「バッテリー製造インフラと鉱物処理インフラの大部分は米国外にあります」「部品のほとんどは、コスト効率よく作ろうとすれば加工作業を海外で展開しなければならないのです」。

 タムは、サプライチェーン問題が開発に深刻な問題を引き起こす可能性、また、主要な供給拠点が中国である以上、海外サプライヤーに代わる対策を考え出すのは難しいと同意した。

 解決策の1つは、主要材料の海外生産は継続しつつ、製品の最終組立を米国に移すことだという。

 「最終組立を国内に持ってくれば、コントロールが可能になります」。

 エナジーハーベスティング技術と発電をすぐにでも陸軍が利用できるわけではないが、タムは、現在の電池の限界と陸軍が将来望む水準について、業界とオープンな対話を続けるよう陸軍に勧めた。

 「産業界が陸軍の目となり耳となり、業界の商業的な道筋と陸軍の長期的な目標とに関連性や重複を見出す手助けをさせてほしい」「民生技術の体系と陸軍の技術体系を結びつける道筋が見つかれば、Win-Winになると思います」。■

 

Army Exploring New Tech to Charge Up Troops on the Go

5/27/2022

By Mikayla Easley

 

 

Topics: Energy, Army News



コメント:新興企業でも弱小企業でも光るものを持っている相手にはへだてなく接する米軍の姿勢が見える気がします。翻って日本では過去の不正のため、入札にこだわり、門を狭めていませんか。また、技術への評価という点でも文系、理系とわけてしまっていることが不利ではないでしょうか。もっといえば、防衛費増額は結構なことですが、研究開発助成金はどこまで拡充されるのでしょう。軍事研究はお断りと公言する学術会議に見られる軍事アレルギーがある限りは難しいのでしょうか。国際情勢の変化にあわせ、国民の意識が変化しつつある今、「平和の砦」の観念に囚われた勢力が障害になりそうです。


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