MAXAR TECHNOLOGIES
ウクライナ戦で宇宙空間からの情報収集の有益性が実証され、商用サービスが効果を上げている
ロシアがウクライナで敗北するとしたら、衛星画像が決め手となる。ロシア軍の動向を示す画像は、防衛を強化し、ロシアの虚偽や戦争犯罪を暴露し、ウクライナ側の同盟国を活気づけている。しかし、宇宙から得る情報が最近爆発的に増えているため、産業界や軍関係者には、敵勢力が衛星を攻撃する能力を高めているとの懸念が増えている。
画像が信頼度を高め、指導者は侵攻の警告を発出できるようになった。侵攻後は、米国や欧州の政策立案者は、ロシア制裁の裏付けに衛星画像を活用している。
プラネットの共同設立者でCSOのロビー・シングラーRobbie Schinglerは、次のようにDefense Oneに語っている。「今目にしている戦争では新しいテクノロジーが意思決定の様相を変えています」「単に『信じろ、これが起こっていることだ』といえなくなりました。誰でも見られるのです。世界各地のリーダーたちが重要なときに一致団結しての行動が可能になった」と述べている。
映像は大企業の行動も変えた。
「法律と関係なく一方的に、各社がロシアビジネスから撤退を選択したことが特徴的」(シングラー)。
軍事衛星画像が機密扱いが大半なのと異なり、民間プロバイダーには好きなものを公開する自由がある。
マクサーMaxarの執行副社長兼公共部門アースインテリジェンス担当ゼネラルマネージャー、トニー・フレイジャー Tony Frazier は、GEOINT会議で、「商用画像の公開が重要な特徴」と述べた。
国防次官(情報担当)のロバート・モーリーRobert Moultrieは、「衛星画像を共有し、協議でき、バイデン政権はロシアの意図と行動の分析結果を迅速に機密解除できた」と述べている。「決断は、最高司令官の大統領が行ったが、流れを変えた」。
米国の情報機関は新時代に突入し、公開情報を重視し、特にロシアと中国について、米国政府が見ているのと同じ内容を一般も見られるようになった。モーリー次官は、差し迫る侵略を警告した米国の取り組みは「ケーススタディになった」とし、「将来への道を開いた」と述べた。
軍の指導者には、もっと早い行動を望む者もいる。米軍特殊作戦司令部司令のリチャード・クラーク大将Gen. Richard Clarkは、情報多数が機密扱いのままなのは国家安全保障関連部門が反射的に機密扱いしているためだと指摘した。
「ウクライナ紛争から、もっと効果的に行動する必要を学べる。しかし、状況はそれぞれ異なる。国として、政府として、守らなければならないこと、守るべきことがある」「とはいえ、機密解除や公表を重視すべきだ」(クラーク大将)。
しかし、機密扱いを解除し、衛星画像を広く利用できるようになったことで、新しい課題も出てきた。関係者は、人工知能や高周波データなど、宇宙で収集された新しい情報で、新しい優位性が生まれると期待している。
フレージャーは、マクサーが陸軍第82空挺部隊と共同で行っているスカーレット・ドラゴン・イベント活動を紹介した。戦場の部隊に画像を10分の1の時間で送る方法を学んだという。
同社は衛星を増設しており、「30〜50センチメートルという非常に高い解像度で画像を収集し続け、さらに重要な各地での撮影を劇的に増加させる」と述べている。アジアの多くを含む熱帯と極圏の間の中緯度地域では、「1日最大15回まで収集する能力があり、他の情報源と組み合わせ持続性を確保できる」(フレイジャー)。
これから数年間で、衛星データが爆発的に増加する予想がある。例えば、GPSで自位置を発信する部隊の暗号化されていない無線通信がある。GEOINT会議では、無線信号収集を専門とする衛星会社 HawkEye 360のミッションアナリスト、アニー・グラッシーAnnie Glassieが、AIS受信機をオフにした船舶を識別する方法を紹介した。
同社の最高戦略責任者カリ・A・ビンゲンKari A. Bingenは、「電子戦、指標、発信源、GPSレーダーの妨害、その他が探知可能で、率直に言って、ロシア軍がどこにいて、どこに移動するかの先行指標となる」と語っている。
人工知能が衛星画像と新データを組み合わせて価値を高めている。ウクライナ国境付近での米欧州司令部の活動もその一例、と衛星画像会社のある幹部は言う。
「商業画像の役割、データにAIの機械学習能力、そして3Dが、任務のサポートに大きな役割を果たすフィードバックを得た」と、同幹部は述べ、作戦に関連するため匿名とした。
しかし、世界が自国の軍事編成を追跡できなかった時代に戻りたがる敵国にとって、商業情報衛星が重要なターゲットになると政府関係者や産業界は懸念を強めている。
「中国とロシアの軍事ドクトリンは、現代戦で宇宙を不可欠と捉えています」と、米宇宙軍最高作戦責任者チャンス・ソルツマン中将 Lt. Gen. Chance Saltzmanは述べた。「我々は、対衛星ミサイル実験で発生した破壊的な破片、(電波)干渉、地上宇宙ノードへのサイバー攻撃、投射物発射など挑発的な軌道上の対衛星攻撃実験を目にしてきた。彼らは米国の政府衛星や商業衛星を標的とする高度方法を開発している」。
衛星が攻撃されたのか、それとも単に作動しなくなっただけなのか、判別は難しいとソルツマン中将は述べ、このため宇宙からの攻撃は、戦術、作戦、予算面で独自のミッションであるべき理由の1つだという。
例えば、衛星への指向性エナジー攻撃は、ほんの数秒しか作動しないので、正確な場所を見る必要があります。軌道上や近接した場所での活動では、帰属の把握が難しく、リアルタイム評価も難しいかもしれません。目撃者がいないなかで、実行犯を特定するのは難しいのです」。
業界幹部は、政府は民間資産の保護で衛星会社と話し合いを持ち始めていると述べた。
「今回の事態は、画像通信や各種サービス用のアーキテクチャで業界の重要性を浮き彫りにしました」「その結果、アーキテクチャにどんなリスクがあるのかを明らかにし、そのリスクを軽減するため何が必要なのか、と把握する必要があります」
同幹部は政府は、紛争で損傷を受けた民間衛星を迅速に交換する方法も話題にし始めた、と言う。しかし、議論の結果が出るのは、先の話だ。■
As Satellite Images Reshape Conflict, Worries Mount About Keeping Them Safe - Defense One
Radio data collected from space is the next frontier.
TECHNOLOGY EDITOR
APRIL 28, 2022
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。