スキップしてメイン コンテンツに移動

オーストラリア政権交代でも対中対応、安全保障関連政策に大きな変化なし。価値観を共有している政党間なら政権交代も安心ですが、日本は?

 Prime Minister Anthony Albanese Departs Australia To Attend QUAD Leaders’ Meeting In Japan

2022年5月23日、オーストラリア・キャンベラで、日本に出発するアンソニー・アルバネーゼ首相。隣は新任のペニー・ウォン外相(David Gray/Getty Images)



アンソニー・アルバネーゼ Anthony Albanese首相は宣誓式で、「私が言ってきたこと、そして今も変わらず主張していることは、対中関係は今後も難しいということだ」と述べた。「変わったのは中国であり、オーストラリアではない」。




ーストラリアの連邦選挙で労働党が歴史的勝利を収めたが、興奮した政治オブザーバー陣は、「ティールズ」(無所属候補)が何議席を獲得したか、労働党が過半数割れの76議席にどれだけ近づいたかについて、正確に調べ上げている。



 しかし、「防衛」は争点にならなかった。おそらく、国家安全保障で新政権による変化は微小とのコンセンサスがあるためだろう。

 今のところ、防衛大臣が誰になるかは不明だ。元通産相で影の国防相リチャード・マールズRichard Marlesが有力との噂がある。マールズは副首相兼雇用相に就任したが、今後の状況次第では、副首相から国防相に鞍替えする可能性もある。

 また、勝利したオーストラリア労働党の左派勢力である緑の党が政権に参加するかも不明で、アンソニー・アルバネーゼ新首相の防衛費編成に影響を与える可能性が残る。

 はっきりしているのは、労働党とアルバネーゼ新政権は、AUKUS防衛協定と攻撃型原子力潜水艦を全面支持し、中国に厳しい姿勢をとり、戦力態勢の見直しに取り組むことだ。

 アルバネーゼは、就任式からクアッドサミットで日本に駆けつけ、ジョー・バイデン米国大統領との関係を強調し、「昨夜電話を受け、バイデン大統領と面識を新たにし、非常に有意義で前向きな会話をしました」「米国との関係は、地域内関係や多国間のコミットメントと同様に、最も重要なものである」と述べている

 エリザベス女王の代理人であるオーストラリア総督による宣誓式で、アルバネーゼは、選挙干渉を行い、オーストラリア製品に禁輸措置を講じ、オーストラリアを公然と非難している中国について質問を受けた。中国はオーストラリアにとって最大の貿易相手国でもある。

「中国との関係は今後も困難になると、私は申し上げてきましたし、今もそう考えています。変化したのは中国であり、オーストラリアではない。そして、オーストラリアは常に自らの価値観を守るために立ち上がるべきだ」と述べた。「私は首相として、そして外務大臣であるペニー・ウォン上院議員Senator [Penny] Wongは、オーストラリアの国益を最優先し、オーストラリアの価値観を最優先します」。

 国防政策や国防費に根本的な変化はほとんどなさそうだと外部観測筋は見ている。

 「両党の政策の間に大差はない」と語るのは、国防政策と予算の専門家であるマーカス・ヘリヤーMarcus Hellyer(オーストラリア戦略政策研究所、政府の資金提供が主だが独立性で知られるシンクタンク)だ。

 米外交筋に今回の選挙結果についてどう説明するかとの質問に対しては、労働党はオーストラリア、ニュージーランド、アメリカの間のANZUS同盟とAUKUS協定に完全にコミットすると答えた。ヘリヤーは、白書の一歩手前である軍備構造見直しでは、前例に倣えば、重大な変更を多数勧告することはないだろう、と付け加えた。

 新任の国防相候補について、オーストラリアのベテラン国防記者、キム・バーグマンKym Bergmanは、マーレスについて、「以前は船体を揺らすような改革よりも楽なアプローチで、喜んで省のアドバイスを受けようとする人物だった。国防省の調達事業ではこれまでの方針の誤りで大金を溝に捨てており、これこそ必要なアプローチだ」と評している。

 バーグマンはこう続けた。「労働党にとって最良の選択は、ここ数ヶ月、特にピーター・ダットンPeter Dutton(当時国防相)との選挙討論会で良い結果を出したブレンダン・オコナーBrendan O’Connorを支持することだろう。オコナーは、詳細なポートフォリオに関する知識を持ち、思慮深い人物だとわかった。また、自分や同僚に向けられた子供じみた侮辱にも動じずに応じた。近年の連邦政治では珍しく、貴重な資質だ」。

 担当大臣が誰になろうと、労働党は強力な付託のまま政権につくことはない。5月21日、記録的な数の有権者は労働党にも自由党にも投票せず、緑の党やティールズと呼ばれる無所属議員(いずれも郊外の選挙区に住む女性)に票を入れた。

 しかし、ひとつだけはっきりしていることは、スコット・モリソン首相率いる自由党が粉砕されたことだ。選挙前に76議席あった連立政権は、集計中の票を加えると50議席に落ち込んでいる。

 BBCによれば、国防相だったピーター・ダットンが、自由党党首につく可能性が高いという。ダットンはタカ派で、数ヶ月前からその座を狙っていた。■



Aussie election: Labor win not likely to mean big defense changes


By   COLIN CLARK

on May 23, 2022 at 7:07 AM


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ