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Su-57フェロンがウクライナ戦に投入されたとのロシア報道の真偽を考えると理解に苦しむ点が見えてくる。

  

 

 

Su-57フェロンはシリアで試験投入されたが、ウクライナにも作戦投入されているとの記事が出てきた。

 

シアのメディアによると、新世代戦闘機Su-57フェロンが、ウクライナ戦争(現在86日目)で投入されたとある。Su-57事業は相当の問題に見舞われ、まだ完全運用されていないが、フェロンは以前もシリアで限定的ながら戦闘評価を受けたことがあり、実戦にさらにさらされたとしても驚くにはあたらない。

 

 

 「ウクライナでのSu-57使用は、特別作戦開始後2~3週間に始まった」と、匿名の「防衛産業筋」が国営タス通信に語った。「同機は、敵の防空システムの活動圏外で、ミサイルで作戦を行っている」という。

 

生産前仕様のスホーイSu-57フェロン新世代戦闘機。Vladislav06112019/Wikimedia Commons

 

 タス通信は「この件に関する公式情報はない」としており、現時点では上の発言は未確認と見るのが妥当だ。同戦闘機がウクライナ防空圏外で活動しているとすれば、その姿を確認できる画像が出てくる可能性はかなり低い。また、Su-57がどこで活動したのか、いつから任務を遂行しているのか、今も戦闘に参加しているのか、など詳細も不明。

 3月には、ウクライナ上空を飛行するSu-57を撮影した未検証映像がネット上に公開された。しかし、映像は画質が悪く、判断ができない。また、同映像は実際には、翼を可変翼攻撃機Su-24フェンサー、あるいはスホイ・フランカーとの指摘もある。

 フェロンがウクライナ防空圏外で飛行中との主張は興味深い。ロシア軍機への地上防空網の脅威と、ロシア軍がウクライナ空軍に対して部分的な制空権しか獲得できていないことを物語っている。

 一方、こうした戦術は、これまでロシア航空宇宙軍(VKS)の制空戦闘機で判明していることにも一致する。ウクライナ空軍によると、ロシア戦闘機は数的優位に立たない限り空中戦を避けるだけでなく、国境付近で活動することが多い。

 ウクライナ側の防空体制で同機を喪失すれば、すでに大損失を受けているVKSにさらなる痛手となり、またウクライナ側には重要なプロパガンダの勝利となる。このことを考えると、ロシアはSu-57のウクライナ領空内への投入を特にためらうのだろう。損失となれば、ウクライナへの大きなPR効果以上に、フェロンのステルス特性が再び疑問視される。

 しかし、Su-57の場合、ウクライナ国境外での運用は大きな障害にはならない。ウクライナ戦争でSu-35Sフランカー戦闘機が搭載した基本的な空対空ミサイルR-77-1(AA-12 Adder)は、射程距離は68マイルと報告されている。改良型K-77MがSu-57でテスト中であることが知られており、射程はR-77の約2倍になると考えられている。

 そして、R-37M(AA-13 Axehead)の発展形で、Su-57の武器庫に内蔵できるよう改良された超長距離ミサイル、イズデリエizdeliye 810がある。フェロンでテストしている可能性がある。メーカーのデータによると、基本型R-37Mは、最大124マイルの射程で空中目標を撃破できるとある。

 

R-37Mミサイルを発射するSu-35S。ロシア国防省のスクリーンショット

 

 また、Su-57がウクライナ上空で空対地任務に使用されている可能性もある。であればVKSはフェロン用に開発された新兵器の戦闘試験ができる。Kh-69(別名Kh-59MK2)巡航ミサイルがその一つで、180マイル以上先の強化目標の破壊を目的としている。

 また、Su-57兵装庫に入るKh-58UShK対レーダーミサイルや、セミアクティブ・レーザー、イメージング赤外線、アクティブ・レーダーの代替シーカーを装着できる「モジュラー」Kh-38M空対地ミサイルもある。これらの兵器は、ウクライナ国境外からの発射でウクライナ戦に投入可能だ。

 空対地ミサイル含む各種精密兵器が不足中との報道が繰り返されているが、備蓄が尽きているため、Su-57をスタンドオフレンジから特注弾薬で使用している可能性もある。

 しかし、Su-57は制空戦闘機として設計され、現在VKSで最高級の戦闘機だ。つまり、Su-57はウクライナで戦闘機やソビエト時代の防空システムを破壊し、本来の役割を果たすのに理想的な空戦機材だ。Su-57はウクライナの防空バブルの中心部に入り込み、大混乱を引き起こせるはずなのに、まったく異なる戦術が用いられる理由がわからない。

 ウクライナでのフェロンの試験投入は、Su-57と新兵器やセンサーの能力を実際の戦闘環境でテストする機会以外に、輸出を後押しする目的もあるようだ。インドとSu-57派生機を共同生産する計画は、プロジェクトの進捗状況や機体性能に対する懸念から破綻した。

 

2011年8月に開催されたMAKS航空ショーで、コンプレッサーのストールに見舞われたSu-57の試作機。Su-57のいわゆる2段目エンジンの開発は、大幅な遅れが生じている。著者 Rulexip/Wikimedia Commons

 

 ウクライナでSu-57を戦闘にさらす姿が公開されれば戦闘機の評価を高めることになる。シリアではフェロンが戦闘試験のため配備されたとの報道がでてから、ロシア国防省は事実を確認し、詳細な情報を提供していた。

 クレムリンが発注したSu-57の量産機材はわずか76機で、引き渡しずみは今年2月の2機含め計4機のみだ。各機は第929飛行試験センターに配属され、国家認証試験に投入されている。同基地には、T-50の呼称の量産前の機体や試作機もある。

 ロシアは新しい航空機やその他の軍事装備を戦闘状態でのテストや輸出の見通しを立てるために、短期間だけ投入することがある。

 シリアのフメイミム空軍基地に配備されたフェロン2機は、試作機T-50-9とT-50-11で、ロシア国防省は「10回以上の飛行」を行ったとある。その後公開された公式映像で、Su-57は新型戦術空対地ミサイルKh-59MK2を少なくとも1発発射している。

 また、Su-57がウクライナ紛争に投入されているのは、既存機材が予想以上に消耗していることに対応し、VKSの地位を強める狙いもあるのだろう。最近、ウクライナでロシア軍がT-90M戦車や対ドローン用レーザー兵器の配備など、従来よりハイエンドな装備を投入しているのは偶然ではない。■

 

Let's Talk About The Rumors That Russia's Su-57 Is Participating In The War In Ukraine

BY

THOMAS NEWDICK

MAY 20, 2022 1:24 PM

THE WAR ZONE


コメント

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