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ウクライナ軍の成果は孫子から着想を得た?だが、ホームズ教授はウクライナの長期戦闘維持に懐疑的だ。

  

 

ISW

 

 

争研究所(ISW)はウクライナ戦の最新動向を毎日取り上げているが、嬉しい知らせが昨日あった。ウクライナ軍がロシアから約2500平方キロメートルを奪還したのだ。主に北部のハリコフ州においてだ。添付の地図が、その様子を視覚的に伝えている。ウクライナ軍はこの地域に深く入り込んで楔(くさび)を打ち込みロシア軍司令部のあるイジュム市に向かい南下した。昨日時点では、イジュム周辺のロシアの補給線を遮断する態勢を整えていた。この原稿を書く時点では、同市を占領していたロシア軍2万人は、包囲され戦闘力として消滅するのを避けるため、同市から避難したようだ。ドネツクの中心部にあるライマンも陥落した可能性がある。

 

 

 ISWは、ウクライナがハリコフ州で「驚くべき作戦上の奇襲」を決めたと断言している。ロシア軍司令官は、ウクライナが反攻作戦を展開している南部ケルソン市を守るため、この地域から軍を撤退させていた。現在、欧米専門家は、南方作戦が北方からロシア軍を吸い上げるフェイントだったのか、それともウクライナ軍司令官が本気でケルソンを奪還し、クリミア半島とウクライナ東部(つまりロシア)を結ぶ陸橋を断ち切るつもりだったのかについて議論している。

 どちらの主張も正しいかもしれない。指揮官たちは、ウクライナの武器に戦争の神が微笑むなら、それ以上のものにする選択肢を留保している。

 実際、この反攻作戦には孫子の趣きがある。孫子は、直接攻撃(正攻法)と間接攻撃(非正攻法)を併用し、敵司令官を優柔不断にさせる指導をした。「正統派」部隊は正面で直接攻撃を行い、「非正統派」部隊は敵の側面を攻撃し、敵防御力を低下させる。孫子の言葉を借りれば、「敵に立ち向かう兵力が通常兵力」であり、「敵の側面に向かう兵力は臨時兵力」だ。軍指揮官は、並外れた力なくして敵に優位に立つことはできない」。

 投資と同様に戦闘においても、ポートフォリオを多様化することが賢明な戦略だとわかる。

 作戦上の利点は、敵司令官をジレンマに陥れることにある。敵はどちらが主戦場か分からず、どこに兵力と火力を投入すれば攻撃を防げるか分からなくなる。孫子は将軍に、敵に推測させ続けるよう助言し、ジレンマをさらに悪化させるとした。「敵に自分の通常兵力を非日常と思わせ、自分の非日常を通常と思わせる。さらに、通常が非凡になることもあり、その逆もある」と。つまり、臨時部隊が戦場で成功を収め、通常部隊が激しい抵抗に遭った場合、野戦将兵は臨時部隊を通常部隊に再指定し、軍の資源の大半を有望な方面に投入すべきなのである。

 名将たるものは戦況の変化に応じ、再び戦力を振り向けるものだ。要するに、孫子は非常に流動的で欺瞞的な戦闘方法を想定している。

 では、中国の戦法をウクライナに当てはめてみよう。孫子の言葉ではないが、ウクライナ軍指揮官は南方部隊を臨時部隊、北方部隊を通常部隊として考えていたのか。ロシアはクリミアへの陸路アクセスを確保するため南部を防衛する必要があり、その貴重な不動産を守るために資産を移転させることを受け入れいていた。そこで、ウクライナ軍は間接的にケルソン方面を攻撃し、ロシア軍司令官に二次的対策として資源配分を誤らせるよう促し、一方で北方では直接攻撃を仕掛けたのだ。もし、南部が予想より良く、北部が予想より悪くなれば、いつでも孫子の教えを守り、作戦を有利に進めるため優先順位を組み替えることができただろう。しなやかなアプローチは、今も昔も有効だ。

 しかし、このままうまくいくだろうか?ウクライナ戦争が始まって以来、本当の問題は、物量で劣るウクライナ軍が、より強い敵に勝利するため十分長く勢力を維持できるのか、ということにつきる。今のところ、筆者の予想は「No」だ。戦場は膠着状態におちいる可能性が高い。

 とはいえ、孫子がどこかで微笑んでいる。■

 

Ukraine’s Big Counteroffensive Seems Inspired by Sun Tzu - 19FortyFive

 

ByJames HolmesPublished1 hour ago

 

 

Expert Biography: A 1945 Contributing Editor writing in his own capacity, Dr. James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the U.S. Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010, and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.” The views voiced here are his alone. Holmes also blogs at the Naval Diplomat


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