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ウクライナへの供与もあり、台湾含む各国への装備品納入が大幅に遅れている。問題解決は可能だろうか。

 



Photo: Taiwan Ministry of National Defense via AP


月初め、ナンシー・ペロシ米下院議長の台北訪問に対抗し、中国が海峡で過去最大の軍事演習を行った際、弾道ミサイル東風が10発近く台湾上空を通過した。



 この訓練では、中国海軍が初めて台湾の東側に展開し、台湾を完全包囲した。中国のメッセージは明確だ。北京は容易に台湾を封鎖し、世界のサプライチェーンに大打撃を与え、米国や同盟国が台湾軍に武器を提供するのを妨げることができる。

 この事件を受け、米国議員たちは、中国による台湾封鎖、あるいは侵略を阻止するため、いわゆるヤマアラシ戦略として、台湾にできるだけ多くの兵器を輸出する必要性を強調している。ただし、台湾は米国からの140億ドル相当の対外軍事売却の未引き渡しに直面している。

 米国は台湾向け兵器売却が、中国による台湾攻撃を抑止するため不可欠と見なしているにもかかわらず、いまだに実現できていない取引には、2017年まで遡るものがある。

 上院外交委員会の共和党スタッフ、ララ・クラウチLara Crouchは8月のヘリテージ財団のパネルで、「状況が悪化する前に、台湾の能力整備で新しい展開を見る必要がある」と述べた。「究極の目標は、台湾が強化され、(中国人民解放軍を)阻止するため最良の立場に立つことであり、我々の対応で選択肢を与えることだ」。

「アメリカの台湾への武器売却政策と、北京からの脅威がどの程度増加するか減少するかとの間には、恒久的な関連性が不可欠だ」とクラウチは付け加え、武器は台北に「侵略、サイバー攻撃、その他のシナリオに自衛する能力」を与えると指摘した。

 議会は、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドへの武器売却の遅延の可能性と同様に、台湾への武器送付の遅れを解決すべく動いている。

 下院外交委員会のグレゴリー・ミークスGregory Meeks委員長(民主党)はDefense Newsに対し、同委員会は「必要な防衛装備品をより迅速に提供するため、迅速化とお役所仕事の軽減を支援する法案を現在作成中」と語った。

 一方、膨大な兵器の引き渡し遅延は、やっかいで動きが遅い対外軍事販売プロセスが、太平洋地域における北京を抑止する米国の努力を蝕んでいる様子を物語る。

 政府の対応遅れ、サプライチェーン問題、生産要件など理由は様々で、この問題を解決するのは簡単ではないと、同委員会の上級委員であるテキサス州選出のマイク・マッコール下院議員(共)Rep. Mike McCaulはDefense Newsに語っている。「巨大船の向きを変えるようなもので、非常に複雑な問題だ」と述べた。


プロセス

対外軍事売却のプロセスは、潜在的な顧客が特定の米国製兵器システムの要請書を提出した時点で正式に始まる。その後、国防総省と国務省でそれぞれ審査を行い、機密技術の開示リスクや利害関係国の潜在的な人権問題など、さまざまな問題を評価する。

 審査が終わると、国務省が売却承認を決定し、それが米国の国家安全保障上の利益に資することを証明する。その場合、国防総省の国防安全保障協力局は、該当取引を公表し、議会に正式通知する。30日間の議会審査期間を経て、米国政府は外国の購入者に正式な申し出と承諾の書簡を送る。

 これが、最終的な契約締結まで数年に及ぶこともある長いプロセスだ。そして、米国兵器メーカーは国防総省から最終契約を受け取るまで、生産を開始しない。

 扱いにくい対外軍事販売プロセスの問題は何年も続いているが、最近の防衛産業基盤におけるパンデミック関連のサプライチェーン問題が、遅れをさらに悪化させている。

 納品が遅れる原因について、クラウチは次のように語っている。「この件では、いつも多くの非難が浴びせられますが、実際には販売内容によるものなのです。「国務省の問題であることもあれば、国防総省の問題であることもある。そして、業界の問題でもある」。

 米国政府は、台湾が受領を待つ10種類の兵器システムの売却を承認しており、うち数点は、納入が10年後となる予定だ。

 米国は現在ウクライナとそのヨーロッパの同盟国への武器提供に集中しており、ウクライナ軍はロシアの侵攻を防ごうとしている。

 米国は、ハープーン対艦ミサイル、スティンガー対空ミサイル、高機動砲ロケットシステムなど、台湾向けの一部を含む数十億ドル相当の武器をウクライナに送った。


米国は、台湾への物品が滞っているにもかかわらず、ウクライナにハープーン対艦ミサイルを送った。(U.S. Navy)


ラジャ・クリシュナモルティ議員Rep. Raja Krishnamoorthi(民、イリノイ州選出)は、ペロシ議長(カリフォルニア州選出)に加わった訪台後の記者会見で、「ウクライナに供給するニーズを考えると、防衛産業基盤のサプライチェーンへのストレスは増大している」と述べた。

 ウクライナが中心的な役割を果たす一方で、台湾はワシントンが送ると約束した品目の列で、他のいくつかの国の後ろに残っている。

 例えば、ロッキード・マーティンF-16の生産待ち行列では、中東や東欧数カ国が台湾より先行している。2019年、国務省は台湾に80億ドルで同戦闘機66機を売却することを承認したが、台北が同機を受け取るのは2026年の見込みだ。

 「サウジアラビアは、台湾よりも優先順位が高いことがある」と、ウィスコンシン州選出の共和党マイク・ギャラガー議員Rep. Mike Gallagherは、7月の台湾のワシントン特使との会談を前に、Defense Newsに語っている。「我々は状況を注視する必要がある」 と述べた。

国防総省は、台湾や他の太平洋地域のパートナーへの未実施契約だけでなく、コメントを求めるDefense Newsの繰り返しの要求に答えていない。

 トランプ政権下で駐日大使を務めたテネシー州選出のビル・ハガティ上院議員(共)Sen. Bill HagertyはDefense Newsに、「滞留は対日軍事売却プログラム全般で恒常的に見られる持続的な問題だ。パートナー各国で発生している」と述べた

 承認プロセスが円滑に進んでも、売却が失敗に終わることもある。例えば、日本が購入予定していたイージス・アショア・ミサイル防衛システムのキャンセルだ。日本は当初、北朝鮮ミサイルの脅威を防ぐためイージス・アショア防衛システムの購入をめざし、初期費用と30年間のメンテナンス費用合わせ21億5000万ドルになると見積もっていた。

 国防安全保障協力庁は、売却を2019年に公示した際、日本のコスト見積もりを使用していたが、同見積もりは非常に不正確だった。

 日本はその後、総費用は41億ドルで、当初評価のほぼ2倍になることに気づいた。

イージス・アショア・システムの設置が予定されている日本の2つの地方では、防衛省が現地を訪れる代わりにGoogle Earthでを選定したという報告を受けて、国民の反発が起こった (Mark Wright/U.S. Missile Defense Agency)


米国の同盟国にとって、低レベルの兵器コストを正確に把握することは困難であり、イージス・アショアのような高度システムでは、さらに複雑になる。

 イージス・アショア設置が予定されている日本の2つの地方では、日本の関係者が現地を訪れずグーグルアースを使い設置場所を選定したとの報告を受け、国民の反発が起きた。

 米国から承認されたにもかかわらず、日本は2020年に購入を断念した。国民の反発を理由にしたものであり、資金予測の誤りは理由ではない。


問題への対処

現在、米国議会は、このプロセスを改善し、ひいては同盟国への武器納入を迅速化することを目的としたさまざまな取り組みを開始している。

国防総省と国務省はそれぞれ、外国への軍事売却を承認するまでに数カ月から数年かかることもある審査を行っている。このプロセスを早めようとする議会スタッフは、ある審査を特に改革するよう求めている。

 国防総省の国家情報公開政策委員会が、機密扱いの技術を潜在的な顧客に移転することが米国の国家安全保障上の利益になるかどうかを評価する技術安全保障・対外情報公開審査は、1年以上かかることもある。特にアジア顧客への先進的な武器販売では、紛争時に機密技術が中国の手に渡る可能性があるため、このような事態が発生する。

 クラウチによれば、議会は、完全性を維持しつつ、審査を短縮することに関心を持っている。

 「私たちは、こちらの技術をどこにでもばら撒きたいとは思いませんし、保護する必要があります」。「プロセスの改善方法を考える必要があります」。

 上院は、外交委員会が台湾政策法案を9月に採決する際に、台湾への納入遅れに対処する具体的な行動の最初の一歩を踏み出す。

 超党派の同法案は、対外軍事援助(外国に補助金や融資で米軍の装備を購入する能力を与えるプログラム)を通じ、台北に45億ドルの軍事援助を提供する。

 この援助は台湾が米国製武器を購入するのに役立つが、武器売却の滞留が続く限り、意義は薄くなると法案作成者は考えている。そのため、法案は国防総省と国務省に台湾への軍事売却に「優先順位をつけ、迅速に行う」よう要求している。

 さらに、国防総省と国務省は、防衛メーカーが複数契約で兵器システムを同時製造するバンドルルートによる売却を遅らせることを禁止する。

 また、同法案は台湾を非NATOの主要同盟国として指定し、武器輸出を促進する。また、大統領が「台湾のために、軍需品の備蓄を設立する」ことを可能にする。


揚陸強襲揚陸艦ワスプでスティンガー模擬弾を発射する米海兵隊員。米国はウクライナに数十億ドルの武器を送り、スティンガー対空ミサイルなど、台湾への引き渡しが遅れている品目も含まれている (Cpl. Ryan G. Coleman/U.S. Marine Corps)


この備蓄で、米国は台湾に軍需品や潜在的に他の資産を事前配置し、中国の攻撃に対し投入できるようになる。同法案では、2025年まで年間5億ドルを事前備蓄に充てることになっている。

 同法案は、台湾、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドへの2500万ドル以上の外国軍売却について、国防総省と国務省に2017年まで遡り報告することを義務付けるもので、下院外交委員会は先月、武器売却プロセスについて広範に扱う武器輸出納入解決法案を賛成票によって可決したところだ。

 カリフォルニア州選出の共和党ヤング・キム議員 Rep. Young Kimが提出した同法案では、報告書に、対象国への武器納入予定が遅れる理由を詳述する一方、滞留で生じるギャップを埋める暫定能力の特定を求めている。各議員はキム議員による法案を年次国防承認法案の修正案として追加し、下院は先月、329-101で可決した。

 外交委員会のトッド・ヤング上院議員Sen. Todd Young(共和党、インディアナ州選出)によれば、これまでのところ、滞貨に対処するため議会の活動の多くは「非公式」なものだったという。しかし、努力の一環として、「台湾への装備納入を早めるためできる限りのことをするようサプライヤーに圧力をかける」ことが含まれているという。

 マッコール議員は、米国製兵器に対する需要の高まりに対応するため、防衛メーカーは「革新性、敏捷性、柔軟性」をもっと発揮し生産規模を拡大すべきであると述べた。

 また、ハガティ議員は、軍事売却の問題点を解決するための「タイガー・チーム」に触れた。

 タイガー・チームとは、特定の問題を解決するため集められた技術専門家グループだ。ハガティ議員は、米国と相手国の専門家が、安全保障評価の違いや手続き上の障害など、武器売却プロセスにおける最も厄介な問題を解決するためのグループを想定している。

 台湾の場合、軍事売却プロセスを正式に開始する要請書を提出する前に、台湾が必要とする兵器の評価、コストの予測、米国から機器を調達するための予算の可決に2年以上かかることもある。

 タイガー・チームは、正式に売却開始する前に、ワシントンと台北の間のコミュニケーションを改善し、潜在的問題で対立を解消することにより、時間を短縮できる可能性がある。ハガティ議員は、駐日大使時代にタイガー・チームを活用し、日本向け売却のタイムラインを短縮する「プロセス改善の機会」を見出したという。

 ハガティ議員は、「対外軍事売却プロセスの時間を短縮する改善をまとめ、滞貨を減らすために多大な努力を払ってきた」と語った。「外国政府のパートナーも、プロセス改善の機会を求めている」。

 2020年-ハガティが上院議員に立候補するため大使を辞任した翌年、日本が2015年に国務省が承認したRQ-4グローバルホーク偵察機3機の購入中止を検討しているとの報道がでた。問題は、米空軍がノースロップ・グラマンの無人機を購入中止したため、システムのコストが23%上昇する予測があったことだった。

 しかし、不運なイージス・アショア売却とは異なる結末となった。日本は、コストアップが予想されるにもかかわらず、最終的にRQ-4購入を進める選択をした。ノースロップ・グラマンは2021年に日本向けの無人機の試験飛行を開始し、今年中に納品する。■


Taiwan is buying US weapons, but Washington isn’t delivering them

By Bryant Harris

 Aug 31, 12:00 AM



About Bryant Harris

Bryant Harris is the Congress reporter for Defense News. He has covered U.S. foreign policy, national security, international affairs and politics in Washington since 2014. He has also written for Foreign Policy, Al-Monitor, Al Jazeera English and IPS News.


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