(U.S. Army Weapons Command/Screenshot via Document Cloud).
1965年、米陸軍はダーツ発射式の宇宙銃で武装した即応部隊を想定していた
米軍ではあらゆる状況やシナリオにも対応できるよう考えている。そのため、陸軍は月面で起こりうる戦闘を想定して極秘の宇宙兵器開発に取り組んでいた。陸軍は、月面に建設する軍事基地で使用する宇宙用兵器の検討のために、完全な調査を依頼していた。
1960年代。ソ連がスプートニク打ち上げに成功し、宇宙開発競争が始まり、ジョン・F・ケネディ大統領が人類を月に運ぶと約束し、ジェットと原子力の想像力がフル回転していた時代。テクノロジーの進化はめざましく、何でも可能に思えた。そして、そのような「できること」、「未来は今」という考え方のもと、米陸軍には宇宙構想があった。
前書きにはこうある。
この小冊子の目的は、要件設定の責任者から資金調達の責任者、兵器設計者自身に至るまで、兵器関係者全員の思考を刺激することにある。
(C)宇宙(月や他の惑星)にいる人間の主な目的は戦うことではないとしても、必要とあれば自衛の能力が必要となる。月や他の惑星への米国のアクセスを阻止しようとする国があらわれるかもしれない。宇宙を真に平和な場所にするため、地球上と同じく、そこでも強くなければならない。
今回の兵器の提案には、背景がある。1950年代以来、国防総省は、国家安全保障と冷戦の両面において、宇宙を戦線とする可能性を探ってきた。1959年の報告書には、月面基地と、地上から前哨基地への兵員移動の構想がまとめられていた。これはすべて、ユーリ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行を行う前のことで、これらの構想が実際に人類にどう影響を与えるかは不明だったことを念頭においています。
この研究は、宇宙空間に部隊配置する問題点を概説している。当初懸念されていたほどではないが、月面は極端な高温であり、宇宙空間は真空であるため、武器の使用にも問題がある。
(U.S. Army Weapons Command/Screenshot via Document Cloud)
この陸軍の即応部隊には、基地と合わせ武器が必要だが、ここでも課題があった。論文にあるように、宇宙が兵器の「第二の進化」をもたらす可能性がある。当時は空想的なSFのB級映画やパルプ・アドベンチャーの時代で、陸軍はレーザー銃を検討していた。しかし、陸軍はそのような未来兵器の実現は少なくとも20年先だと判断し、宇宙で運動兵器を有効に使う方法を数点提案した。
(U.S. Army Weapons Command/Screenshot via Document Cloud)
その中で、「実現可能性が確定していないが、思考を刺激するアイデアとして提示される可能性のある兵器コンセプト」との項目で、さまざまな懸念に対応しようとした。中には、従来型ライフルだと反動で兵士が後方に飛ばされるのではないかという懸念も含まれている。そこで、あらかじめダーツの入った筒や、その他の斬新な弾薬を使い、この問題に対処しようというのが、新兵器のコンセプトだ。その中には、2種類の「ソーセージガン」、「マイクロガン」、高火力爆薬からガスを噴射する近距離武器が含まれている。さらに、球状弾丸を発射するバネ式の銃も検討されたが、これは宇宙用とはいえ、よりレトロ感がる弾薬だ。図面案とともに、陸軍は各兵器の姿を示すアートも描かせた
(U.S. Army Weapons Command/Screenshot via Document Cloud)
陸軍兵士が宇宙銃を二丁持ちしている。これは米陸軍兵器司令部の提案だった。
宇宙戦争というと、『スターシップ・トゥルーパーズ』やジェームズ・ボンドの『ムーンレイカー』など、宇宙海兵隊が登場するイメージがあるが、1965年に陸軍は月面で戦力になると確信していた。これは陸軍の研究であり、その当時、米軍は宇宙計画を統合した米軍宇宙司令部はなかった。
同研究は、アイデアの刺激をめざしていたが、その後破棄されたようだ。1969年にアメリカは軍パイロットを月に送ったが、すべての歴史的記録を見る限り、この論文が概説した宇宙銃や月面基地の提案はない。発表から50年以上、同論文のアイデアは全く実現しなかったが、陸軍が最後のフロンティアで将来の戦争がどう展開されると考えていたか、ユニークな視点を提供する資料であることに変わりない。■
In the Cold War the Army dreamed up these weapons to fight on the Moon
BY NICHOLAS SLAYTON | PUBLISHED SEP 24, 2022
コメント:宇宙空間の軍事利用を禁じる宇宙条約は事実上反故にされており、中共が月面などの軍事利用を考えていないとの保証はありません。となると、当時はあくまでも思考の幅を広げる目的の論文だったようですが、現実のものにならないとも限りませんね。
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。