スキップしてメイン コンテンツに移動

水陸両用版C-130MACの実機実証は2023年に。US-2導入も匂わせるAFSOC。他方で中国はAG-600の開発を続けているが....

 

AFSOC

 

 

 

広大な海域で中国と戦う可能性から、水陸両用版C-130が現実となる可能性が出てきた

 

 

軍特殊作戦司令部(AFSOC)のトップは、特殊作戦用のMC-130JコマンドーIIマルチミッション戦術輸送機の水陸両用版が来年に飛行すると、火曜日に述べた。

 ジェームズ・スライフ中将 Lt. Gen. James Slifeは、メリーランド州ナショナルハーバーで開催された航空宇宙軍協会(AFA)の航空・宇宙・サイバー会議で、「議会での23(2023年度)予算プロセスの結果を待っている」と記者団に述べた。「来年に飛行実証が行われると予想している」。

 

デジタル・プルービング・グラウンドでのMC-130JコマンドーII水陸両用改造型の予想図。 (AFSOC photo)

 

これは、昨年のスライフ中将発言と異なる。Defense Newsによると、スライフ中将は昨年9月、メディア懇談会で「来年12月31日までに実証を実施すると確信を持って言える」と述べていた。スライフ中将は、飛行デモは単機で行われる可能性が高く、機体性能のデジタル技術モデルを検証することが目的と強調していた。

 本誌はAFSOCに連絡を取り、何が変わったのか説明を求めており、追加情報があれば記事を更新する。とはいえ、同機のユニークな能力は、飛行試験段階への移行を目指しており、その正当性は月日を追うごとに明らかになってきている。

 中国の脅威へ懸念が高まる中、米軍特殊作戦司令部(SOCOM)は、潜在的な紛争地域の僻地部分に人員や機材を移動させる方法を模索している。離着水できると多くの利点がある。MC-130は、短距離で離着陸できる性能のため、魅力的なプラットフォームになっている。

 

2020年10月27日、フロリダ州ハールバートフィールドで行われたアジャイルフラッグ21-1で、第9特殊作戦飛行隊に所属するMC-130JコマンドーIIがタキシングした。 (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Joseph Pick)

 

中国との紛争では、従来型の航空・海上輸送では到達できない遠方へ米軍部隊を分散して活動させることになりそうだ。海兵隊司令官デイヴィッド・バーガー大将David Bergerのフォースデザイン2030コンセプトでは、中国兵器が届く範囲に部隊を事前配置するのを基本としている。月曜日には、ケネス・ウィルスバック空軍大将が、中国が補給線を遮断してくる想定で、地域全体に物資をあらかじめ配置しておくことと語った。

 水上での離着陸は、こうした問題や懸念に対処できる可能性がある。MC-130Jには、数十年にわたる進化と、航法、通信、生存能力の強化のための巨額の資金が投入されている。そのため、例えば、C-130を浮き輪に乗せて飛行艇にすれば明らかにトレードオフとなるが、MC-130でそのような機体を実現すると、非常に高価で時間がかかると考えられる。

新型地形追従型レーダー「サイレントナイト」を搭載したMC-130J。MC-130Jは、高度に改良された絶大な能力を持つ機体だ。 (Lockheed Martin)

 

スライフ中将は、MC-130J Commando II Amphibious Capability(MAC)と名付けられた機体について、「すべてのモデリングとシミュレーションを行い、一般的な設計レイアウトに落ち着きました」と述べている。「選択した設計が安定したものであり、運用可能であると確認するため、波動タンク・モデリングを進めている」。

 AFSOCは、空軍研究本部(AFRL)の戦略的開発計画・実験(SDPE)部門と協力し、「プラットフォームの海上の特殊作戦のサポートを改善するために」MACを開発していると、AFSOCは2021年9月のメディアリリースで述べていた。

 「MAC能力の開発は、各種努力の集大成です」と、AFSOC科学・システム・技術・イノベーション(SST&I)副部長のジョン・トランタム中佐 Lt. Col. Josh Tranthamは当時述べていた。「この能力により、空軍は侵入、脱出、人員回収の配置とアクセスを増やすことができ、さらに将来の競争と紛争で強化されたロジスティック能力を提供できます」。

 しかし、この能力の恩恵を受けるのはAFSOCだけではない、とトランタム中佐は述べている。

 「MACは、各軍や同盟国、パートナー国の様々なC-130プラットフォームで使用できると考えています。さらに、その他革新的なツールと水陸両用機の運用を拡大することで、将来の戦場において、戦略的な競争相手に複雑なジレンマを提供することになるでしょう」。

 

MACコンフィギュレーションの1つの動作のレンダリング。(AFSOC)

 

AFSOCによると、波動水槽テストに加え、AFSOCと民間部門パートナーは、「デジタルプルービンググラウンド」(DPG)として知られる仮想環境のデジタル設計、仮想現実モデリング(VR)、コンピュータ支援設計(CAD)でMAC試作機をテストしており、デジタルシミュレーション、テスト、高速プロトタイピングと物理プロトタイプテスト用の高度製造利用の道を開いている、という。

 スライフ中将は、モデリングとシミュレーションは「すべて順調」と語った。「それは、デジタル設計の素晴らしさであり、C-130のデジタルモデルでこれらすべてを行っている」と続けた。「これまでの波動水槽テストでは、選択した設計案は、予想どおりの性能を発揮している」。

 Signal Magazineによると、空軍はC-130に「水陸両用の改造」を行っていると、スライフ中将は今月初め、AFAのWarfighters in Actionで発言していたとある。「浮き輪ではありません。水陸双方で着陸する能力を持つことになります。

 「双胴船、ポンツーン、または機体底面の船体追加と一連のテストのすべて検討した。そして、抗力、重量、海面性能のトレードオフを最適化するデザインに落ち着きました」。

 

 

ロッキードからは相当前に水陸両用型C-130コンセプトが出ていた。Lockheed

C-130をフロートに乗せるアイデアは、このロッキード・マーチンのレンダリングに見られるように、何年も前からあった。Lockheed Martin

 

MACが海上の特殊作戦にもたらす効果を楽しみにする一方で、スライフ中将はMACにできること、できないことを現実的に考えている。例えば、MACは即座に運用できない、と火曜日に述べた。

 「水陸両用能力は現場で取り付け可能だが、特定の出撃のために装着して離陸するようなことはない」とスライフ中将は述べている。「少し時間がかかるだろう」とスライフ中将は言う。「設置するためデポに行く必要はない。部隊レベルのメンテナンスでこの機能を インストールすできるだろう」。

 MACの限界とスライフ中将の水陸両用機への関心にもかかわらず、彼はAFSOCがC-130のキットを超える新しい航空機調達プログラムをすぐに求めることはないだろうと述べた。

 「資源に限定がなければ水陸両用機の開発をすぐ進めれられる。しかし、現実の世界は違う。優秀な水陸両用機はすでに存在しているが、近い将来に新型機開発を進めることはない。既存機体をリースする可能性はある」。

 今年初め、アジア太平洋地域で行われたコープノース演習で、パイロットたちは日本の新明和US-2水陸両用機を検分した。

 

グアムのアンダーセン空軍基地近くのテニアン島沖で行われたコープノース22演習で海に浮かぶ日本の新明和US-2 U.S. Air Force/Senior Airman Joseph P. LeVeille

 

 昨年11月、AFSOC代表団が岩国基地を訪れ、飛行艇と運用コンセプトを詳しく学んだ。その際、海上自衛隊がAFSOCのエリック・ヒル少将Maj. Gen. Eric Hillや第353特殊作戦部隊指揮官に説明を行い、「日米の鉄壁のパートナーシップをさらに強化する」ものと評され、水陸両用機型C-130ハーキュリーズに注目が集まる中、世界でも数少ない水陸両用機に触れることができた。

 スライフ中将が新規設計の水陸両用機の実現に消極的であるのとは対照的に、中国はすでに水陸両用機を開発している。

 クンロンと呼ばれるAG600飛行艇は、2017年に初飛行した。およそ737サイズの機体は、広東省の珠海空港から短期間飛行した。今年初めに更新版が処女飛行を行ったとOverDefense.comは報じている。

 AG600は、中国本土から数百マイル離れた中国の治外法権をサポートする能力のため設計されている。同機は、南シナ海で物議をかもしながらも、増え続けている人工島の支援に使用される予定だ。

 

 

中国の2021年から2025年までの最新5カ年計画では、AG600を「重要プログラム」と位置づけている。救助機が緊急に必要であり、特に南シナ海の遠大な拠点に対応できる装備が戦略的に必要だからだ。しかし、いつものように、このような能力を持つことの軍事的意味合いが中国の説明から漏れている。

 米軍が分散作戦に重点を置くようになれば、水陸両用型C-130はより優先されよう。しかし、それと関係なく、計画通りに進めば、1年以内にC-130フロートプレーンをついに目にすることができるはずだ。■

 

C-130 Seaplane Should Fly In 2023 Says Air Force Special Ops Commander

BYHOWARD ALTMAN| PUBLISHED SEP 21, 2022

THE WAR ZONE

Contact the author: howard@thewarzone.com


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...