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プーチンの部分動員令は今週末の住民投票後に西側への力による脅威を正当化する一歩だ。周辺国はロシアに警戒。日本もロシアの隣国であることを忘れてはならない。

 

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プーチンは予想通りロシア国民の一部動員を呼びかけ、西側諸国に核の脅威をちらつかせた

 

々から予想されていた動きで、ロシアをウクライナでの戦争にさらに追い込むものだ。ウラジーミル・プーチン大統領は今朝、数十万人を「一部動員」すると発表し、「わが国を破壊したいと願っている」と西側を激しく非難した。テレビ演説で、プーチンは核報復の可能性に触れ、西側諸国などにウクライナに援助しないように警告もした。

「兵役は予備役国民、以前軍隊に所属し、一定の軍事的職業や関連する経験がある者にのみ適用される」とプーチンは述べ、部分動員の影響を受ける対象を説明した。プーチンは、この動きは、「ウクライナ国民を大砲の餌にする」ことを望む西側諸国による脅威への対応であり、ロシアはウクライナに600マイル以上広がる前線を補強するため部隊が必要と主張した。

2月24日にウクライナ全面侵攻が始まって以来、ロシアが一貫して「特別軍事作戦」と説明してきた戦闘で、公式に兵士5,937人を失っている。実際の犠牲者はもっと多いとみられ、ウクライナ軍によれば、ロシア軍と親ロシア派あわせ5万5千人以上の死傷者が出ているという。8月中旬の時点で米国当局は、7万から8万人の死傷者のうち、ロシア軍兵士約2万人が死亡と推定している。

しかし、ウクライナがロシアによる占領からかなりの面積の領土を取り戻し続けていることから、モスクワにとって戦争がうまく進展していないこと、長期化し低迷している紛争で軍が消耗していることは明らかだ。今回の部分動員は、こうした現実の反映だ。ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相によると、プーチンの法令により、同日から約30万人のロシア人が召集される。軍隊経験のある特殊技能者、特に戦闘経験者が特に必要とされている。同時に、すでにウクライナで戦っている契約兵は、部分動員が終了するまで、任務が延長される。この措置がいつまで続くかは不明であり、同様に、ロシアがこれらの追加要員を基本的なレベルとしても、どれだけ迅速に訓練し装備できるかも疑問だ。

今回の決定は、特別軍事作戦という概念の誤りを補強するものであり、戦争が国民の大部分にとって直接の関心事となるにつれ、ロシア国民全体に大きな影響が出てくると思われる。注目すべきは、プーチンが宣戦布告や国家総動員の表明を断念したことだ。これは、ロシアが新たな戦争態勢に入ったと見せず、いかなる種類の動員でも反動を少なくするため、国内向けに計算された可能性も非常に高い。

この決定を前にして、ロシアのコメンテーターや社会全体が、戦闘の進め方に幻滅を深めている兆候がたくさんある。実際、動員令の影響を受ける人々には、国外に出ようとしている、あるいは発表前にそうしていたとの報告も複数ある。未確認情報だが、ロシア国内の鉄道、航空会社とも、兵役年齢の男性へのチケット発行を拒否しているといわれ、兵役回避を目指す層の選択肢はさらに狭まる。これに対し、ラトビアのEdgars Rinkēvičs外相は、動員から逃れるロシア人への避難所の提供は拒否すると表明した。

ロシア国外では、本日の発表は、クレムリンの最新のウクライナでの冒険が失敗に終わったことのあらたな証拠として政府関係者や政策立案者間で飛びまわっている。

ウクライナ大統領顧問のミハイロ・ポドリャクMykhailo Podolyakは、プーチン大統領の決定を「予想できた一歩」とし、ドイツではロベルト・ハベック副首相vice-chancellor Robert Habeckが「ロシアがまた悪い、間違った一歩を踏み出した」と非難した。オランダのマーク・ルッテ Mark Rutte首相は、動員令は「パニックの兆候」と述べた。

ジョー・バイデン大統領は本日、国連総会演説で、核戦争は「勝つことはできないし、決して戦ってはならない」とプーチンに警告し、そもそもロシアはウクライナに侵攻し、国連加盟国の基本理念を「恥知らずにも」破ったと非難した。バイデンは、クレムリンの主張と逆に、ロシアを脅かしている国はなく、現在の紛争を始めた責任はロシアにあるとも付け加えた。

英国では、ベン・ウォレス国防長官Secretary of Defense Ben Wallace が、部分動員はプーチンのこれまでの保証に反するものだと強調した。「プーチンが部分動員はしないという約束を破り、ウクライナの一部を不法に併合したことは、侵略が失敗していることを認めている」。

プーチンは、ウクライナでの軍事作戦を強化するため新たな措置を発表するとともに、ウクライナ軍に提供された数十億ドル相当の軍事支援を含む欧米の関与を阻止するため核による妨害行為を呼び掛けた。

プーチンは、ロシアの核戦力に言及し、ロシア領土に対する西側の脅威と称するものに「対応するための多数の武器」があると述べた。プーチンは、ウクライナ最前線でロシア軍が欧米の軍事作戦に直面していると根拠なく主張した。

「これはハッタリではない」とプーチンは付け加え、「利用できるすべての手段」を使うと述べた。ロシア大統領はまた、西側が核による脅迫を利用していると非難し、「攻撃的な反ロシア政策で、西側はすべての線を越えている」と述べた。プーチンはさらに「核兵器で我々を脅迫しようとしている勢力は、風向きが彼らの方向にも向くことを知るべきだ」と述べた。

核による脅迫の証拠として、プーチンは、ウクライナのザポリジャー原子力発電所への砲撃が「西側によって奨励されたもの」と指摘した。また、「NATO諸国の上級代表」が「ロシアに大量破壊兵器、つまり核兵器を使用する可能性と容認性」を発言したとさえ主張した。

ロシアとウクライナは、ザポリジャー原発の砲撃で互いに非難しているが、「NATOの上級代表」のどの発言に言及しているのかは、すぐには分からない。西側の核の脅威というプーチンの曖昧な主張は、西側の指導者たち、そしてウクライナに、ロシアも「様々な破壊手段を保有しており、場合によってはNATO諸国よりも近代的だ」と思い出させるための策略として展開されたようである。この最後の発言は、2019年に大々的に発表され、その後、プーチンが強い関心を寄せている、いわゆる「超兵器」に言及しているように見える。そのひとつ原子力巡航ミサイル「9M730ブレビストニク」の新たな実験が迫っているとの憶測が、衛星画像から多く聞かれる。

「我が国の領土保全が脅かされた場合、もちろん、ロシアと国民を守るために、使えるあらゆる手段を用いる」とプーチンは述べた。

ここで興味深いのは、ロシア領土への言及だ。通常、動員をかけるには、ロシア領土が攻撃を受ける完全な戦争状態が必要だ。そのため、動員の呼びかけは、まずモスクワがウクライナ国内のロシアや親ロシア勢力が占領している地域を併合し、その口実を得ることに頼るだろうと多くのオブザーバーは予想していた。今回の部分動員はこれを回避するためだろうが、いずれにせよ各地域で「住民投票」が実施されそうだ。

プーチンは演説で、ロシア併合の是非を問う住民投票をクレムリンが「全面的に支持する」と述べた。今週末には、占領下のドネツク、ルハンスク、ケルソン、ザポリジャで、ロシアの代理勢力により住民投票が行われる。

2022年9月20日撮影、学校の壁に掲げられた、自称ドネツク人民共和国(DNR)が書いたロシア語で「プーチンはわれらの大統領」というスローガンの写真。ハルキウ州イジュム近郊のマラ・コミュシュヴァハの学校は、ロシア軍が仮設病院としていた。Photo by YEVHEN TITOV/AFP via Getty Images

こうした地域のうち、ロシアはすでに、ドンバス地方のルハンスクとドネツクを独立国家とみなしており、これらは2014年から親ロシア派に一部占拠されている。ドネツク州の約6割は親ロシア派のドネツク人民共和国(DPR)が支配している。ルハンスク人民共和国(LPR)は全地域の支配を維持してきたが、ここ数日で、ウクライナ軍がここでも領土を奪還している。

南部では、ケルソンとザポリジャの領有権がはるかに激しく争われている。

表向きは住民投票のようだが、親ロシア派がロシア連邦加盟を要求する可能性が高い。正式に併合されれば、ロシア国内での総動員の道が開かれる可能性がある。そうなれば、モスクワは自国領土が(ウクライナや、おそらくは「西側の軍事行動」により)攻撃を受けているという「証拠」も手に入れることになる。そうなれば、核兵器の使用や威嚇を含む、より強力なロシアの反応へ扉が開かれる。

ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の回答は、国民投票に焦点を当てたものであった。「この騒音や他の発表によって、我々の立場が変わることはない」とゼレンスキー大統領は述べた。キーウはすでに、そのような国民投票は「見せかけ」であり、ロシアによる脅威を「排除」すると再宣言している。これらの地域がロシア領とされたとしてもキーウ軍はそれらの解放のために努力を続けるという。

最新情報

ロシアと国境を接するNATO諸国は、自軍の警戒態勢を強化している。

リトアニアでは、アルビダス・アヌサウスカス国防相Minister of Defense Arvydas Anušauskasが、カリーニングラード島でのロシアの軍事活動の可能性を考慮し、同国の即応部隊を厳戒態勢に置くと発表した。

NATO外では、ロシアのウクライナ侵攻を受けて加盟を申請したフィンランドが、近隣のロシア情勢を注視しているとアンティ・カイッコネン国防相Minister of Defense Antti Kaikkonenが述べた。「フィンランド周辺では、軍事的状況は安定しており、落ち着いていると言える」とカイッコネンは述べ、「我防衛軍は十分に備え、状況は厳密に監視している 」と付け加えた。

一方ロシアは、ウクライナ第二の都市ハルキウを標的としたミサイル攻撃を含む、ウクライナ標的へ砲撃を続けている。ミサイル数発は住宅を直撃し、少なくとも1人が負傷、さらに多くの人が瓦礫の下敷きになったという。

ハルキウ市長のイゴール・テレホフ Igor Terekhovによると、4発のミサイルがホロドノゴルスキー地区を襲い、住宅2棟、建築現場、市民インフラを直撃したという。

ウクライナへの戦車供与の議論は続いているが、ウクライナには他にも各種戦闘車両が、別々の供給元から送られてきている。IVECO VTLM Linceは、この夏からイタリアの在庫から供給され始めた軽戦術多用途車だ。興味深いことに、Linceはロシア軍で使用されているIVECO LMV Rysのイタリア軍バージョンで、一部の車両がウクライナに鹵獲されている。

写真は、ウクライナ東部のドンバス地方に向かうロシアT-62M戦車を列車輸送しているところであり、ロシアの戦況を象徴している。ロシアがウクライナ戦争のため50年前のT-62を長期保管庫から取り出しているとの噂は5月に表面化し、それ以来、これらのタスクが広く展開されていることが明らかになっている。これまでもお伝えしてきたように、ロシアは戦車約1万台、装甲車約8500台を保有しているとされ、うち約2500台がT-62だ。ロシアがこれらのT-62の供用を復帰させているとすれば、装甲兵器の追加投入が必要な状況を示唆している。■


Ukraine Situation Report: Russia's Partial Mobilization, Nuclear Threats

BYTHOMAS NEWDICK| PUBLISHED SEP 21, 2022 1:09 PM

THE WAR ZONE


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