スキップしてメイン コンテンツに移動

ノルドストリーム・海底パイプラインの漏洩は4箇所に拡大。NATOとEUはロシアの関与を非難。パイプライン復旧は困難になるのか。

NATO Says All Signs Point To Sabotage Of Baltic Undersea Pipelines

Swedish Coast Guard

 

 

ウェーデン当局によると、ロシアとドイツ間のバルト海中を走るパイプライン「Nord Stream 1」と「2」で、4件目の断裂が確認された。破裂の正確な経緯は不明だが、NATOは欧州連合(EU)とともに、何らかの意図的な攻撃によるものの可能性が高いと結論付けた。

 

 

 今回の破裂は、ノルドストリーム 2パイプラインで2件目のものだ。ノルドストリーム 1のパイプラインでは、他に二箇所で破裂が確認されている。最初の破断は、月曜日に大きな水中爆発に続き検知された。本稿執筆時点では、EUもNATOも、加盟国も、単独で、いずれかの行為者の責任を正式に告発していないが、ロシアを指さす声はますます大きくなってきている

 

ノルドストリーム 2パイプラインの破断箇所の1つ上で天然ガスが表面に泡立つ。スウェーデン沿岸警備隊

 

スウェーデン沿岸警備隊は本日未明、2つ目のノルドストリーム 2の破断を明らかにし、最初の破断地点の近く(約1マイル)であったと述べた。また、同警備隊の哨戒機Dash 8-Q300と捜索救助船アンフィライトAmfitriteが撮影したと思われる、水面でガスが噴出している写真とビデオ映像を公開した。アンフィライトは水中無人機も装備しているが、このシステムで破損箇所の直接点検を行ったかどうかは不明。

 

 

スウェーデン沿岸警備隊の捜索救助船「アンフィライト」と、上空を飛行する同隊の航空機「ダッシュ8-Q300」。スウェーデン沿岸警備隊 Swedish Coast Guard

 

 

ノルドストリーム2パイプラインの破断箇所はともに国際水域だが、スウェーデンの排他的経済水域(EEZ)内である。ノルドストリーム 1の破断した2本のパイプラインも国際水域にあるが、デンマークのEEZが適用される区域に位置している。この2つのパイプラインは、いずれもロシアの国営ガス会社ガスプロムと欧州のエネルギー企業が部分所有している。

 スウェーデンとデンマーク両国の当局が調査を進めており、米国など欧州以外の国も協力している。デンマークはNATOに加盟しており、スウェーデンは現在、NATOへの加盟を申請中である。

 「バルト海の国際水域におけるNordstream1とNordstream 2のパイプライン損傷に深く懸念する」と、本日のNATOの声明は述べている。「現時点で入手可能な情報すべては、これが故意、無謀、かつ無責任な妨害行為の結果であると示している。漏出は、船舶への危険と大きな環境破壊を引き起こしている。我々は、被害の原因究明の調査活動を支持する」。

 「我々は、同盟国として、国家および非国家主体によるエネルギーの強制的使用やその他のハイブリッド戦術に備え、抑止し、防御すると約束している」。声明は、パイプライン事故の責任者として特定の当事者を挙げていない。「同盟国の重要インフラに対するいかなる意図的な攻撃に、団結した断固とした対応で迎え撃つ」。

 これは、昨日EUが発表した声明と一致しており、「入手可能なすべての情報は、これらの漏えいが意図的な行為の結果であることを示している」と述べ、「強固で団結した対応」を約束した。同じ感情は、スウェーデンとデンマーク両国の首相がそれぞれ表明しており、スウェーデンのマグダレナ・アンダーソン首相Magdalena Anderssonは本日、被害をもたらすには大型の爆発物が必要だったはずと述べている。スウェーデンの国家法執行機関で、スパイ対策やテロ対策も担当し、米連邦捜査局(FBI)に匹敵するスウェーデン保安庁は、「外国勢力が背後にいることはまだ否定できない」と述べている。

 公式な疑惑がないにもかかわらず、西側当局者はますますロシア政府が犯人の可能性があると見ているようだ。デンマークの匿名軍関係者がCNNに語ったところによると、「この地域でこのような作戦を実行できる能力と関心を持つ主体が他にあるとは考えにくい」という。 ロシアは現在、2月のウクライナ侵攻で厳しい西側制裁を受けており、報復として、冬が近づくにつれてヨーロッパ各国に影響を及ぼす深刻なエネルギー危機を煽ることに明確な関心を持っている。ガスプロムはすでに8月末に、表向きはメンテナンスのためノルドストリーム1を通るガスの流れを停止した。ノルドストリーム2は昨年完成したが、ロシアによるウクライナへの全面侵攻を前に、ドイツ当局がアメリカ政府の圧力でプロジェクトを凍結し、運用は始まっていない。

 さらに、CNNの記事は、昨日イギリスのタイムズが報じた、乗員なしの水中車両で爆発物を設置するロシアの攻撃は、特に「あり得るシナリオ」だとイギリス当局が見ていることを伝えていた。また、ノルドストリーム・パイプラインの損傷部分が比較的浅いところにあることから、戦闘ダイバーが爆発物を設置した可能性も指摘されている。これは、ドイツの雑誌『シュピーゲル』が、米中央情報局(CIA)が夏にベルリン当局にノルドストリーム・パイプラインへの攻撃の可能性を警告していたと報じたのを受けている。

 また、CNNは本日、パイプラインの破断地点付近のバルト海で今週初め、ロシア海軍の支援艦が観測されたと報じた。しかし、ロシア海軍の最近の活動がこれらの事件に直接関連しているとの明確な兆候はない。ロシアはバルト海沿岸に大規模海軍力を展開しており、水上艦や潜水艦など艦艇を定期的に出入りさせている。

 ロシア当局は、パイプライン事故への関与を否定し、独自の調査を約束している。また、米国や他のNATO加盟国に何らかの責任があるとの疑惑を投げかけ、その説を拡大しているが、これらの主張を裏付ける証拠は何一つ示していない。

 この地域では米海軍やNATOの海軍が定期的に活動しているため、これらの事件への西側の関与の可能性について憶測を呼んでいる。2015年にスウェーデンの治安部隊がノルドストリーム1パイプライン付近で爆発物を内蔵した機雷探知機を回収した事件が、こうした議論で再浮上している。その無人水中装備の所有者は明らかにされず、当時のスウェーデン当局は、パイプラインや地域を航行する船舶に脅威を与えるものではないとしていた。

 The War Zoneは、米海軍の欧州最高司令部であるNaval Forces Europe-Africa/U.S. Sixth Fleet (NAVFOREUR-AF/Sixth Fleet) やNATOにコメントを求めた。NAVFOREUR-AF/Sixth Fleetのスポークスマンのタマラ・ローレンスTamara Lawrence少佐は、昨日の米国防省高官と国務省主席報道官ネッド・プライスNed Priceの発言を紹介した。

 昨日、米国防省高官は、ウクライナ情勢に関する定例記者会見の中で、パイプライン事件に米国は「絶対に関与していない」と発言した。

 国務省のプライス報道官は、昨日の別の記者会見で、「米国がこれらのパイプラインの明らかな破壊行為に何らかの形で関与しているとする考えは、とんでもない」と述べた。「これはロシアの偽情報以外の何物でもなく、そのように扱われるべきです」。

 「我々は、ノルドストリームパイプラインの漏洩に関する報告を把握している」と、ローレンス少佐も昨日の声明で述べていた。「必要であれば、同盟国やパートナーとの緊密な連携のもと、支援やサポートを提供する用意がある 」。

 進行中の各種調査により、今回の事件の性質や責任者について、最終的に何らかの結論が出るまでには、時間がかかりそうだ。EU、NATOその他が、特にロシアに責任があると判断した場合に、何をするかは、まだわからない。国際海域の多国籍の海底インフラへの攻撃に対する有効かつ実用的な対応を見出す課題についての議論は、海底通信ケーブル切断の可能性でも出ていた。

 地政学的な影響だけでなく、パイプライン破断により現在流出しているガスによる環境問題も懸念されている。少なくとも月曜日までには、ノルドストリーム 1の破断箇所のガス噴出は止まると予想される。

 さらに、破損の程度がひどく、修復にコストがかかるため、事実上パイプラインが永久停止することも懸念事項だ。破損したパイプラインからガスが止まると、海水が流入し、腐食が始まる。さらに、パイプラインに氷の栓ができる危険性もあり、修理過程で氷を除去する必要が出てkる。

 また、ノルドストリーム・パイプライン事故は、敵対企業による取り組みを反映しているのではないかという懸念も高まっている。デンマーク警察は、北海のハルフダンB海底油田・ガス田上空の謎のドローン活動について調査中と確認したが、詳細は不明である。ノルウェー当局は今週初め、沖合の石油・ガス施設周辺の未確認飛行物体について警告を発し、その後、同施設周辺で軍事的プレゼンスを高めると発表している。

 今回のパイプラインの爆発といい、説明のつかないドローンの活動といい、ロシアのウクライナ紛争がヨーロッパの他地域に飛び火しているとの疑問が生じるのは確かだ。■

 

 

 

NATO Says All Signs Point To Sabotage Of Baltic Undersea Pipelines

BYJOSEPH TREVITHICK| PUBLISHED SEP 29, 2022 5:09 PM

THE WAR ZONE



 

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ