グアムのアンダーセン空軍基地で行われたコープノース22で、海上自衛隊の新明和US-2の前に立つオーストラリア空軍、米空軍、海上自衛隊(2022年2月10日撮影)。米軍は、コープ・ノース含む合同演習や作戦活動を通じ、インド太平洋地域の同盟国やパートナー国との関与の拡大や関係強化を常に目指している。 (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Yosselin Perla)
Naval Newsは、新明和工業株式会社に米特殊作戦軍(USSOCOM)が水上飛行機US-2に興味を示しているのか問い合わせたところ、同社から返答を得た。また、USSOCOMにC-130J MACの現況とコメントを問い合わせたのであわせて以下お伝えする。
米国特殊作戦司令部(USSOCOM)のコメント
USSOCOMが水陸両用機C-130Jフロートプレーンや水上機を保有する可能性が高まる中、「船体構造」を有する水上機としては、海上自衛隊の「新明和US-2」が候補に挙がっている。現在、US-2は海上自衛隊に配備されている。
USSOCOMは、既存MC-130Jにポンツーンを追加して、実質的な水上機にできると考えており、このコンセプトは特殊作戦部隊産業会議2022(SOFIC 2022)で確認された。
「水陸両用MC-130の実証に関して、USSOCOMは現在、市場調査中で、既存のSOF要件に対応する水陸両用機の可能性を確認するために行っている。またAFSOCは、C-130機にフロート・アセンブリを搭載する実証を行っています。リスクを軽減し、変更を加えるため主要な要因として、デジタルエンジニアリングを活用しており、水力試験とサブスケール機の空力試験を行っている。
USSOCOMの新技術担当技術部長Rich Rodriguez、SOFIC2022でのC-130 MACの状況について
MC-130Jフロートプレーンのコンセプトにはメリットとデメリットがある。主な利点としては、ポンツーンの追加で、アドオンフロートキットが実現できれば、SOCOMの既存MC-130Jを使用できることだ。ポンツーンキットがあれば、各C-130Jで大きな構造変更をすることなく水上機に改造できる。水陸両用のMC-130J(MAC)は、以下のレンダリングと非常によく似た外観になるはずだ。
SOFIC 2022では、このAFSOCのMC-130をポンツーンフロートに載せるコンセプトが、水陸両用MC-130Jの実験目標だと確認された (USAF image)
だがMC-130J MAC構想の最大の欠点は、機体が高い位置にあるため後部貨物ランプと側面ドアが高さで不利な位置となり、海面から小型ボートを上運用するクレーンがないため水上作戦が困難になることだ。(新明和US-2は腹部が海面上のため、小型ゴムボートを側面ドアから手で上げ下げすることができる)。 実際、AFSOCのレンダリングでは、MC-130Jの胴体からポンツーンや水面につながるハシゴや階段が描かれている。MACが海面までバラストを落とすことができれば、機体先端部FLIRボールが水没し、敏感な電子機器や光学系が危険にさらされる。 また、コックピットが高い位置のため、MC-130Jフロートプレーンの着陸が困難になる可能性もある。
ロッキード・マーチンは、ここで見ることのできるボート(またはクジラの腹)の外皮を持つ水上機を設計しているが、スケールモデル以上に進展した形跡は見当たらない。Naval Newsは同社に水陸両用MC-130Jのコンセプトと状況についてコメントを求めましたが、ロッキードは質問はすべてUSSOCOMに委ねた。
グアムのアンダーセン空軍基地で行われたコープノース22で、オーストラリア空軍と米空軍の隊員に海上自衛隊の新明和US-2の能力を説明する海上自衛隊の隊員(2022年2月10日)。同盟とパートナーシップのネットワークは、世界の安全保障のバックボーンであり続けています。 (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Yosselin Perla)
Naval NewsがUSSOCOMにMACの状況について2022年8月末に問い合わせたところ、USSOCOM広報のカサンドラ・トンプソン中尉は、MACは2022年8月時点で国防省内の公式事業ではないため、新しいMACニュースで共有すべき内容はないとし、状況は変わっていないと回答してきた。米国政府の契約関連のウェブサイトを確認したところ、C-130J MACは正式なProgram of Recordではないことが確認された。
また、Naval NewsはUSSOCOMに新明和US-2への関心について質問し、回答を得た。
「US-2視察は、USSOCOMがAFSOC(米空軍特殊作戦司令部)と協力し、水陸両用の新技術を分析し、実行可能な取得戦略をめざす市場調査活動の一環であった」。
USSOCOM広報部 カサンドラ・トンプソン中尉
防衛視覚情報配信サービス(DVIDS)配信の写真は、米空軍特殊作戦司令部(AFSOC)が2022年2月10日にグアムのアンダーセン空軍基地で実際に新明和US-2を視察したと確認できるが、特殊作戦の機密性のため、USSOCOMは関心分野やUS-2を取得計画に組み込む可能性について追加のコメントや詳細を提供できない。
したがって、サブスケールモデリング以外に、USSOCOMの水陸両用MC-130Jフロートプレーンの実際の状況は不明で、最終的に米海兵隊(米海軍、米海兵隊、米沿岸警備隊)向けに製造されるかは不明なままだ。USSOCOM MACをDARPAの "Liberty Lifter"と混同しないよう注意する必要がある。
2021年11月9日、空軍特殊作戦司令部副司令官エリック・ヒル少将、第353特殊作戦航空団司令官シェーン・ベセリ大佐と新明和US-2の能力を話し合う海上自衛隊第31航空団の搭乗員。[筆者注:「グラス・コックピット」計器盤は、水上機の外見がやや古典的に見えても、US-2の近代的で洗練された操作系を反映している。] (U.S. Air Force Photo by 1st Lt Rachael Parks)
新明和工業のコメント
2022年8月末、米軍向けUS-2の生産可能性についてNaval Newsが問い合わせたところ、新明和工業航空機事業部営業部より回答があった。新明和はUS-2は海上自衛隊向けに開発したが、センサー装備や生産時期、1機あたりの価格などについては、顧客の意向を理由に回答できないとしている。
Naval News: US-2の外側に武器の搭載は可能か?
新明和工業株式会社:機外に武器を搭載するのは困難です。
Naval News:米軍からUS-2のデモを依頼されたことはあるか?
新明和工業株式会社:AFSOCは日本でUS-2に搭乗し、その様子はAFSOCのウェブサイトにアップロードされています。
Naval News:US-2を米軍向けに生産できるか、可能ならどんな改造が必要なのか。
新明和工業株式会社:AFSOC向けUS-2の製造は可能です。当社はやる気満々です。米国企業と連携して進めています。整備マニュアル等や装備品はAFSOC仕様にする必要があります。
Naval News: US-2の機体価格、製造工期は?
新明和工業株式会社:US-2の価格はAFSOCの要求で大きく変わるので、この質問に答えるのは難しいです。また、リードタイムについてもお答えできません。
Naval News: US-2はどこまでメンテナンスが必要で、耐用年数は?オーバーホールや整備を行う間隔は?
新明和工業:海上で離着陸を行うため、定期的なメンテナンスの間隔は短い。耐用年数も答えられない。
Naval News: US-2は他の水上機と比較してどんなメリットがあるのか?
新明和工業:US-2の最大の特徴は、水上で非常に短距離で離着陸できることです。その他水上機と比較して、圧倒的に短距離です。新明和は、US-2がC-130J MACよりも米軍の要求に応えられると確信しています。(新明和は、US-2は波高3mの海面に着水できる世界唯一の水陸両用機と述べている。)
Naval News: US-2は何機作られたのか?
新明和工業株式会社:9号機を製造中です。
Naval News:US-2は陸上水上でのタキシー運用が可能なのか?
新明和工業株式会社:US-2は陸上で離陸できます。
Naval News:US-2に暗視機能があるか?
新明和工業株式会社:US-2には暗視機能はありません。
Naval News:US-2は空中給油が可能か?また、海上での給油は可能か?
新明和工業株式会社:空中給油能力はありません。洋上で船から給油する能力はあります。(US-2は時速298MPHまたは480KMHで飛行でき、航続距離は2,920マイルまたは4,700キロメートル。離水距離は280m、着水距離は330m。)
海兵隊岩国航空基地で見学者を待つ日本の新明和US-2(2022年7月8日撮影)。US-2は、人員救助や有事対応を目的とした水陸両用機だ。 (U.S. Air Force photo by Senior Airman Gary Hilton)
筆者のコメント
推測の域を出ないものの、米空軍がUS-2を調達した場合、USSOCOMに利点と問題点の両方が生まれる。現在の生産数は少なく(新明和US-2はこれまで9機しか製造されていない)、実際に米軍特殊作戦部隊や海上部隊のために購入された場合、米軍はUS-2を特殊水上機と見なすかもしれない。US-2は非武装で、精密誘導弾を束ねたパレットを投下できる後部貨物ランプがないため、武装化は難しいようだ。しかし、米海兵隊のKC-130Jハーベストホークには、デリンジャー・ドアと呼ばれる精密誘導弾発射装置が搭載されている。ラックには最大10発の弾丸が収納できる。米軍仕様US-2にもこのようなデリンジャードアが追加され、US-2の与圧キャビン内でスタンドオフの武装ができるかもしれない。また、スイングアーム式の機銃マウントをサイドドアに設置し、折り畳んで出入り口を確保するオプションも考えられる。
米海兵隊のKC-130Jハーベストホークに、デリンジャードアと呼ばれる加圧式スタンドオフ、精密誘導弾発射装置と弾薬10発を収納するラックを取り付ける改造が施されている((Photo: NAVAIR)
新明和のウェブサイトにある3分間のビデオでは、RHIB(Rigid Hull inflatable boat)が、ドアの上のノブに巻き付けられたロープでUS-2のサイドドアに吊り上げられる様子が映し出されている。乗組員はロープを引っ張り、RHIBを横向きにドアに押し込んでいる。RHIBはサイドドアから押し出して展開される。乗員がUS-2からRHIBに乗り降りするのは、かなり速くできるので、救難やSARの任務で、この方法が生まれる受け入れられるかもしれないが、重い貨物や武装の積み下ろしで、ロープ1本でRHIBを結ぶのは、RHIBをMC-130J MAC内部から後部ランプから発進させるのと比べると、大海原では難しいかもしれない。
新明和US-2型水上飛行機が採用されれば、米国沿岸警備隊のVisual Board Search and Seizure(VBSS)、高速艇の追跡、麻薬、海賊、密輸の阻止にも大きな助けとなり、資産となる可能性がある。
US-2のサイドドア脇にオレンジ色RHIBが展開された。ドアと上にあるオレンジ色ノブに注目。ロープを結び滑車としてRHIBを昇降させる (Photo: USMC)
もう一つの疑問は、US-2が米国向けに製造された場合、米国政府支給品(GFE)を装着したUS-2と、日本製装備を英語仕様に改造したUS-2を比べて、どれだけ信頼できるのかという点だ。USSOCOM(および米軍)は、GFE装備(ジャマー、センサー、カウンターメジャー、ナイトビジョン、データリンク、安全な通信)を追加することが多いので、人道支援、有事、SAR以外のマルチロール用途だと、AFSOCのUS-2はどこまで複雑になるのか?
AFSOCが戦闘装備仕様のUS-2を必要とするならば、「短い定期メンテナンス間隔」は、長いメンテナンスダウンタイムになり、アメリカのUS-2は、外洋に展開するより頻繁に桟橋に停泊することになるかもしれない。新明和は、AFSOCと協力することで、アメリカの特殊部隊の要求を満たせると確信していると述べた。
しかし、米軍のUS-2は、米海軍で切実に必要としている輸送機、水上機補給機、墜落パイロットのSAR水上機となりうる。また、米軍のUS-2は、増え続ける無人の水上・水中艦艇の整備、燃料補給、再武装、監視を行うことができる。新明和US-2は、世界の海という「距離の専制」を克服し、米軍の特殊作戦や海上部隊で、可能性を与えるソリューションになるかもしれない。■
ShinMaywa and USSOCOM Comment on the US-2 Seaplane - Naval News
Peter Ong 08 Sep 2022
Posted by : Peter Ong
Peter Ong is a Freelance Writer with United States and International Federation of Journalists (IFJ) media credentials and lives in California. Peter has a Bachelor's Degree in Technical Writing/Graphic Design and a Master's Degree in Business. He writes articles for defense, maritime and emergency vehicle publications.
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