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カタールでの2022ワールドカップ(11月21日開幕)に備え、タイフーン戦闘機隊はじめハイテク警備体制が着々と準備されている

 

メイン会場となるルサリスタジアム June 20, 2022 in Doha, Qatar. (Photo by David Ramos/Getty Images)




国際支援とハイテクで、ワールドカップ大会で不測の事態発生を防止する



2022年FIFAワールドカップが数カ月後に迫り、カタールはユーロファイター・タイフーン第1陣を受領した。

 半島西部のドゥハン・タミム空軍基地の盛大な式典で、F-15QA、NH-90戦術輸送ヘリコプターとその海軍仕様機、ラファール戦闘機も披露された。

 タイフーンは、イギリスと共同運営のタイフーン合同飛行隊(通称12飛行隊)の一部となる。この飛行隊は、11月21日から12月18日までの間、ワールドカップで航空警備を担当する。

 「カタール首長国連邦空軍(QEAF)との共同飛行隊であるタイフーンが、大会期間中に空域をパトロールすることをうれしく思います」と、ベン・ウォレス英国国防相は5月に述べている。

 同機はテロ対策任務として、カタールが敷設しようとしている警備体制で最新の投入装備となる。


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中東アナリストのアンドレア・クリーグAndrea Kriegは、カタールは不安定な地域とも友好関係を保っていると述べている。「このため、国家主体や代理勢力がワールドカップを悪用することは考えにくい」とし、テロ攻撃など非対称的な脅威にも、カタールは十分な態勢を整えていると述べている(英国は、そうした脅威を「排除できない」と認めているが......)。

 カタールは国際パートナーと協力し、空、海、地上のセキュリティを強化するためハイテク機能を獲得している。以下紹介する。



空の警備体制

2020年6月に合同飛行隊として編成されて以来、12飛行隊はカタールで定期的に演習を行っており、今回のワールドカップ派遣は事前計画されたものと重なると英国国防省は発表している。

 タイフーン自体は、2017年12月にカタールとBAEシステムズが、同機24機とホークMk167高等訓練機9機を総額80億ドルで調達する契約を結んだ成果である。

 イタリアのレオナルドは、QEAFユーロファイター・タイフーンの機体とエイビオニクスの両方で寄与している。タイフーンには、ECRS Mk0レーダーと、Praetorian DASS(作戦環境を監視し、積極的に対応し、対空および対地の脅威から保護することを目的とする)とPIRATE IRST(Passive InfraRed Airborne Track Equipment - 赤外線捜索・追跡)が搭載されているが、いずれもレオナルドが主導している。

 カタール領空は、Kronosレーダーと関連する指揮統制センターのネットワークで構成するレオナルドの低空監視・防衛システムで守られる。レオナルドは、ハマド国際空港の航空管制用電子機器と気象観測機器すべてを担当し、ワールドカップに参加する選手や観衆の到着を確実なものにする。

 また、同国は2018年8月契約で、レオナルドからNH90ヘリコプターの納入を受けた。機体には、フランスのタレスがENRレーダー、エイビオニクス、EW CATS(電子戦、ヘリコプター用小型空中脅威調査機)、無線機、伝送データリンクを供給している。

 レオナルドは、海軍用と戦術用のNH90ヘリコプター28機のうち6機を納入しており、プログラムは順調に進んでいる。カタール空軍に加わるこれらのヘリコプターは、イタリアの陸海軍の支援のもと、飛行士と技術者が広範な訓練を受け、運用を開始している。

 King's College Londonの主任講師であり、ロンドンを拠点に中東地域に特化した戦略リスクコンサルティング会社MENA analyticaのCEOであるクリーグは、NATOもQEAFを支援する予定と述べ、「カタールは世界でも有数の領土を持つ空軍を持っており、その空域への深刻な脅威に対抗、抑止できる体制が整っています」と評する。


海上警備体制

半島が大部分を占め、陸上国境は南のサウジアラビア王国のみというカタールにとって、海からの脅威の接近を防ぐことは、領空の確保と同様に重要だ。そのため、カタールは近年、レーダーや監視機能を備えた高性能船舶の調達契約を多数結んでいる。

 安全保障への投資の一環として、カタール海軍は2016年に締結した約50億ドル契約で、イタリアの造船会社フィンカンティエリが建造したアル・ズバラ級コルベット4隻、上陸プラットフォームドック、海上巡視船2隻を発注している。4隻目のコルベットは、今年4月下旬にムッジャーノ(ラ・スペツィア)造船所で進水した。

 新造船はレオナルドの戦闘・監視システム、特にレオナルド3D AESA Grand Kronos海軍レーダー、IFF(Identification Friend or Foe)識別装置とトランスポンダー、IRST監視・追跡スイートからなるコマンド管理システムを搭載している。

 今年初め、Dimdex 2022展示会で、カタール海軍は、海軍オペレーションセンター(NOC)を開発するため、レオナルドと新契約を締結した。同センターは、海軍がカタールの領海、排他的経済水域および接続水域を監視し、管理することを保証する。レーダーや海上の追跡をリアルタイムで制御する同センターには、電子戦システムが含まれる予定だが、ワールドカップに間に合う形で稼働できるかは、今のところ不明だ。


地上の警備体制

大会期間中は、航空機や船舶による警備が行われるが、警備専門家が特に懸念するのは、テロや暴走した群衆といった非対称的な脅威の標的になる大会そのものだ。

 「他のスポーツイベントと同様、ワールドカップ期間中の最大のリスクは、群衆の統制だ」とクリーグは言う。「ドーハのような一つの都市に大勢が集まると、群衆の動員、暴動、喧嘩などのリスクが生じる。かなり狭い範囲に多数の人々が突然移動することで、集団パニックが発生する可能性がある。

 「カタールの法執行機関は、世界各地のパートナーとともに、このようなイベントのため訓練を受けており、群衆統制に関しても十分な備えをしています」。

 クリーグは、同大会にイスラエル人、サウジアラビア人、イラン人など、ライバル国、敵対国の国民が集まるため、事件が起こる危険性が高くなると指摘する。

 そのため、カタールが採用すると予想される最重要技術として、情報収集、監視、諜報システムなどがある。

 クリーグは、カタールが「視聴覚センサー、ドローン、CCTVを完備した広範な統合監視ネットワークを開発し、国家安全保障センターに送り込んでいる」と述べた。同センターでは、潜在リスクが評価され、脅威が顕在化する前に対処できる可能性があります」。タレスの空中・海上システムは、地上でも統合されている、とクリーグは述べている。

 スタジアムのすぐ近くでは、カタールはユタ州に本拠を置くフォーテムテクノロジーズFortem Technologiesとドローン対策で協力していると、同社が7月に発表している。

 同社CEOのティモシー・ビーンはBreaking Defenseに対し、スカイドームとして知られる同社システムは、「低コラテラルダメージが必要な場合にキネティックディフェクションで世界最高」と語っている。このシステムに含まれるDroneHunterは、名前が示すように、文字通り上空で他のUAVを狩り、ネットを発射して脅威を繋ぎ止め、指定場所に移動させることで排除する。

 ビーンは、スタジアムや試合の安全を確保するために配備されるシステムの数についての質問には答えず、カタールでのシステムのテストや、同国の既存レーダーやデータ共有ネットワークとの相互運用性についての詳細も説明しなかった。かわりに「カタールは素晴らしい体験を保証するためにあらゆる手段を尽くしている」と述べ、「来場者の安全と安心のため慎重に計画している」とも語った。

 クリーグは、航空・海上警備の準備と同様に、ドローン防衛でも、不正な民間ドローンは別として、それほど大きな動きはないだろうと考えている。

 よりエキゾチックで、しかし潜在的にはるかに致命的な脅威に対し、NATOは6月に「化学、生物、放射線、核(CBRN)物質による脅威への訓練」を含む支援を提供すると発表し、スロバキアとNATOの合同CBRN防衛センター(チェコ)から提供される。

 このほか、ルーマニアがVIP護衛や簡易爆弾対策などの訓練を提供する。

 さらにパキスタンが治安強化のためカタールに兵力を提供する可能性があると報じられた。

 以上から、2022年大会では、国家、代理勢力、テロ集団、あるいは単なる乱暴な群衆からの脅威は比較的少ないとクリーグは見ている。■


From fighter jets to counter-UAV tech, Qatar prepares World Cup security - Breaking Defense

By   AGNES HELOU

on September 02, 2022 at 2:25 PM


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