スキップしてメイン コンテンツに移動

ガスパイプラインを自ら破壊したロシアが次に狙うのは国際通信海底ケーブルの切断だ。ロシアの思考が邪悪すぎる

ノルドストリーム・パイプラインへの攻撃でプーチンがエナジーを武器化した



海底パイプラインの破壊工作はロシアの作戦だ


シアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」と「ノルドストリームII」の圧力が突然低下したのを欧州当局が月曜日に気付いた。それ以来、両パイプラインで計3回(NS1で2回、NS2で1回)の漏れが見つかった、デンマークの地震学者は、同地域でマグニチュード2.1および2.3程度の爆発を記録している。


漏洩は、デンマークの戦略的前哨基地ボーンホルム島のすぐ東のバルト海で発生している。ロシアによる妨害行為であることは間違いない。ドイツを含むいくつかのヨーロッパ諸国も、同じ結論に達した。実際、CIAはまさにその可能性をドイツに警告していたと伝えられている。


パイプラインからのガス放出(圧力を維持するために充填されていたが、現在は使用されていない)により、船舶はガス漏れ箇所から5海里、航空機は少なくとも3,280フィート上空離れるよう勧告されている。バルト海で巨大な泡のような円を描きガスが浮上している写真は、近隣諸国に気になるが、もちろん、問題の一部にすぎない。


この規模のメタンガスが大気中に放出されることで環境への影響もさることながら、ボーンホルム周辺の海底は環境的に敏感な場所だ。ボーンホルム東側の海は、第二次世界大戦後、化学兵器や軍需品の大規模な投棄場となった。バルト海には、4万トンから10万トンが投棄されたと考えられている。ソ連は戦後、マスタードガスなど約4万トンの化学兵器をボーンホルム近郊の投棄場に投棄したとされる。


このことは、パイプライン建設で大きな問題となった。プロジェクトを建設したコンソーシアムは、機密性の高い場所に参加するため、錨を下ろす船舶の特別許可を確保する必要があった。投棄場所数カ所は判明しているが、記録管理の不備、嵐、航行ミス、事故、さらに単に軍が無造作に荷物を投げ捨てただけで、バルト海底の危険物の範囲と位置が完全に判明できなくなる。


今回の最新の攻撃は、ロシアが西側諸国にダメージを与え、圧力をかけるためなら、あらゆる手段を利用し続けていることの顕著な例として、明確に読み取れる。プーチンは、ウクライナでの戦争と西側への対抗を、すぐ解決しない長期的な対立とみている。だからこそ彼は、(影響力の買収も含め)多額の資金と政治・外交資本を投入したノルドストリーム・パイプラインへの妨害行為により、ヨーロッパとの関係を文字通り断ち切るつもりなのだ。


ロシアが支配するパイプライン運営会社は、「ガス輸送インフラ復旧の時間枠を見積もることは今は不可能だ」と述べ、早急な解決に冷や水を浴びせた。ノルドストリームパイプラインシステムで同日中に3ラインで起きた破壊は、前例がない。


今、プーチンの2度目のウクライナ侵攻でロシアとのエナジー関係をますます断絶させようとする欧州の対応で、パイプラインが機能しなくなり、プーチンは創造的な利用法を見出した。


今回の破壊工作は、ロシアの水中インフラ破壊能力を誇示する意味もある。タイミングは偶然ではない。先日発表されたロシアの出動と並行して、デンマーク、ノルウェー、ポーランドの首脳が合同で、ノルウェーのガスをバルト海経由でポーランドに送る新しいパイプラインの開通式典を行ったばかりだ。


ノルドストリームの予行演習は、ヨーロッパにエナジーを供給するパイプラインに向けた将来の攻撃を予見しているのかもしれない。もしヨーロッパが、ロシア産の代わりにアルジェリアやアゼルバイジャン、ノルウェーからガスを輸入したいと思えば、プーチンはパイプライン攻撃で供給を阻止するかもしれない。ノルウェーは石油・ガス施設の警備を強化すると本日発表した。


この攻撃により、火曜日にはヨーロッパでガス料金が最大12%まで高騰した。秋口にもかかわらずエナジー価格が高騰し、家庭や産業が疲弊している欧州に値上げはさらなる痛手となる。


さらに、プーチンはエナジー・インフラへの攻撃に加え、他の重要な海底インフラ、すなわち光ファイバー・ケーブルも次の標的であると西側に示しているのかもしれない。ロシアは世界の海上に張り巡らされた重要な光ファイバーケーブルを調査していることで知られている。1月には、ノルウェー本土と北極圏のスヴァールバル諸島を結ぶ光ファイバーケーブルが切断される事故が発生し、その原因は「人的影響」の可能性が高いとみられている。


ノルドストリーム・パイプライン破壊工作の最後の側面は、ロシアが外交目的のため説明を捻じ曲げていることである。今回の漏洩事件に対するロシアの声明、「緊急調査を要する前例のない状況」「このニュースを非常に懸念している」は、その伏線だろう。まもなく、法の支配に対する冒涜として金銭的な要求を口実に、西側諸国(ロシアは明らかに関与を否定するだろう)に責任を転嫁する試みが行われてもおかしくない。


多少の混乱はあったが、欧州がロシア産のエナジーから脱却しようと努力し、来るべき冬を前にガス貯蔵量を増やすことに全体的に成功したことで、クレムリンは苛立たされたに違いない。今週のノルドストリーム・パイプラインへの妨害行為には多くの意味があり、ヨーロッパを混乱させる意図がある。西側諸国は、プーチンのこの作戦が、今後起こりうる事態の前触れであると意識しておく必要がある。■


 Russia's Attack on Nord Stream Pipelines Means Putin Has Truly Weaponized Energy - 19FortyFive


WRITTEN BYDaniel Kochis

Daniel Kochis is a senior policy analyst in European Affairs in the Margaret Thatcher Center for Freedom. He specializes in trans-Atlantic security issues regularly publishing on U.S. policy in Europe, NATO, U.S.-Russia relations, and Arctic issues. Kochis is also a regional author for the Heritage Foundation’s annual Index of U.S. Military Strength.



コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...