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空母建造を断念し、弾道ミサイル潜水艦整備を重視する南朝鮮23年度国防予算は現実的な選択。だが、狙いが北朝鮮に限定されていないことは要注意。

 

U.S. Navy Photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Michael Chen/Released.

南朝鮮政府は、新空母の代わりに、北朝鮮への対決戦略に適したミサイル潜水艦に予算を投入する

CVXとして知られる南朝鮮初の空母建造の野心的な計画が深刻な危険にさらされているようだ。同プロジェクトが、南朝鮮の2023年防衛予算案で予算計上されなかったというニュースだ。このことは、ソウルのF-35Bステルス戦闘機運用計画にも疑問を投げかけるが、弾道ミサイル発射可能な土山・安昌浩Dosan Ahn Changho級攻撃型潜水艦を含め、さらに資金を投入されるはずの潜水艦部門にとっては朗報となるはずだ。

CVXが2023年に予算計上されないとの確認は、昨日Naval Newsが伝えたところだ。Naval Newsは南朝鮮の空母計画が次の防衛予算で敗退する可能性があると予測していた。

昨年開催された国際海事防衛産業展2021(MADEX2021)で展示された現代重工業(HHI)のCVXの設計模型。YouTube Screencap

2023年の国防予算案が2日に発表され、総額57兆1000億ウォン(約425億ドル相当)と、今年より4.6%増となることが明らかになった。

2023年予算で、新規取得プログラムには2%増の17兆ウォン(約127億円)が充てられ、残りは賃金や整備など軍の日常的な運営費に充てられる。金曜日に予算案が国会に提出され、承認される予定だ。

CVX計画は、今回の予算案で最も注目される損失であり、北朝鮮の核の脅威を考慮し優先順位の変化と、おそらく空母の設計自体がさらに野心的になったための犠牲のようだ。特に、尹錫烈(ユン・ソクヨル)新大統領政権は、北朝鮮へのタカ派的なアプローチを含め、前政権と大きく異なる政策的立場を強調している。

以前のLPX-II計画では、米海軍の設計と同様に、短距離離陸・垂直着陸機(STOVL)のF-35Bを搭載する揚陸強襲艦を拡大設計する想定だった。

 

当時LPX-IIと呼ばれていた南朝鮮空母の初期完成予想図。South Korean Ministry of Defense

最新のCVXプロジェクト案では英国海軍のクイーン・エリザベス級のツイン・アイランド型上部構造と「スキー・ジャンプ」離陸路を含む、大型航空母艦の設計となっていた。

現代重工業(HHI)の設計案は、全長850フィート、幅200フィート、総排水量約45,000トン、最大約20機のF-35Bを運用するとしていた。

また、後部には小型の回転翼式無人機を運用する補助甲板や、無人水上機(USV)や無人潜水機(UUV)を展開する適応型ウェルデッキも特徴だった。

大宇造船海洋工学(DSME)が提案の別のCVX案は、艦首の離陸ランプがないものの、二重アイランド構造を持つ、ややオーソドックスなものであった。この艦は全長860フィート、全幅150フィート、排水量約4万5,000トン。F-35Bを16機、中型ヘリコプターを6機同時に搭載するとしていた。

DSME社のライバルCVXの設計模型。YouTube Screencap

CVXの設計ニ案は、南朝鮮海軍の現行独島級揚陸ヘリコプター艦(LPH)よりかなり大きい。独島級は、全長652フィート、幅101フィート、排水量19,500トン。

CVX設計案はともに、STOVL型F-35B搭載を前提にしているが、ソウルはさらに大きく、高能力の空母を検討しているのではないかとの兆候さえあった。斜めデッキ、離陸ランプ、拘束ギアを装備したものだった。新世代戦闘機KF-21の艦載機や大型ドローンによる短距離離陸・回収(StoBAR)作戦が可能にするはずだった。

固定翼機運用空母は、南朝鮮にとって重要な新展開で、莫大な投資であったことは明らかだ。

例えば、英国海軍のクイーン・エリザベス級空母は、1隻約23億ポンド(約28億5000万ドル)の税金が投入されており、年間運用コストは約9600万ポンド(約1億1200万ドル)である(航空団はここに入っていない)。

以前、新空母の価格は18億3000万ドル程度になりそうと報じられたが、これは非常に楽観的と思われ、F-35Bのコストは20機取得で約27億ドルと予想されていた。

南朝鮮は通常離着陸型のF-35Aを運用中で、後続の発注には空母搭載型のF-35Bが含まれる見込みだ。ここでは、2022年7月に南朝鮮上空で米空軍と南朝鮮空軍のF-35Aが一緒に飛行している。U.S. Air Force photo by Senior Airman Trevor Gordnier

以前、DSME関係者は、CVX設計契約は2022年に受注できると述べ、南朝鮮は2030年代初頭までに空母を就航させることができるとまで予想していた。

これがことごとく実現できなくなりそうになってきた。F-35Bの用途を見つけることは今も可能で、既存の大型揚陸強襲艦に搭載するのなら大規模改造が必要になると思われる。より現実的なのは、陸上基地運用だろう。この場合、北朝鮮のミサイル攻撃に弱い滑走路を避け、生存性を高めるためジェット機を分散させることができる。また、飛行距離もF-35Bに適しており、南朝鮮は通常型離着陸機であるF-35Aを運用中のため、その恩恵も受けられる。

コスト面もさることながら、空母の有用性、特に北との衝突の可能性を考えれば、ますます疑問視されているようだ。空母は間違いなく海洋力の象徴であり、中国や日本と歩調を合わせるのには役立つが、新政権下で防衛態勢の中心理念として推進されているいわゆる「3軸システム」には適合しない。

3軸システムとは、北朝鮮からの核攻撃に対応できる幅広い防衛体制を構築するためのものだ。まず、キルチェーンシステムは、必要に応じ平壌の核・ミサイル施設に先制攻撃を行い、ソウルを防衛する。2つ目は、南朝鮮を狙う北朝鮮の弾道ミサイルが発射されれば、それを破壊するための南朝鮮防空ミサイルネットワークがある。第三に、KMPR(Korea Massive Punishment and Retaliation program、圧倒的対応とも呼ばれる)は、北朝鮮が先制攻撃を行った場合に、通常兵器による報復を投入する取り組みだ。

2022年5月25日、北朝鮮が日本海に向け弾道ミサイル3発を発射し、ソウル駅で北朝鮮のミサイル発射実験のファイル映像が入ったニュース放送を映し出すテレビ画面を見る人々。Photo by JUNG YEON-JE/AFP via Getty Images

急速に発展中の潜水艦艦隊がKMPRで主要役割を果たす予想で、3軸システムに全体で5兆3000億ウォン、約39億ドルが投入されるとあり、2022年より9.4%増加した。

南朝鮮で最新の土山安昌浩級ディーゼル電気攻撃型潜水艦(別名KSS-III)は、当初からKMPR計画が求める生存可能な通常攻撃能力を提供する設計だ。

2021年8月13日に行われた「土山安昌浩」の就航式。DSME

もちろん、北朝鮮との紛争では、CVXがステルスF-35でスタンドオフレンジから攻撃任務を遂行する可能性もあるが、The War Zoneが過去に指摘したように、空母は北に対するその他作戦に適しているとは言いがたい。

2023年予算案では、KSS-III潜水艦プログラムに2,486億ウォン、約1億8,500万ドルが計上される。

土山安昌浩級で、南朝鮮は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)潜水艦を運用する国のグループに加えることになる。SLBMとしては珍しく、搭載するのは通常弾頭だ。昨年9月頃、同潜水艦の1番艦がLBMの水中射出実験に成功した。その1番艦は先月、海上に展開し、初の作戦哨戒を開始した。

KSS-IIIの1番艦「ドサンアンチャンホ」の就役式に用意された公式ビデオ。

土山安昌浩級は、水中重量が約3,800トンと、これまでの南朝鮮潜水艦よりかなり大きく、燃料電池を用いた空気独立推進システムを搭載している。初期のバッチI型3隻は各6SLBM発射管を基搭載しているが、巡航ミサイルの搭載も可能だ。

SLBM自体の詳細はほとんど知られておらず、Hyunmoo 4-4またはK-SLBMなど各種名前で呼ばれている。報告によると、同ミサイルの射程は311マイルで、ヒョンムー2B弾道ミサイルの海軍型の可能性がある。

南朝鮮のSLBMは、地上配備型短距離弾道ミサイル「ヒョンムー2B」が原型とされる。SIPA VIA AP

SLBMは、北朝鮮のミサイル能力拡大に対応するためソウルが開発したミサイルプログラムの1つだ。その他には強力な陸上兵器もあるが、SLBMは生存性の高いオプションとなり、北の先制攻撃のリスクを念頭に置けば特に重要となる。

ソウルのミサイル計画は、米国との二国間協定に基づくミサイル射程距離に関する制限が解除されたことで可能になった。バイデン米大統領と文在寅前南朝鮮大統領の間の合意により、制限は完全に撤廃された。

長距離ミサイル全般、そしてKSS-III潜水艦が搭載するSLBMは、KMPRドクトリンに関わるものだ。

北が核攻撃を行った場合、潜水艦の生存能力により、陸上ミサイルが破壊されても、想定どおりの対応が可能になる。SLBMは政権目標や指揮統制施設に照準を合わせ、巡航ミサイル連射よりも知られることなく、より大きな運動能力で攻撃が可能となる。この準第二次攻撃能力があれば、北朝鮮の侵略を思いとどまらせることにつながるはずだ。

重要なのは、空母とSLBM搭載潜水艦の両方が、半島有事以外の場面でも南朝鮮に力を発揮する方法を提供することだ。特に空母計画は、北朝鮮だけでなく、中国や日本といった地域ライバルが関与する潜在的な事態にも関連しているように思われていた。新政権の中国に対するスタンスの変化も、CVX予算の削減の一因となったかもしれない。最後に、空母があれば、現在西太平洋で行われている訓練のように、米国などとの大規模な海軍演習に深く参加することも可能だっただろう。

しかし、空母と対照的に、潜水艦計画は非常に順調に見える。土山・安昌浩(アン・チャンホ)級バッチIIでは、SLBM発射管を6から10に増強する。

原子力潜水艦の可能性も議論されている。ミサイル規制が撤廃されたことで、これら(および以前の)潜水艦も、射程がかなり長い新型SLBMを搭載できる可能性が出てきた。また、KMPR構想は通常兵器をベースにしているが、南朝鮮が核弾頭開発にも着手するとの憶測が以前からある。SLBMは、その際に当然の選択肢となる。

南朝鮮のSLBM開発で特に注目されるのは、急速に北を凌駕しつつあるように見えることである。平壌はかなり定期的に核SLBMをパレードしているが、意味のある形での海上抑止力の運用は、今のところ非常に限られている。

2021年1月のパレードで公開された北朝鮮のSLBM「プクグソン5」 Korean Central News Agency

SLBMの能力だけでなく、ソウルは抑止力に関し対米依存を減らすことができる。潜水艦は、北朝鮮との紛争において、巡航ミサイルによる精密攻撃、機雷敷設、特殊部隊投入、さらに北朝鮮のSLBM潜水艦シンポ級を追い詰めるなど、多くの役割を担える。

ソウルは少なくとも今のところ、SLBM潜水艦部隊の利点が空母を上回ると判断しているようだ。■

 

South Korea Drops Aircraft Carrier Ambitions, Doubles Down On Submarines

BYTHOMAS NEWDICKSEP 1, 2022 1:48 PM

THE WAR ZONE


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