次期エンタープライズになるフォード級空母が起工されました。以下、米海軍の広報資料からお伝えします。
プログラム・エグゼクティブ・オフィス・エアクラフト・キャリア広報部発表資料
ヴァージニア州ニューポートニューズのHII-ニューポートニューズ造船所(NNS)で2022年8月27日土曜日、オリンピックメダリストのシモーン・バイルズSimone Bilesとケイティ・レデッキーKatie Ledeckyが、「ここに、USSエンタープライズのキールが真正かつ公正に敷かれたと宣言します」の言葉とともに、鋼板にイニシャルをチョーキングし、熟練溶接作業員がエンボス加工し未来のUSSエンタープライズ(CVN 80)のキールに貼り付けた。
レデッキーは全米最新鋭の空母の歴史的な起工式に出席し、バイルズはテキサス州スプリングから事前録音されたメッセージで参加した。5年前の2017年8月24日、バイルスとレデッキーは、USSジェラルド・R・フォード(CVN78)級空母の3番艦エンタープライズ建造の最初のマイルストーン、ファーストカットオブスチール式典に出席していた。
土曜日、NNSの溶接工エフォニー・キングとジョナサン・リショーが小さな鋼板に選手のイニシャルを溶接し終えると、NNSのリードリガー、マイク「チリ」ウィリアムズがレデッキー選手に無線機を渡し、レデッキー選手はNNSのクレーンオペレーター、チャーリー・ホロウェイに688トンのキールユニットをドライドックに下ろすよう命じた。これは、CVN80が完全に組み立てられると、エンタープライズの前方半分を支える部分だ。セレモニープレートは、キールに永久に貼り付けられる。
2022年4月5日、NNSがエンタープライズの最初の「スーパーリフト」でキールユニットを搭載して以来、エンタープライズ建造は予定通り進んでいる。最初の主要構造部材が設置され、作業員は、事前装備済みモジュールを結合し、乾ドックで空母の組み立てを続けている。
空母プログラムエグゼクティブオフィサー(PEO CV)のジェイムズ・ダウニー少将Rear Adm. James P. Downeyは、「これは艦とクラスにとって重要なマイルストーンです」と述べた。「造船所はUSSジェラルド・R・フォードとジョン・F・ケネディ建造から得た教訓を、エンタープライズ建造に適用しています。我々の業界パートナーは、統合デジタル造船のベストプラクティスをプロセスに適用しており、コストとスケジュール両面で効率化を実現している」。
ジェラルド・R・フォード級新造船計画室を率いるブライアン・メトカーフ大佐は、本艦の建造効率について例を挙げた。「CVN 80とCVN 81を2隻購入することで、初期建造プロセスで効率化が実現できました。また、大型スーパーリフトをあらかじめ装備した空母建造は、これまでのフォード級船体より大きく効率化しました」。
CVN80のドライドック建艦プログラムはスーパーリフト131基で構成する。これに対し、USSジェラルド・R・フォード(CVN78)は162基、未来のUSSジョン・F・ケネディ(CVN79)は155基のスーパーリフトで建造された。
エンタープライズは、アメリカ独立戦争でイギリス軍から捕獲後、1775年就役したスループ艦として誕生し、この名を冠したアメリカ海軍軍艦は9隻目となる。最後のエンタープライズ(CVN 65)は、1961年から2017年まで世界初の原子力空母として活躍し、現在は造船所近くに係留され、環境影響評価結果と廃棄方法に関し海軍の決定待ちだ。
エンタープライズの伝統
第二次世界大戦中、USSエンタープライズ(CV6)のチーフヨーマンを務めた99歳のビル・ノーバーグ退役兵曹は、起工式に出席し、建造者と船員が一体となった遺産を称えた。ノーバーグは、USSホーネット(CV8)から発進したドーリットル空襲やミッドウェー海戦など、太平洋戦争中の重要局面を直接目撃した。ノーバーグの「エンタープライズ」は、その名を冠した7隻目だった。
PEO航空母艦エグゼクティブ・ディレクター代理であるケヴィン・コーミアKevin Cormierは、ノーバーグがCV 6とCVN 80をつなぐ存在だと指摘した。「造船とメンテナンスは過酷で不朽の活動です。乗員に奉仕し、海上の挑戦に応える戦闘艦を準備する仕事は、これまで以上に重要です」。
設計・建造から不活性化・廃棄に至るまで、艦の全使用期間を通じ空母艦隊を建造・維持・支援する乗組員と艦の設計者・建造者の努力が連鎖的に存続する。コーミアは、ジェラルド・R・フォード級新造船プログラムオフィスの副プログラムマネージャーを兼務している。
式典出席者の顔ぶれ
エリック・レイヴン海軍次官Under Secretary of the Navy Erik K. Ravenが基調講演し、今回の式典の意義を語った。「この式典は、この造船所で、この国で、この日に、新たな艦の生命が、多くの世代のアメリカ国民、軍人、友人、家族、指導者、パートナー、同盟国に奉仕するため始まったことを示すものです」。
レイヴンはさらに、「先代のビッグEの目の前で、我々は今、次世代エンタープライズ、最新の未来の海軍艦艇、CVN 80のキールを置く」と宣言した。
レイブンはまた、2022年は空母運用100年の節目だと指摘した。1922年3月20日、USSラングレー(CV 1)は実験艦としてスタートしたが、すぐに「革命の触媒となり、海上戦闘を変え、海軍の活動範囲の拡大が証明された」と述べた。「空母は強さと希望の象徴となり、紛れもない米外交の代表として世界で認識されている。未来のエンタープライズは、海と世界の自由を守る我々のコミットメントの、もうひとつの確かなシンボルとなるだろう」。
レイブンは2022年4月13日に海軍次官の職責に就いた。海軍省の最高執行責任者(COO)および最高管理責任者(CSO)を務める。
米艦隊司令官ダリル・コードル大将Adm. Daryl Caudleは、「エンタープライズは、比類なき機動性と航続距離、先進の戦闘・制御・通信システム、艦内原子力発電、さらにおそらく最も重要な、前例のない速度と持続性を備えた最も堅牢かつ致死的な次世代攻撃機を運用できる能力など、その戦力を通じ統合抑止構想を進める鍵となる」と発言した。
このほか、ロブ・ウィットマン下院議員Rep.Rob Wittman(共、バージニア1区)、エレイン・ルリア下院議員Elaine Luria(民、バージニア2区)、ボビー・スコット下院議員Bobby Scott(民、バージニア3区)など、著名な参列者がいた。
エンタープライズ起工式には、ニューポートニューズ・シップビルディング社長のジェニファー・ボイキンJennifer Boykin、大西洋海軍航空部隊司令官ジョン・マイヤー少将RADM John Meier、PEO CV大将ジェームズ・P・ダウニー大将、ニューポートニューズの造船監督官ハンナ・クリーワルト大佐Capt. Hannah Kriewaldtら海軍と業界の代表が出席した。
艦のスポンサーについて
同艦のスポンサーは、国際的に名が通っている。レデッキーは、2012年、2016年、2020年の3大会で10個のメダルを獲得したオリンピック選手。オリンピック金メダル7個、世界選手権金メダル15個は、女子水泳選手として最多。レデッキーは、14の世界記録と37のアメリカ記録を更新した。6月に個人種目で世界選手権5連覇を達成した初の水泳選手となり、歴史に名を刻んだ。
バイルズ選手は、米国女子体操界で最多のメダルを獲得し、世界選手権とオリンピックで32個のメダルを獲得した。2016年と2020年の2回のオリンピックに出場し、米国の体操選手としては最多7個のオリンピックメダルを獲得した。バイルズは、メンタルヘルス啓発の提唱者としての活動が評価され、2022年7月7日に大統領自由勲章を受章した。
両親デイヴィッド・レデッキーとメアリー・ジェン(ヘーガン)・レデッキーが会場にいる中、世界チャンピオンレデッキーは、国の真のヒーローである労働者について話した。「しばしば認識されていない...非常に困難で大変な仕事で働き、実体を作り構築し...、国民の健康、社会、自由が保護されています」。レデッキーは造船所労働者に感謝し、「軍の戦力維持を支援することにより、皆さんは国の安全の維持を助けているのです 」と述べた。
レデッキーは第二次世界大戦中、太平洋の「最悪の戦いで」戦闘外科医として第一海兵師団に従軍した亡き祖父、エドワード・ジョーダン・ヘーガン医学博士の功績を振り返り、造船業者や軍属、家族の犠牲に触れた。
彼女は、水泳でも人生においても、持久力、不屈の精神、一貫性の重要性について語り、特徴は彼女お気に入りのトレーニングのマントラに反映されている。レデッキー選手は、「リードして、リードし続ける」、「近道はしない」をトレーニングの信条としている。
レデッキーは、「水泳のもう一つの大切な要素である効率性で、造船技師たちがそれぞれの仕事を完成させるために働きつつ、『ビッグE』の名声に恥じないように近道をしていないことが私にはわかります」と述べた。レデッキー選手はBig E "ファミリーに、「最終目標を念頭に、チームメイトの小さな勝利を祝い、...その過程でお互いを励まし合う」よう呼びかけた。
共同スポンサーのシモーン・バイルズ選手は、テキサス州スプリングにある自宅ジムから録音メッセージで、エンタープライズの伝統の一部であること、命名・引渡しに向け進む同艦の次の大きな節目を祝うことを誇りに思うと述べた。
ジェラルド・R・フォード級
ジェラルド・R・フォード級は、全長1,092フィート、幅124フィート、総トン数10万トンで、30ノット以上で航行可能な空母。フォード級は、従来型空母より少人数の乗組員で運用できる設計で、現行ニミッツ級と比較して、耐用年数50年間の総コストで大幅削減が期待されている。
将来のUSSエンタープライズは、2029年に不活性化される予定のUSSドワイト・D・アイゼンハワー(CVN 69)の後継となる予定だ。■
Keel Laying commemorated for third ship in Gerald R. Ford-Class, the future USS Enterprise (CVN 80)
29 August 2022
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