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エナジー安全保障の観点から宇宙配備の太陽光発電システムに再び注目。中国の野望をここでも食い止められるか

 

欧州宇宙機関は、宇宙太陽光発電のフィージビリティスタディを11月に開始したいとする (ESA Image Credit, Andreas Treuer)


60年代の太陽光発電構想が、国防総省やNASAなど米国内だけでなく、北京を含む世界各地で再注目されている



工衛星を使い宇宙空間で太陽放射を集め、それを地球に転送しエナジーに利用するアイデアは、1968年に初めて提案され、1970年代半ばから後半にかけての「エナジー危機」で米国政府の関心を引いた。

 NASAやエナジー省による技術開発構想が、技術的・資金的な問題で頓挫し、40年後に国防総省がそのバトンを引き継ぐ。 今は亡き国家安全保障宇宙局による2007年報告書では、宇宙を利用した太陽光発電は「米国とパートナーの安全保障、能力、行動の自由を著しく向上させる戦略的機会」としていた。

 しかし、結局のところ、当時の国防総省指導部は、この問題を「自分の問題ではない」とし、報告書はペンタゴンの奥深くの棚にしまわれていた。

 しかし、運用上効果的なシステム技術的な挑戦開発は続いており、また、それを支えるアーキテクチャの高い投資コストに関する疑問も残ったままだ。

 例えば、欧州宇宙機関(ESA)は8月中旬、SOLARISと呼ばれるフィージビリティ・スタディ・プログラムを立ち上げるべく11月の理事会で資金提供を求めると発表した。ESAは8月16日にYouTubeで、この取り組みは、気候危機を緩和するのに役立つ将来のクリーンなエナジー源を求める欧州の動きの一環と説明している。 

 成功すれば、SOLARISは2025年からフル予算の開発プログラムになる。

 オランダにあるESAの欧州宇宙技術研究センター関係者がBreaking Defenseに語ったところによると、ESAはSOLARISの予算案を発表しておらず、ESA関係者は加盟国代表と関心の度合いを探っているという。

 「既存のエナジーソリューションに依存した場合、2050年までにネットゼロの目標達成で大きな課題を抱える国からの関心を期待している」と、同関係者は電子メールで述べた。

 実地経験を持つ欧米関係者によると、今のところヨーロッパ軍部はこのコンセプトに関心を示していない。代わりに、大陸の焦点は気候や将来のエナジー自立に当てられている。後者の問題は現在、ドイツのようにロシア天然ガスに大きく依存するヨーロッパを悩ませている。現在進行中の戦争で、モスクワはウクライナ支援国への輸出を減らし続けている。

 しかし、EUには未加盟だがESAには参加しているイギリスでは、イギリス宇宙局、国防省の双方が構想を支持している。

 英国宇宙局は8月26日、最大600万ポンド(約6億9000万ドル)相当のプロジェクトの計画の「宇宙太陽光発電イノベーションコンペティション」の7月のガイダンス文書を更新した。そして7月14日にロンドンで開催された Global Air and Space Chiefs' Conference で、国防省初の宇宙作戦部長は、同コンセプトの将来性について雄弁に語った。

 特に Harv Smyth 航空副司令官は、中国が太陽光発電を利用する運用可能な衛星を配備する予定を当初の 2030 年予定より 2 年前倒ししていると指摘し、宇宙太陽光発電構想の支持者が表明している、北京がこれからのエナジー市場を支配する意図を有しているとの懸念に同調した。

 The Aerospace Corporationが発表した2020年レポートによると、中国は太陽光発電衛星の開発において「グローバルリーダー」をめざし、その利用を「化石燃料や外国産石油依存から転換するための戦略的必須事項」と見なしている。

 日本、ロシア、インドも開発を進めているが、北京ほど野心的ではないと、同誌は指摘する。

 米国ではここ数年、政府の関心を再び高めたのは軍であった。結局のところ、米軍は安価なエナジー源を見つけることに大きな財政的な利害関係がある。DoDは米国で最大の単一エナジー消費者であり、世界最大の組織的石油消費者であると、ブラウン大学ワトソン国際公共問題研究所の2019年研究が明らかにした。2001年から2018年にかけ、軍は「米国政府の全エナジー消費の77~80%を一貫して消費してきた」と同研究は述べている。

 しかし、今のところ、米国における宇宙配備型太陽光発電の取り組みは、小規模で、科学的な研究と実証の領域、つまり運用能力の開発への道に立ちふさがる技術的障害を解決することを目的としたものに留まっている。

 例えば、マイクロ波やレーザーを使い、太陽放射から変換された高周波エナジーを衛星に転送できる。5月28日付けのSpace Newsによると、NASAは宇宙を利用した太陽光発電を地上の場合と比較し、打ち上げコストの低下などの技術的進歩に照らして潜在的なコストを検討する予定だという。

 一方、空軍研究本部AFRLは、一連の基礎技術を開発する野心的な宇宙太陽光発電増設実証研究(SSPIDR)構想の下で、次のテストに向け準備を進めている。

 ノースロップグラマンは、SSPIDRでAFRLと提携し、自社研究資金として約1500万ドルをこのプロジェクトに投入している。同社はまた、このイニシアチブの目玉ミッションである、2025年に打ち上げ予定の「Arachne」実験衛星のため、2018年にAFLRから1億ドルをわずかに上回る金額を受け取っている。

 今月末に予定さの同テストでは、地上で電磁エナジーを使用可能な電気に変換するために必要な整流アンテナ(rectennas)に焦点を当てると、AFRLの広報担当者は述べている。

 AFRLとノースロップグラマンは、最初に「2022年5月初旬にRFからレクテナの無線電力ビーミングを成功させた」それは「SSPIDRが完全に機能する宇宙ベースの飛行実験に向けて進行する際に完了した作業を検証する重要なステップだった」と、プロジェクトに従事するノースロップグラマン研究フェロー、ポール・マシューズは述べています。

 「より完全なデモンストレーションは9月下旬に行われ、RFビームを制御し、エナジーを遠隔地のレクテナ数カ所に送る能力を証明します」と彼は電子メールで付け加えました。

 もうひとつのSSPIDRサブ実験は、SPIRRAL(Space Power Infrared Regulation and Analysis of Lifetime)と呼ばれ、2023年夏の打ち上げに向け進行中だ。

 SPIRRALは、「国際宇宙ステーションに搭載される可変放射率材料VEM」をテストすると、AFRL広報担当者は述べている。この材料は、衛星システムを襲う太陽放射の強烈な熱を管理するため必要だ。■


The next energy frontier: A race for solar power from space? - Breaking Defense


By   THERESA HITCHENS

on September 02, 2022 at 10:14 AM


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