スキップしてメイン コンテンツに移動

ACCは中国の最新戦闘機開発状況を警戒。一方太平洋空軍はJ-20の実力を軽視。いずれにせよNGAD開発の重要性を強調する米空軍の主張の援護弾か。

via Twitter


航空戦闘軍団では、中国の次世代航空戦闘プログラムが米空軍と並行して進行中と見ている

 

空戦闘軍団(ACC)のトップ、マーク・D・ケリー大将Gen. Mark D. Kellyによれば、中国は米空軍の次世代航空優勢プログラム(NGAD)への対抗策開発に忙しいという。ケリー大将は、中国の極秘の取り組みから、第6世代有人戦闘機を含む、米空軍と同様の「システム・オブ・システム」が登場すると予想している。

NGADプログラムは第6世代有人戦闘機だけにとどまらない。有人機と一緒に働く協働型ドローンや、新型武器、センサー、通信アーキテクチャなども計画されている。米空軍はNGADを2030年以前に実戦配備したいと考えており、中国も歩調を合わせているとケリー大将は言う。

ケリー大将は最近、空軍宇宙軍協会Air & Space Forces AssociationのAir, Space & Cyber ConferenceでThe War Zone含むメディアを前に、将来の中国の航空戦闘プログラムに関する考察を紹介した。

その中で、ケリー大将は、中国が将来の有人戦闘機を含む第6世代の航空戦力が「我々の見方と大きく異なり、シグネチャーの指数関数的な削減、処理能力とセンシングの指数関数的な加速」を実現するとと見ているのがポイントだ。もうひとつ重要な要素は、オープン・ミッション・システムが支援する「反復」改良です。

反復アプローチで中国は「意味のあるスピードでの再プログラム」が可能になるとケリーは主張している。

 

2021年のAir, Space & Cyber ConferenceでFighter Roadmapのプレゼンテーションを行う航空戦闘軍団司令官Mark D. Kelly大将。U.S. Air Force illustration by Tech. Sgt. Joshua R. M. Dewberry

さらにACCのボスは、ソ連が設計したフランカー・シリーズの改良を中心に、中国が戦闘機ファミリーの開発を繰り返してきた経緯を指摘している。

「Su-27から始まり、Su-30、J-16、Su-35へと変化してきた」。

 

2021年に行われた中露アビアダート演習で、離陸する中国のJ-16戦闘機。 Ministry of Defense of the Russian Federation

中国は1992年にSu-27最初の輸出仕向地となり、2000年にロシアからマルチロールSu-30MKKを購入するまで、Su-27をライセンス生産(J-11、J-11A)した後、マルチロール機能を以外に中国製エンジンやエイビオニクスを搭載した国産J-11Bの開発を開始した。その結果、Su-30MKKの中国版2人乗りのJ-16が誕生した。一方、空母艦載機のSu-33も同様の扱いを受け、多用途機J-15として登場した。現在、J-15とJ-16は、電子戦領域への拡張を含め、さらに進化したバージョンの開発が続いている。

興味深いことに、ケリー大将は、中国が比較的少数の24機のSu-35(ロシアの最新型フランカー)を突然購入した理由を示唆している。ケリー大将は、Su-35が第4世代であるにもかかわらず「第5世代のエイビオニクスと第5世代のスピード」を備えていることに注目し、購入によって次の戦闘機、つまり第5世代から第6世代への移行が「少し楽になる」と述べた。

北京がSu-35を購入して以来、発注理由で多くの憶測が飛び交った。中国がSu-35の推力偏向エンジンを詳しく観察し、ロシアの最先端資産の武器と電子戦システムを見聞したかったのだという説もある。Su-35は異種空戦訓練以外に、南シナ海での長距離護衛任務にも運用されている。このように、中国にとってSu-35を少量購入することは、ロシアの最新エイビオニクスや武器と自国技術を比較する意味でも、また、運動性の高い航空機や関連戦術の開発でも、非常に有意義となる。

ケリー大将によれば、フランカー・ファミリーの経験は、中国がNGADに相当する機材を開発する上で有効活用できるという。米国が先を争って開発しなければならないほど、中国が有利になる可能性がある。ケリー大将は、米空軍が「競合相手より少なくとも1カ月早く第6世代の制空権を獲得する」よう望むと述べた。この発言の意味はすぐにはわからないが、The War ZoneはACCに確認を打診している。

とはいえ、この発言は、中国の第5世代ステルス戦闘機J-20の脅威を軽視している太平洋空軍のケネス・ウィルスバック大将Gen. Kenneth Wilsbachと対照的に、中国のまだ始まったばかりの第6世代能力に対する懸念の度合いを反映しているように思われる。ウィルスバック大将は、The War Zoneなどメディアに対して、J-20は 「眠れなくなるほどの存在ではない」と語っていた。

 

F-22のコックピットに座る太平洋空軍司令官ケン・ウィルスバック大将(Australia, September 5, 2022. U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Tristan Biese

中国がJ-20の開発を止めていないことも注目される。昨年10月に公開された複座機だけでなく、推力偏向エンジンを搭載し、全体性能を向上させる新機能が期待される、さらに進化した「J-20B」の噂も絶えない。

中国は、J-10戦闘機にWS-10エンジンの推力ベクトル化バージョンを搭載してテストしている。

ケリー大将は、NGADの「システム・オブ・システムズ」と類似していることを除けば、中国の第6世代航空戦闘プログラムについて米国が知っていることの詳細をほとんど明らかにしなかった。しかし、興味深い詳細として、同大将は、今後出現するシステムファミリーは、現在のプラットフォームと比較して、ステルス性が「指数関数的に」向上すると述べている。ケリー大将は、中国は第6世代プラットフォームに要求される高度なステルス性を習得しており、これも反復的アプローチの一部であると断言した。

また、中国の第6世代戦闘機がいつ運用を開始するかというスケジュールも明らかにしなかったが、ケリー大将は「計画通りだ、絶対に」と述べている。

 

納品前のJ-20第5世代戦闘機。 @白龙_龙腾四海 & @机外停车RABBIT VIA WEIBO

ケリー大将は、中国が「第一級空軍を構築中」と判断する。第6世代機の野望は、さらに良いものになる可能性が高い。このことを念頭に置き、ACCのボスは「彼らより先にそこに到達する必要がある」と繰り返した。「そうしないと、いい結果にならない」。

中国側では、第6世代戦闘機の構想について、ごくわずかなヒントがあるだけだ。対照的に、次世代ステルス爆撃機計画は国営メディアや中国軍が宣伝しているが、詳細は厳重に守られている。

H-20爆撃機は、人民解放軍の航空戦闘能力の近代化取り組みの一部に過ぎない。その他には空母運用型ステルス第5世代戦闘機、新世代の輸送・給油タンカー、さらにすでに就航しているか試験中の各種新しい回転翼機が少なくとも1つ含まれる。米情報機関は、中国が中距離ステルス爆撃機にも取り組んでいると評価している。これは、NGADスタイルの空軍構想に関連する有人装備となる可能性がある。

また、中国がNGADスタイルのアーキテクチャに適用可能性な無人戦闘機(UCAV)を急速に開発していることは明らかで、米空軍の人工知能プログラム「スカイボーグ」と同様のコンセプトで、無人戦闘機に高度な自律機能を持たせる可能性を示唆している。

 

謎に包まれた「ダークソード」は、J-20や第6世代有人戦闘機とチームを組んで使用する高性能かつステルス性の高いUCAVと考えられている。 Chinese Internet

有人戦闘機に関しては、信憑性ある噂はあるものの、ここでも事態は明確ではない。中国軍事航空専門家のアンドレアス・ルプレヒト Andreas Rupprecht は、「2035年頃の就役を目指すプロジェクトがあることは知っている」とThe War Zoneに語った。

「興味深いことに、もし本当に2035年という就航時期を守るならば、少なくとも2026-28年までに初飛行が見られるはずです」とルプレヒトは付け加えている。2035年という目標は、成都飛機公司(CAC)の主任設計者王海峰 Wang Haifengへの2019年インタビューに端を発している。中国における主要戦闘機メーカー二社の1つCACは、単発のJ-10戦闘機だけでなくステルス機のJ-20も担当しており、第6世代戦闘機プログラムの候補であることは明白だ。

このことから、中国がすでに各種有人戦闘機の予備試験を行っていることは間違いないと思われる。開発作業には、サブスケールとフルサイズ双方の実証機も含まれるのか。昨年10月にCAC飛行場の衛星画像に現れた謎の無尾翼機は、おそらくこの取り組みに関連した実証機またはモックアップの可能性がある。米空軍はというと、2020年にNGAD計画のプロトタイプを飛ばしている。

 

 

昨年10月、CAC飛行場の衛星画像で確認された菱形の無尾翼サブスケール実証機。PHOTO © 2021 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

「2018年以降、CACと関連会社611研究所は、次世代戦闘機向け主要技術の開発に取り組んでいる」とルプレヒトは述べた。

先端技術には、新型レーダー、可変サイクルエンジンを含むエキゾチックな推進システム、指向性エナジー兵器が含まれる予想がある。2019年インタビューで王は、ドローンとチームを組む能力、人工知能の活用、ステルスの強化、高度センサーなどを強調している。

全体として、中国の戦闘機関連技術は、非常に優位に立っている。その他航空宇宙計画と並び、中国の次世代有人戦闘機と関連する空戦システムがいつ最終的にブレークするかが特に興味深いところだ。■



China Is Working On Its Own Sixth-Generation Fighter Program: Official

BYTHOMAS NEWDICK| PUBLISHED SEP 28, 2022 3:53 PM

THE WAR ZONE


 

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...