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ロシア軍撤退に喜んでいていいのか。ロシアがウクライナに戦術核を投入する可能性が高まる。だからこそ抑止力が重要だ。

 

Russian mobile missile. Image Credit: Creative Commons.

 

 

ウクライナ情勢は遥かに危険なものになり得る---ウクライナ軍の反撃が数日続いた後、ロシア国防省はウクライナのハリコフ地方内2地域から軍を撤退させると発表した。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は「ロシア軍はこのところ、背中を見せるという最高のデモンストレーションを行っている」と言い放った。ウクライナ国民は、当然ながら祝福した。ロシア報道官は、ロシア軍は新たな攻撃に向けて「再配置」していると述べたが、現地の報道陣は、ロシア軍がキエフへの進軍を断念した際の声明を反映していることや、ロシア軍が大急ぎで撤退し、多数の武器や装備を残していったことから、この声明に疑問を投げかけている。

 

 

 西側諸国は当然ながら喜んでいる。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は9月9日記者会見で、「この(ウクライナの)前進は、ウクライナ軍の勇気、技術、決意を示しており、わが方の支援が戦場で変化をもたらしていることを示している」と述べた。また、ブリンケン国務長官は、直近のウクライナ訪問を振り返り、同じ記者会見で、「プーチン大統領が夏の初めにウクライナに可能な限りの攻撃を行ったにもかかわらず、ウクライナはその打撃を吸収し、今は反撃に出ている」と述べた。

 ロシアの敗退を祝うのは正しくても、戦争ははるかに危険な局面を迎えているかもしれない。

 考えてみてほしい。プーチン大統領が消耗戦に疲れ戦術核兵器の使用に踏み切った場合、ロシアの行動(急速な撤退や重要装備の置き去り)はどう変わるだろうか。 バイデン政権は、ロシアの核兵器への恐怖心から、戦争の最初の数週間にウクライナ軍が必要とした兵器の納入を自粛させ、制限させた。幸いなことに、ウクライナの忍耐力を目のあたりにし、恐怖と弱さが支配する政策がふさわしくないと政権は認識した。しかし、だからといって、米国とNATOは、ロシアの核兵器使用を阻止し、プーチンが一線を越えた場合という不測の事態に向けた計画を持ってはならないということにはならない。

 ホワイトハウスと米情報機関は、プーチンが戦術核兵器の配備を命じた場合、自その予兆がわかると確信しているかもしれない。衛星写真、シグナル・インテリジェンス、ヒューマン・インテリジェンスが、明確なイメージを与えてくれると信じているのだろう。 しかし、インテリジェンスの本質は常に疑惑と欺瞞に満ちている。アルカイダの故ウサマ・ビン・ラディンはメールや携帯電話ではなく、メッセンジャーを多用したがに、ロシア司令官も同じことをするかもしれない。2006年のイスラエルとの戦争で、ヒズボラは長距離ミサイルの隠蔽に成功した。発見されることを前提にした転用や、北朝鮮技術者が作った地下施設のおかげである。ウクライナに北朝鮮が絡んでいるというわけではないが、ロシア戦略家があらゆる紛争から得た教訓に注目しているのは確かだ。

 また、プーチンは戦術核弾頭の使用を事前に隠そうとしないかもしれない。2012年、バラク・オバマ大統領はシリアでの化学・生物兵器使用で「レッドライン」を引いた。その後、アサド政権がダマスカス近郊で化学兵器を使用すると、オバマは中止を宣言した。その後、国内各党派からレッドラインに疑問を呈した。オバマ政権高官は、当時の報道を補足するため、シンクタンクやオピニオン・リーダーに電話して、オバマがレッドラインにいかに真剣であるかを強調していたためだ。このような言葉遊びがうまくいかないと、レッドラインの実施に反対する多くの人々は、原爆犠牲者の立場からすれば、死因がガスか爆発物かはほとんど問題ではない、と主張するようになった。結局のところ、結果は同じだった。化学兵器にまつわる汚名をそそぐことが、将来の戦争に何を意味するのかについての認識は失われていた。

 プーチンは、強硬な反応を恐れる推進派が、戦術核攻撃の後に化学兵器使用後のレッドライン論争を復活させる期待を寄せているかもしれない。プーチンは、米国と欧州連合(EU)は常に行動を起こさない、あるいはエスカレートさせない理由を探し、そのためなら論理の宙返りもいとわないと考えているかもしれない。簡単に言えば、プーチンは、報復の危険が去るまで、ワシントンが自らを麻痺させるよう計算しているのかもしれない。

 このような理由から、ホワイトハウスとNATOは、これがうまくいかないことを事前に明らかにする必要がある。ウクライナ軍や都市への戦術核使用の前、撤退がフェイントだった場合にロシアが被る苦痛を詳細に説明すべきだ。このような苦痛には、表面的な中途半端な措置ではなく、真に破壊的な制裁を含む以上に、バルト海から太平洋までのロシア全土に攻撃範囲を拡大するウクライナ軍の能力強化も含んでもよい。さらに、ウクライナと風下のすべての国、長い間ロシアの非正規帝国の犠牲になってきた国々に、金銭と領土の賠償をしなければならないことを詳述する必要がある。

 自由世界は、ロシアの侵攻に先立ち避難をホワイトハウスが忠告したのに拒否したゼレンスキーに恩義を感じている。バイデンの功績は、その誤りを克服し、ウクライナ大統領が悪に直面しながらも自由と民主主義を守るため、ウィンストン・チャーチル以来のどの指導者より多くを行うことを可能にしたことだ。ゼレンスキーはノーベル平和賞に値する。

 バイデンに迫ってきた政策決定は、それと同様に偉大なものかもしれない。もしプーチンが、通常兵力では不可能なことを核兵器で実現しようとすれば、祝賀は時期尚早となる。今、沈黙を守り、ロシアが戦術核を使用する脅威を軽視し、恐怖に政策を支配させれば、第二次世界大戦後の自由主義秩序の終焉を意味する。

 ウクライナ戦争が重要な新局面を迎える今、抑止力を強化し、ウクライナでロシアが核兵器を使用した後を計画する時である。■

 

Could Russia’s Sudden Ukraine Retreat Mean a Tactical Nuclear Weapons Strike Is Coming? - 19FortyFive

 

ByMichael RubinPublished21 hours ago

 

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Michael Rubin is a Senior Fellow at the American Enterprise Institute (AEI). Dr. Rubin is the author, coauthor, and coeditor of several books exploring diplomacy, Iranian history, Arab culture, Kurdish studies, and Shi’ite politics, including “Seven Pillars: What Really Causes Instability in the Middle East?” (AEI Press, 2019); “Kurdistan Rising” (AEI Press, 2016); “Dancing with the Devil: The Perils of Engaging Rogue Regimes” (Encounter Books, 2014); and “Eternal Iran: Continuity and Chaos” (Palgrave, 2005).


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