兵員30万人で戦線の穴を埋めるつもりでも、兵站と士気のロシア軍の悪夢の解決になりそうもない
国防総省報道官によれば、新たに徴兵される数十万人の兵士で、2月にウクライナに侵攻開始以来ロシア軍につきまとう兵站と戦力維持の問題を解決できず、むしろ衰弱している部隊を悪化させる可能性が高いという。
パトリック・ライダー空軍准将Brig. Gen. Patrickは9月22日、国防総省の記者会見で、数千人の予備役招集は人員不足への対処で一つの方法だが、時間がかかり、すぐに戦争に影響を与えるとは思えない、と述べた。
「ロシアが隊員を訓練し、準備し、装備するのに時間がかかると評価している」とライダーは言った。「ここで指摘しておきたいのは、ロシアが人員問題に対処できても、ウクライナでロシア軍が経験した指揮統制、兵站、維持、さらに重要な士気の問題に対処できるかは不明だ」。
2022年9月14日、ウクライナのイジュム中心部にある破壊されたロシア軍の装備品。 Wojciech Grzedzinski for The Washington Post via Getty Images
「大きな課題を抱えており、大規模な軍事力の効果を実現する体系的、戦略的な課題の対処できない場合、方程式の変数を追加しても、容易にならない」とライダーは付け加えた。
ウクライナに派遣する前に、ロシアが徴兵した部隊を十分訓練し、装備するのにかかる時間はどれくらいか、と尋ねられたライダー准将は、「ロシア軍に入ったことはないので」と冗談を言った。
ロシアの動員計画は広大な国土の各地で展開されており、9月21日にプーチン大統領の宣言が出ると同時に、徴兵通知が発出された。大量徴兵の動画がロシア各地からネットに流れ、軍は少なくとも30万人の新兵目標を満たそうと探している。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、戦争に駆り出された兵士たちへのメッセージとして、5万5千人がすでにそこで死んでいる仲間に加わることになると伝えた。
「何万人もの負傷者や障害者がいる」とゼレンスキーは言った。「もっと欲しいか?嫌か?それなら抗議しろ。反撃しろ。逃げ出すか、ウクライナの捕虜になれ。生き残りたいなら、これがお前の選択肢だ」
少数民族が住むロシアの辺境地方から不釣り合いに補充しているようだ。ダゲスタンや極東のマガダンといった地域で、新兵が集められ、バスで運ばれるか、訓練を受けるか、あるいは軍輸送機でウクライナに向かう前に訓練を受ける場所まで空輸されている。
欧州安全保障協力委員会のバフティ・ニシャノフBakhti Nishanovは、遠隔地のロシア共和国の少数民族が「不釣り合いに多く動員」され、「大砲の餌」に配備される可能性が高いと指摘する。
欧州政策分析センターの民主的弾力性担当ディレクター、サム・グリーンSam Greeneも同意し、現在の徴兵募集のほとんどが、「戦争によってすでに最も大きな打撃を受けたコミュニティ、特に少数民族に最も強く降りかかっている」と述べている。
ロシア各地で動員令に反発するデモが起きている。抗議すると戦争に徴兵される可能性があるらしい。未確認の情報も複数あり、どこまで浸透しているのか注目される。
ロシアの動員は、目に見えない形で戦争の行方を大きく変える可能性がある。ロシアの新兵は、今後数カ月、ウクライナの過酷な冬に直面する可能性がある。
最新情報
ウクライナが北東部のハルキウ州の大部分を奪還してから数週間、戦術的な状況は大きく変わっていない。国防総省によると、そのほかで攻勢作戦は継続中だ。ライダー准将は「ウクライナ軍がハルキウやケルソン地方で反攻作戦を続けている様子が見える」と述べた。「ロシア軍はこの地域で作戦を継続し、ウクライナ軍は戦線を維持しているが、概して言えば、今日は重要な最新情報はない」。
「ロシアからの発言や発表に関して、国際的なパートナーや同盟国と緊密に協力し、ウクライナに自国防衛に必要な支援を提供し続ける米国のコミットメントに影響はない」。
【核兵器投入】米国政府関係者は、プーチンが戦争の流れを変えるため、あるいは単に紛争を凍結するため核兵器を配備する計画の兆候がないか見守っているとニューズウィーク誌に語った。ロシア指導者は、ウクライナがドネツクとルハンスクの占領地域で進出を続ければ、そうすることができると示唆した。
ライダー准将によると、プーチン発言は、米国の核態勢を変えるものではなく、ウクライナの主権を守るために必要な兵器を供給し続ける約束を変えるものでもないとのことだ。
ウクライナ軍は、下の地図に見られるように、ドネツク州のライマン周辺でロシア軍の戦線の突破に成功した。
ウクライナ政府は、奪還できた領土をさらに拡大するため、より高度な兵器システムを求め続けている。これには、MQ-1Cグレイ・イーグルのような大型無人航空機も含まれ、ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相Defense Minister Oleksii Reznikovらが緊急要請している。Defense Newsによれば、17人の超党派の米議員団は木曜日、ロイド・オースティン国防長官に、無人機供与に関する国防総省内検討を早めるよう正式に要請書を送ったという。現在行われているリスク評価は、ロシア軍が無人機を撃墜または捕獲した場合、どのような損害が発生するかを把握する。ウクライナの戦闘機パイロットは、MQ-1は敵防空網に弱く、ほとんど効果がないだろうと言っている。
この1カ月で大きな変化をもたらした兵器M31 Guided Multiple Launch Rocket System(GMLRS)がロシアの弾薬貯蔵施設に命中した様子のビデオが流出している。命中したロケットが、HIMARSと呼ばれるM142高機動砲ロケットシステムから発射されたのか、M270追跡型ランチャーから発射されたのかは不明だが、どちらのシステムでもGMLRSを発射できる。ロシアはこの非常に効果的な兵器に対し防御手段を持たず、相当量の弾薬を火の玉にして飛ばしていることは明らかである。https://twitter.com/i/status/1572963998563241984
ウクライナ軍はKa-52攻撃ヘリコプターと思われるものに、携帯型防空システム(MANPADS)攻撃を行ったと主張している。映像では、ミサイルの衝撃と、地面に激突する前に炎上するヘリコプターの様子を映している。衝突時の爆発はなく、停止後もローターが煙を吐いているように見えるが、墜落したのか不時着陸したのかは不明。https://twitter.com/i/status/1572970717997580290
ウクライナがクリミアとロシアの戦略目標を攻撃する長距離自爆ドローンとして使用してきた既製品の無人航空機スカイアイは、さらに3機が占領下のクリミア半島上空でロシア軍に撃墜された。少なくとも1枚の写真では、翼に赤いロシアの星が描かれているが、目標に到達するために無人機はロシア占領地の奥深くまで飛ばなければならないので、敵の防空砲兵を混乱させるためと思われる。
【ペラルーシ】ベラルーシのウラジミール・マケイ外相 Minister of Foreign Affairs Vladimir Makei は、やや奇妙だが技術的には正しい声明で、「ベラルーシは戦争に賛同したことはない」「(ベラルーシの)兵士一人も、機材一個もウクライナに送られていない」という声明をオンラインで発表した。部分的には正確だが、この声明は、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領がウラジーミル・プーチンの強固な同盟者であり、ロシアが侵攻前と侵攻中に国境内で武器と人員を配置することを許可してウクライナでの戦争を支援してきた経緯を省いている。ロシアのミサイルや爆撃機は、ベラルーシ国内からウクライナに襲いかかった。
【捕虜交換】アゾフスタル製鉄所のウクライナ人守備隊員多数が、捕虜交換で解放された。ロシアの執拗な包囲網の中で、アボスタルの守備隊は何カ月も持ちこたえた。ロシアの大砲や爆弾が頭上に降り注ぐ中、地下で生活するウクライナ人守備隊は、ヘリコプターで物資を届け、負傷者を避難させるという英雄的な活躍をした。最終的に守備隊は残っていた全員が降伏を余儀なくされた。
ウクライナ国防省は、アゾフスタル守備隊が解放されたときのビデオを掲載した。この交換で200人以上のアヴォズスタル守備隊隊員が解放された。
ウクライナ政府のツイッターのメインアカウントは、爆撃で破壊された製鉄所の天井から差し込む光線を浴びて腕を広げるアゾフスタル防衛隊の迫力ある写真をツイートしただけだった。
ホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安全保障顧問によると、ウクライナのため戦っている間にロシア軍に捕らえられたアメリカ人捕虜2名も解放されたとのことだ。サリバンは、ゼレンスキー大統領とサウジアラビアに、解放への尽力に謝意を表明した。
英国会議員ロバート・ジェンリックRobert Jenrickによると、ロシア軍に数カ月間拘束されていた英国人捕虜も9月21日に解放され、帰国が許可された。同議員は、解放を可能にしたサウジアラビア皇太子、ウクライナ政府などに感謝した。英国人のエイデン・アスリンとショーン・ピナー、モロッコ人のサードゥン・イブラヒムは、6月に親ロシア分離主義者の自称ドネツク人民共和国の裁判所により、傭兵活動などの罪で有罪になった。リズ・トラス英首相は、囚人交換で英国人5名が解放されたと述べた。
BBCニュースのウクライナ人記者ミロスラバ・ペツァMyroslava Petsaによると、囚人たちは、少なくとも部分的には、ウクライナにおけるプーチンの右腕ヴィクトル・メドベチュクViktor Medvedchukと交換された。メドベチュクは20年にわたりウクライナの親ロシア派政治組織で高位に就いていたが、4月にウクライナ軍に逮捕されていた。
【近隣諸国の対応】プーチンの動員宣言を受けて、ロシア近隣諸国の多くが対決の準備を進めている。ロシアの飛び地カリーニングラードに隣接するバルト三国の一つリトアニアは、即応部隊を厳戒態勢に置くと決定した。リトアニアはNATO加盟国で、ロシアが攻撃した場合、米国を含む加盟国の集団的対応が予想される。
【原発】ポーランドは、ロシアが占領中のザポリジャー原子力発電所での核災害を想定し、地域の消防隊にヨウ素剤を配布している。
【ロシア高官の死再び】一方、ロシアでは、プーチンの盟友がまた一人、転落死した。モスクワの航空研究所の元所長アナトリー・ゲラシチェンコAnatoly Gerashchenkoは、窓からではなく研究所内で墜落した。しかし、少なくとも1段の階段から転落したことがこの高官にとって致命的なものとなった。■
Ukraine Situation Report: Conscripts Won't Solve Russian Army's Systemic Problems, Pentagon Says
BYDAN PARSONS| PUBLISHED SEP 22, 2022 6:55 PM
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