5月15日、遠征前進基地演習で上陸した軽装甲車を操作する米海兵隊員。40年間海兵隊に貢献してきたLAVが先進偵察車両に交代する (U.S. Marine Corps photo by Sgt. Alexis Flores)
General Dynamics Land SystemsとTextron Systemsの両社は、70億ドル近くをかけた対決をしている
米国防総省が全領域統合指揮統制を通じ戦場情報の優位性の重視に傾く中、海兵隊の新しい偵察車両の探求は、従来の戦場情報収集だけでなく、統合軍全体のデータを取り込み処理する能力に重点を置いている。
現在、海兵隊は5年にわたる技術実証やその他予備的な取り組みを経て、General Dynamics Land SystemsとTextron Systemsの2社から、12月に評価用の最終バージョンの高性能偵察車(ARV)の提供を受ける予定になっている。採択案の発表は来年末の見込みだが、両社は年末の期限に間に合うよう試作品の水中走行試験を行ったと幹部は述べている。
落札企業には最大68億ドル相当の契約となり、軍上層部からこのプログラムに懐疑的な意見も聞かれる中、Breaking Defenseは両社に、ARVが戦闘に何をもたらすか、またこの新型戦闘車両が国防総省の新たな関心事である、情報戦と無人システムとどう関わるかを理解するため取材した。
「高度偵察車(ARV)は、海軍海兵隊2030構想の海兵隊要件を実現するため不可欠である」と海兵隊は、議員向け最新の予算要求で書いている。「偵察、監視、目標捕捉システムのポートフォリオの一部として、ARVは、陸上水上で高機動性を持ち、感知、通信、ロボットと自律システム強化チームの有人ハブとして戦う専用戦闘車両システムになる」。
2014年3月13日、ノルウェーのブローシュタットボトンで、演習コールドレスポンス2014の一環として、第2軽装甲偵察大隊の軽装甲車LAVが走行した。 (Photo by Staff Sgt. Steve Cushman)
コマンド&コントロールとUAVに注力
ARVの中核目的は、1980年代から海兵隊に貢献しているジェネラル・ダイナミクス製軽装甲車Light Armored Vehicleを置き換えることにある。
LAVプログラムは2030年代半ばに供用を終える。新型ARVが「完全な運用能力」を獲得した直後で、地上車両が完全にテスト実証され戦闘に対応できる軍の自信を示す国防総省の最終取得マイルストーンになる。
海兵隊は、指揮・制御・通信・コンピュータ-無人航空機システム(C4/UAS)、有機精密射撃搭載、対UAS、30mm自動砲・対戦車誘導弾、兵站、回収の6種類のARVにそれぞれ独自の役割を持たせようとしている。 (これとは別に、海兵隊は別のプログラムである水陸両用契約車両Amphibious Contract Vehicleの主契約者BAE Systemsに、ACVのC4/UASパッケージをARVに装備する方法を研究させる契約を締結している)。
海兵隊にとっての重要性を示すものとして、ARV競作の勝者は、海兵隊がC4/UASのバリエーションでどちらを選ぶかによって決定される。その後、海兵隊は採択企業と協力して、残る5種類のバリエーションを製造することになる。
海兵隊は、C4/UASを「戦場のクォーターバック」と呼ぶ。これは、ペンタゴンと海兵隊のネットワークを介して膨大なデータを取り込み、受け取った情報に基づきその場で海兵隊の意思決定を支援できるARVを開発することが目的だ。
ペンタゴンと海外に深い実績を持つ2つのチーム
ARV入札を担当したジェネラルダイナミクスのフィル・スクータPhil SkutaはARVの前身LAVとARVの違いは、データを取り込む能力とする。
「LAVについては、基本的に40年前の技術を使っている。ARVでは、戦場での敵の動きを感知し、検知することができるようになる」。
海兵隊が戦場全体からデータを取り込み、分析し、行動できるようにすることは、国防総省の JADC2 の取り組みの中核であり、より具体的には、通常Project Overmatch と呼ばれる海軍の取り組みだ。
海軍当局は、Overmatch の具体的な内容については口を閉ざしている(同プログラムの主幹は、沈黙は敵対勢力に推測させるためだと述べている)。この技術の初期のものは、今年後半に空母に搭載される予定だった。
General Dynamics Land Systems幹部は、ARV競合の自社製品はインド太平洋での運用に「最適」と述べた。 (Photo courtesy of General Dynamics.)
海兵隊は、周囲の状況のデータをARVに提供するため、車両から30マイルまで離れて展開可能な無人航空機システムの実用化を想定している。今回の競作での焦点は、無人機をARVにどう統合されるかを明確に把握することだと、幹部たちは言っている。
「無人航空機がどのように飛行するのかを理解し、そのデータをARVに戻し、データを偵察やその他の判断に役立つ情報に変えることが、無人航空機の能力を統合する意味だ」と、スクータは述べている。
ジェネラル・ダイナミクス社が有利なのは、このプログラムにおける同社のじっせきだ 。同社はLAVのメーカーとして2019年以降、技術実証に参加してきた。また、同社は最近、機動保護火力車で11億4000万ドルの陸軍の別契約を獲得している。
「ARVは 複数地域で、特に海兵隊がインド太平洋地域に将来を賭けているように、沿岸地域(および)海岸線で動作できる小型、モバイル、生存可能なプラットフォームでなければなりません」とスクータは述べている。「当社の車両は、このような戦術領域での活動に最適だと考えています」。
このような実績があるにもかかわらず、スクータは、同社のARV候補は「クリーンシート」デザイン、つまりゼロから作ったと言っている。
同様に、Textron陸海空システム担当上級役員デイビッド・フィリップスDavid Phillipsは、Breaking Defenseに対し、コットンマウスCottonmouthと呼ぶ同社提案は、同社では陸軍と別契約もあるにもかかわらず、「クリーンシート」デザインだと語っている。
Textronの「Cottonmouth」車両は、海兵隊の先進偵察車プログラムに提出される。 (Photo provided by Textron Systems)
インタビューの中でフィリップスは、コットンマウスは、米陸軍や海外顧客が購入している同社のM117装甲警備車や、M117の亜種であるコマンドーと異なると強調した。
また、C4と無人システムの統合が、ARVの最初のバリエーションを特に複雑なものにしていると述べた。しかし、当然ながら、海兵隊のニーズを考慮して入札するという。
「Textron Systemsは、地上戦闘車両の開発・製造だけでなく、有人・無人システム含む各種領域のシステムインテグレーションで、他社にない実績があり、この設計が海兵隊に大きな価値をもたらすと考えています」。
M117とコマンドーに加え、Textronは国防総省で使用されているShadowとAerosonde無人航空機システム、海兵隊の新しい船舶海岸接続装備(海兵隊とその装備を外洋の輸送艦から浅海を通り、最終的に陸地に運ぶ中型船舶)を担当している。新型ARVの重要要件は、1隻の船舶海岸接続装備で4台を輸送可能な重量とサイズであるため、後者に精通していることは重要だ。
「当社は、耐久性と信頼性の観点で、頑丈な車両を作ろうとと考えていました。また、サイズと輸送性の観点から、1つの船舶海岸接続装備に4台を搭載することを念頭に置いていました。海兵隊にとって、沿岸から陸上への輸送がいかに重要であるか、当社はよくわかっています」。
艦と海岸を結ぶ接続船の性能に精通していることと、同社の無人システム統合の幅広いポートフォリオが相まって、最終入札で有利に働くことは間違いない。
トップが語る、このプログラムへの懐疑的な眼差し
12月に両社が入札し、2023年秋ごろに落札者が発表される予定だ。すべてが計画通りに進めば(ペンタゴン調達の世界では、確実なことはない)、次期高性能偵察車両は2030年頃に実戦投入可能となる。
海軍の2023年度予算の説明文書によると、海軍はARVを「海兵隊の偵察能力の近代化で重要」とみなしている。しかし、国防総省のその他の大規模調達と同様に、全員が完全に納得しているわけではない。この場合、懐疑的なのは海兵隊上層部だ。
「私は、全領域偵察と対偵察が将来の有事における重要要素であると繰り返し述べてきたが、車輪と有人装甲を備えた地上偵察部隊の整備が、インド太平洋地域における最善かつ唯一の答えになる確信がない」と、海兵隊総監デヴィッド・バーガー大将は述べている。「既存の能力を拡張する前に、あるいは数十億ドルの調達資金を新型偵察車両(ARV)の購入に振り向ける前に、この結論を支持する証拠を第三段階でもっと見る必要がある」。
同大将はその後、2022年5月のForce Design構想の更新で、海兵隊にARVに関する「すべての仮定を見直し、検証する」よう指示した。つまり、ペンタゴンの風向きが変わることを考慮し、このプログラムが2030年に戦うに値する製品を生み出せると確認するよう、バーガーは求めているのだ。
バーガーのコメントにもかかわらず、ARVプログラムは進行中で、競作の勝者にとっては、海兵隊の将来の地上車両ポートフォリオでの地位を確固たるものにする機会となる。■
What is the Marine Corps’ Advanced Reconnaissance Vehicle?
By JUSTIN KATZ
on September 06, 2022 at 11:15 AM
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