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今日の米空軍の低迷は長年にわたる予算不足が原因。他軍予算をまわしてでも空軍を再建すべきとのミッチェル研究所レポートをご紹介。デプチュラ中将、ガンジンガー大佐の力作。

 

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数十年続いてきた米空軍予算の不足傾向を覆すべきだ

2018年国防権限法では、国防戦略の要件を満たすため2030年までに米空軍で必要となる航空機数と構成を決定するため3通りの独立した分析を実施するよう国防総省に指示した。各分析が、空軍は少なくとも25%戦力を増強しなければならないと結論づけた。空軍は「我々が必要とする空軍」を312から386個の作戦飛行隊とし、現在より7個多い戦闘機飛行隊と5個多い爆撃機飛行隊だ説明した。これは近代化とともに、中国の侵略を阻止し、米国本土を守り、核の脅威を抑止し、空軍のグローバルな作戦要件を満たすため必要な最低限の戦力規模とされた。

しかし、5年後の今、空軍は必要な殺傷力、生存力、能力を備えた部隊構造を欠いたままだ。機材の平均使用は29年という前代未聞の状態だ。B-52爆撃機とKC-135タンカーは60年以上、3種類の航空機で50年以上、他の13種類は30年から50年の平均使用期間だ。E-8統合監視目標攻撃レーダーシステム、E-3空中警戒管制システム(AWACS)、B-1B爆撃機、F-15C戦闘機など機材は、数十年にわたる高い運用テンポで消耗している。こうした機材の多くが任務遂行能力がなく、飛行が安全でなくなっているものもある。

デプテューラ将軍は、AFAミッチェル航空宇宙研究所の所長。ガンジンガー大佐は、元国防副次官補で、ミッチェル研究所の将来航空宇宙コンセプト能力評価担当ディレクター。報告書全体のダウンロードはこちらからどうぞ。

また、空軍兵力はこれまでで最小で、さらに小さくなる方向にある。今後5年間で、空軍は1,463機の航空機を売却し、購入は467機だけの予定だ。これは996機の純減に相当する。国防総省の脅威であるインド太平洋地域の広大な場所で中国と戦う兵力と、イラク、アフガニスタン、さらにはイランや北朝鮮といった比較的小規模で脅威が少ない戦域で活動する兵力は、全く異なる。端的に言えば、2022年の空軍は、中国との大規模な紛争を戦い、国家防衛戦略が定めるその他グローバルな作戦要件を満たす規模を欠いた、リスクの高い軍である。これは空軍に限ったことではなく、米軍統合部隊の作戦では、空軍の関与が不可欠なためだ。

どうしてこうなったのか

冷戦の末期、空軍には第一次湾岸戦争で真価を証明した強固な戦力があった。実際、この戦争で空軍は大成功を収め、指導層は空軍が許容できるリスクで削減を吸収できると確信していた。ソ連という脅威がなくなり、米国の国防政策は、国防費を削減し、地域大の侵略者を減らすことに重点を置くようになり、能力より性能を優先させるようになった。例えば、B-2爆撃機計画は、1992年に132機調達の計画がわずか21機に削減された。

1993年のボトムアップ・ディフェンス・レビューでは、空軍の戦闘機の約40パーセントと爆撃機の31パーセントが不要と判断された。1997年の「4年ごとの国防見直し(QDR)」でもこの傾向は続き、第5世代戦闘機への投資は縮小された。ウィリアム・コーエン国防長官(当時)は、F-15C/D戦闘機の後継に計画していたステルス戦闘機F-22の購入を減らすよう空軍に指示し、その決定は「F-15と比較してF-22の能力がはるかに高いため」と主張した。その10年後、ゲイツ国防長官はF-22をさらに半減させ、187機(有効な軍事ニーズの50%未満)で調達を終了させた。この決定は、中国の脅威を過小評価していたこともあり、極めて近視眼的で、空軍のF-22部隊は、中国との戦闘で共同作戦に必要な持続的な出撃回数を確保できない。

国防総省が指示した兵力削減は、中国が軍備増強を加速させているにもかかわらず、2000年代から2010年代にかけて衰えることなく続けられた。ボトムアップ・レビューと同様に、こうした予算削減は、新規購入のかわりに旧式装備をアップグレードすることで、イランや北朝鮮といった格下の敵への米軍の優位性を維持できるという信念で行われた。空軍の2009年の戦闘航空部隊削減(CAF Redux)は、当時のゲイツ国防長官の「過剰な戦力構成を排除し」、「より小さく、柔軟で、能力があり、致命的な部隊の近代化と装備」に節約分を再分配する方針で、約250機のF-15、F-16、A-10を切り離したのである。 CAF Reduxで節約された金額の一部は、対テロ作戦を支援するMQ-1やMQ-9遠隔操縦機などの購入に使われたが、2011年の予算統制法(BCA)の結果、そのほとんどが空軍デ使えなくなった。

現在、空軍の戦闘機在庫は1989年水準の半分以下だが、戦闘指揮官による制空権獲得やその他任務をこなす空軍機への要求は高まる一方だ。さらに、プログラムの中止や調達縮小は、ハイエンドな戦闘で生き残れるステルス機を適切に組み合わせた第5世代機の戦闘力を開発するという、空軍の長年の近代化目標で障害になっている。

Bombers

爆撃機の不足 

空軍は、B-1B、B-52H、B-2爆撃機によって、自由世界唯一の長距離攻撃能力を維持している。各爆撃機は、世界各地に到達し、1回の出撃で数十個の目標を攻撃でき、戦闘指揮官に重要な選択肢を提供する。しかし、在庫はB-2が20機、B-1Bが45機、B-52Hが76機と、ソ連を抑止した部隊の3分の1しかない。長年にわたる空軍の爆撃機削減は、予算の圧迫が主、運用需要の減少によるものではなかったことが重要だ。

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空軍は1980年代後半にB-1爆撃機100機の購入を完了し、ほぼ予定通り、コストの見積もりの範囲内に抑えた。この部隊は2002年まで総数90機以上を維持し、その後数年で約3分の1に減少した。しかし、B-1に対する運用上の需要は減少していなかった。B-1はマルチミッション能力、グローバルレンジ、大きな武器搭載量により、2000年代と2010年代の米空軍の対反乱・対テロ作戦の主力機となった。しかし、長年にわたるノンストップ飛行により、一部機材は損傷を受け、安全とは言えない状態に陥った。空軍は2021年度に17機を退役させ、残る各機の維持に資金を集中させる決定をした。現在、B-1部隊はわずか40機の任務投入可能機で構成されている。

非戦闘機や任務遂行能力を考慮すれば、実際に投入できる爆撃機はわずか59機だ。作戦上、1戦域で常に交戦できる爆撃機は、15機が交戦し、15機が移動中で、14機が次の出撃のため補給すると仮定すると、約15機しかないことを意味する。米空軍の20機のB-2は、2008年のグアムでの事故で1機を失ったが、現在では、激しい紛争環境の奥深くまで攻撃するのに必要な長距離、積載量、生存性など特性を備えた唯一の軍用機である。B-52HとB-1Bは、高度な長距離防空システムの届かない場所からの「スタンドオフ」攻撃に限定され、紛争地域内に侵入し、硬化し深い場所に構築された軍事施設や弾道ミサイル輸送・発射装置など高機動目標を攻撃できるステルス爆撃機が行う「スタンドイン」攻撃より効果は低い。全体として、爆撃機は、空軍が将来的に必要とする225機には遠く及ばず、国家防衛戦略が要求する数にも足りない。

E-3空中警戒管制システム部隊も同様の減少に見舞われた。米空軍の2023年度予算で、31機のE-3 AWACSのうち15機を退役させと提案しており、各機は機齢50年になろうとしている。1970年代に部隊に加わって以来、E-3は空中で戦闘管理と指揮統制、戦場のリアルタイム画像、敵行動に関する情報を統合軍連合軍に提供してきた。これだけ使い続けられながら機材更新の遅れから、機体多数で信頼性が低下している。空軍の作戦担当参謀総長ジョセフ・T・ガステラ中将 Lt. Gen. Joseph T. Guastellaは今春、議会でこう語った。「機材は疲弊している......継続的に配備されているため、空軍機の多くがそのような状態にある。多くがそのような状態にある。現場での保守性がなく、大きな能力格差がある」。空軍の計画・計画担当副参謀長デイヴィッド・ネイホム中将Lt. Gen. David S. Nahomは、「保守性に大きな問題がある」ため「およそ半分の機体で飛行させ続けるのに苦労している」と付け加えた。

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遅れを繰り返した空軍は、E-3後継機として、上部にMESA(Multi-Role Electronically Scanned Array)レーダーを搭載する「ウェッジテール」と呼ぶ民間航空機を原型のE-7を購入することになった。しかし、ウェッジテイル初号機が配備されるのは2027年度で、戦闘管理・指揮統制用航空機で空白は避けられない。空軍の他の航空機在庫と同様、近代化投資が不十分であったことが直接の原因だ。この遅れの最終的な代償は、軍事力と能力の両方における重大な不足となる。

過去から学ぶ

冷戦後の国防総省が航空機の調達と近代化を繰り返し縮小または中止したことは、現在の脅威環境と釣り合わない2022年の空軍の姿につながった。30年以上にわたり国防予算が国防戦略を動かしてきたのであり、その逆ではない。このため、空軍は「投資するため売却する」という予算主導のアプローチを取らざるを得なかった。言い換えれば、空軍は常に予算不足のため、最新システムの予算を得るには、現行の運用システムを退役させるしかない。このような状況は、かつて空軍が有していた戦力構造のヘッジを消失させ、DODが戦力削減を正当化してきた「能力より容量」というマントラも同様だ。30年にわたる予算削減により、明らかになった教訓がある。将来の投資決定に反映させ、さらに小さく、古く、能力の低い軍隊へのスパイラルを逆転させる必要がある。

冷戦後の米空軍の大幅な兵力削減は、戦略的優先順位ではなく、資源不足と国防費削減の願望の結果だ。

米空軍の兵力削減による節約は、ハイエンド戦争を戦うための能力を大幅に向上させるのに十分でなかった。節約のため空軍が切り離した戦力は、新しいシステムで完全に代替されていない。

戦力削減は、より小さく、より柔軟で、有能で、致命的な部隊を近代化し、装備するのに役立つとの主張だったが、それは誤りだった。現在の戦力は柔軟性に欠け、中国との紛争に必要な殺傷能力も不足している。

米側の戦力近代化の遅れにより、中国は空軍の技術的優位性に追いつき、追い越すことさえ可能になった。

継続的な予算の圧迫と、30年以上にわたる予算不足に直面し、空軍は再び「投資のための売却」を余儀なくされている。これは戦争に勝つためのアプローチではなく、むしろ次の大規模な地域紛争で負ける確率を高めている。 

今日の空軍計画 

しかし、空軍は2023年度に老朽化した航空機をさらに252機削減し、F-35を33機とF-15EXの24機を含むわずか87機を新規取得する計画だ。将来防衛計画(FYDP)では、空軍は合計1,463機の退役させ、467機のみを購入する提案で、これでは996機の純減、つまり約25%の兵力削減になる。削減案は、冷戦後の軍縮の流れを引き継いでおり、より小さな空軍を作ることに成功しても、「より有能な」戦力の提供に失敗している。

しかし、広大なインド太平洋地域で中国との紛争に勝つためには、戦力規模が重要となる。数千の敵目標を数百時間で破壊したり、高度に戦い合う戦域の広範囲を監視を含む、大規模な効果を生み出すには極めて重要である。これは、こうした作戦を維持できる規模を持ち、長射程、任務の持続性、積載量、生存性などを適切に組み合わせた航空部隊だけが提供できるものだ。侵攻が成功する前に阻止するため必要となる質量と精度を備え、紛争初日からこのような対応ができるのは、航空戦力だけだ。中国やロシアの既成事実化作戦の打破、第二の侵略者の抑止、核攻撃の抑止、国土防衛は、すべて国家防衛戦略の要件である。

2022年の空軍は、国家防衛戦略の要件を達成する柔軟性、殺傷力、十分な次世代能力を欠いている。空軍はますます古くなり、脆弱になっているだけでなく、主要国同士の紛争で予想される機材や搭乗員の損失を吸収するための予備部隊も不足している。

中国もロシアもこうした不足を認識しており、米国が打ち負かせない既成事実につながる攻撃を仕掛ける好機と判断してくる可能性がある。空軍の戦力と能力が頭打ちになるのは、今後6年以内で、中国が台湾を攻撃して統一を迫る可能性が出てくるのと同じ時期と当局者は見ている。国家情報長官アブリル・ヘインズAvril Hainesは2022年5月に議会で、台湾への脅威は「現在から2030年の間に深刻である」と述べた。将来の近代化のために米空軍の戦力構造を交換し続ける予算主導の戦力設計戦略は、この現実と、国家防衛戦略が想定する脅威に対抗する次世代能力の向上という空軍の差し迫った課題を無視している。

空軍予算の現実

不十分な予算とその他資源の不足は、30年以上にわたって米空軍の規模を縮小し、形を変えるのに大きな役割を果たしてきた。この不足額の規模を理解するには、「パススルー・ファンディング」pass-through funding”という、議会や一般市民から空軍の真の予算を隠してしまう時代遅れの国防総省予算報告慣行について説明する必要がある。

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毎年、国防総省は大統領予算の一部として議会に予算要求を提出する。2023年のパススルー予算は、空軍予算に年間400億ドル以上を追加するもので、実際には他のDOD機関に支払われる。400億ドルあれば年間400機のF-35Aを購入するのに十分だ。このようなやり方は、空軍が部隊を組織し、訓練し、装備するため使用できる予算について、誤ったイメージを与えてしまう。また、軍全体の資源配分の仕方も隠されている。1991年以来、9,880億ドルが空軍予算を通過し、他のDOD機関に提供されている。

大統領の2023年度予算要求では、空軍に2341億ドル、海軍に1805億ドル、陸軍に1775億ドルが割り当てられているように見える。しかし、実際には空軍予算の401億ドル(17.1%)は他の国防総省部門の予算である。宇宙軍向けの245億ドルを考慮すると、空軍予算は1695億ドルとなり、陸軍、海軍、その他の国防総省部門の後塵を拝することになる。

空軍の実質予算の不透明さは、議会、行政管理予算局(OMB)、国防総省、ホワイトハウスの意思決定者を惑わせ、仕事を複雑にしている。限られた資源を正しく配分し、中国との戦いに最適な準備をするため透明性の確保が不可欠だ。

資金枠は空軍勘定から、国防総省の機関や他の非軍事組織を含む「国防全体」の予算カテゴリーに簡単に移動できるため、パススルーの解決は複雑ではないはずなのだ。

空軍を経由する資金を除けば、空軍予算は過去30年以上連続で陸軍と海軍の予算より少なく、2010年から2019年までは他のDOD機関より少ないことが明らかになる。また、この間、空軍は各軍で最大の予算削減を受けたことがわかる。空軍の2001年の調達予算は1989年の約半分であったが、陸軍と海軍の削減は約3分の1であった。また、空軍は軍人や研究・開発・試験・技術(RDT&E)部門の削減率も最大であった。 

陸軍予算のため空軍を空洞化させる

2001年9月11日のニューヨークとワシントンDCへのテロ攻撃は、米国の軍事費に劇的な変化をもたらし、この変化は各軍の支出バランスを変えた。陸軍の年間予算は2001年度から2008年度にかけ約250%増加したが、空軍予算ははるかに小幅な増加にとどまった。

この間、空軍が得た追加予算の大部分は、空爆、戦域の持続的監視、中東でのその他対テロ関連任務を遂行する部隊の高い作戦テンポを支えるため使われたが、これらはすべて、ハイエンド戦向け部隊の近代化を除外して支払われてきたものだ。空軍のO&M支出の増加も追加資金の多くを消費し、RDT&Eと調達は貧弱なままだ。わずかな調達資金の増加で、空軍は遠隔操縦機、テロリストと交戦する同盟軍への情報処理・活用・伝達能力の向上、空輸部隊の一部機材更新などに投資した。これらはすべて重要な能力だが、現在の国防総省の最優先課題である有力国との紛争ではなく、こちらに有利な環境での作戦に適している投資であった。

こうした事実を前にすると、2001年9月以降の10年間は空虚な成長期だったと言わざるを得ない。今日、過去の軽率な防衛取得決定で失われた時間とリスクは、将来の危機時に迅速に解決されることはない。第二次世界大戦前夜、ハリー・H・ウッドリング陸軍長官が言ったように、「われわれは紛争に対する備えをしていない」のである。今日計上された数十億ドルは、明日の準備に転換することはできない。

2008年以降、空軍の調達予算は横ばい、O&Mコストは増加し続け、高い運用テンポの持続と兵力の老朽化による維持コスト増がその要因だ。この傾向は終わっていない。DODの23年度の空軍の要求額1695億ドルは、海軍(1805億ドル)、陸軍(1775億ドル)を大きく下回り、他のDOD機関(1708億ドル)をも下回る。海軍に含まれる海兵隊の2023年度予算要求503億ドルは、宇宙軍の245億ドルの2倍以上である。航空優勢、空中給油、航空機動性、空中・宇宙通信、ISR など、空軍と宇宙軍の任務の多くが、すべての統合軍作戦を支援し、成果をもたらしていることを考えれば、この格差は驚異的である。米国の統合部隊の作戦は、空軍の何らかの部門が関与しない限り、実施できない。他のどの軍事部門についても同じとは言えない。 

予算不足が数十年続く空軍

表面的には、空軍は陸海軍と同レベルの予算が組まれているように見える。しかし、空軍予算からパススルー分を取り除くと、空軍は30年以上連続で、1990年以降は1年を除いて、海軍と陸軍の予算をリードするどころか、遅れをとっていることが明らかになる。予算配分が不十分で、空軍は戦力規模、即応性、近代化投資の間でトレードオフを余儀なくされ、戦闘能力と勝利能力が損なわれている。実際、2002年から2021年間に、陸軍と海軍は空軍よりそれぞれ1兆3000億ドル、914億ドル多く受け取っている。陸軍の場合、空軍より年間平均で約660億ドル多く受け取っていることになる。30年以上にわたる資金不足の累積が、今日の空軍を歴史上最も古く、最も小さく、最も準備体制が遅れた戦力にしているのである。

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これはまた、過去21年間で16年間、米空軍の新型機購入が海軍の航空機調達に遅れをとっている理由でもある。海軍機は、主に海軍の優先事項を守るため少数の空母から配備・管理されるのに対し、空軍機は、統合軍の戦闘司令官の要求に応え、より多くの選択肢と柔軟性を提供している事実にもかかわらず、このようなことが言えるのである。空軍の調達の遅れは、計画立案者や戦闘指揮官が必要とする重要な航空戦力の能力を否定するものだ。

空軍で陸海軍に比べ予算配分が少ないため、近代化が遅れ、大規模戦闘での勝利に必要な規模の次世代技術を取得できていない。元空軍戦闘軍団司令官ジョン・D・コーリー大将Gen. John D. Corleyは、「いつも『次のプログラム』を考えるなら、プログラムなど全くないのと同じだ」と説明している。 

イラクやアフガニスタンでの対戦闘員・対テロ作戦で陸軍が大きな役割を果たしたため、陸軍に有利な予算がついたことは理解できるが、紛争は終わっている。空軍の規模、能力、即応性の縮小を食い止めるには、新たな投資が不可欠だ。空軍のためだけでなく、空軍と宇宙軍の能力に依存する米軍全部隊にとってである。この20年間に陸軍に投じられた金額の半分でも充当すれば、B-21爆撃機計画の資金調達、大陸間弾道ミサイル部隊の更新、第5世代戦闘機の調達増加、紛争環境でのハイエンド戦に適した新しい空対空および空対地弾の開発が可能だっただろう。

空軍予算の増額を 

空軍予算の課題を解決するには、インフレ率以上に、年間3~5%の実質予算増が必要だ。そうしなければ、空軍が戦場に投入できる近代化戦力と国家防衛戦略の要求との間のギャップは広がるばかりだ。中国やロシアなど敵対勢力にますます攻撃的な行動をとらせる危険性をはらんでいる。もっと率直に言えば、空軍の機材更新と近代化を行わなければ、将来の戦争に負けるリスクがある。

各軍間の資源再配分は、痛みを伴うが、以前にもあった。最近では、2001年から2021年にかけ、イラクとアフガニスタンでの陸軍の需要増を補うために、他軍から予算をシフトして陸軍予算を増やしていた。今こそ、同じ論理で空軍を再建し、DOD全体で有力国の脅威との戦いを抑止し、勝利するため必要な選択肢を確保する時である。

従って、議会と国防総省には以下の行動を取ってもらいたい。

  • 空軍予算からパススルー資金を取り除き、その全額を既存の「国防全体」予算カテゴリー内の予算ラインに移行し、各軍間の資源配分をど行うDODに透明性を確保すること。

  • 空軍の規模を恣意的に設定してきた予算や利用可能な資金ではなく、国家防衛戦略で決定されると保証できる空軍の戦力規模構成を作成すること。

  • 国防戦略の要求内容を満たすため、機齢、規模、即応性低下を逆転させるため、国防総省の予算配分の不均衡を解消すること。

  • 空軍の予算をインフレ率以上に毎年3~5%増やし、近代化予算を調達し、勝つため必要な戦力能力を提供すること。 

  • F-35A、B-21、高性能精密誘導弾含む次世代能力の空軍戦力の調達を増やし、短期および中期のリスクを軽減すること。

現空軍参謀総長は、「加速しなければ敗北」"accelate change or lose "とのモットーを作り上げた。現空軍長官は、トップ3の優先事項を「中国、中国、中国」と定義している。国防総省の資源を空軍省にシフトしなければ、国防総省で加速するリスクは、「変化」ではなく、中国に負ける可能性となる。スローガンを、「空軍省予算比率を上げなければ敗北」に変える時が来ている。■

Rebuilding America’s Air Power - Air & Space Forces Magazine

By Lt. Gen. David A. Deptula USAF (Ret.) and Col. Mark Gunzinger, USAF (Ret.)

Sept. 2, 2022


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